フイッシャアー・ブラック
金融工学者
フイッシャアー・ブラック
日経BP 27頁
ブラックがしぶとく自説を主張してもなんとか大目に見られていたのは、どこをさがしても邪念というものがなかったからである。
出世を目指すわけでなく、大儲けしようという山っ気もなく、権力にも興味がない。彼がこだわったのは新しいものの見方、新しい発想だけだった。
「古い考えを退場させ、新しいものに席を譲る」ことである。経済学やファイナンスの理論であれ、自分自身の考えであれ、古いものはさっさと捨てた。ブラックは真実に対していつも誠実だったから、たとえ誰かに誤りを指摘されても絶対に怒らなかっただろう。
「そんな考え方が成り立つだろうか。いつか時間のあるときにゆっくり考えてみよう」などという反応は、彼の場合はあり得ない。すぐさま、「まちがいは大嫌いだ。みつけてくれてありがとう」と言うだろう。
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