父親が賃貸していた建物について借家人との間に平成7年12月までに貸家を明け渡すとの和解が裁判所で成立したが、その明け渡し期間の前である平成7年7月に父親が死亡してしまった。その後、平成7年11月に借家人は建物を明け渡した。争われたのは、この土地と建物についての相続税評価額、借家権控除と小規模事業用宅地の評価減が行えるか否かである。なお和解の内容は次のとおりである。
1 賃貸借契約が昭和61年3月に終了したことを確認し、平成7年12月まで明け渡しを猶予する。 2 契約終了の日から明け渡しまでの賃料を免除。既に供託されていた賃料1億2,000万円も賃貸人は放棄し、賃貸人は明け渡しと引き換えに引越料2,200万円を支払う。明け渡しの猶予期間中、賃借人は建物を無償で使用することができる。 |
日本興行銀行は、平成8年3月に、日本ハウジングローン(住専)との間で3760億円の貸付債権を放棄するとの合意をして、同年3月期の決算において貸倒損失として処理した。ところが、課税庁は興銀の貸倒損失を否認し、所得金額を3627億円とする更正処分を行った。争われたのは債権の回収可能性についての判断である。 |
原告(個人)は所有地をM不動産販売に対し代金5億8000万円で売却した。これと同時に、原告は同社から4億円で土地を購入した。そして、代金額は相殺し、差額の1億8000万円を現金で受け取った。しかし、原告が4億円で買い受けた土地は、M不動産販売が売却の直前に第三者から7億9000万円で購入した土地だった。争われたのは、譲渡所得の基因となる土地の売買代金の額である。
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昭和63年9月に発生した相続について、原告は、平成元年12月に認知の判決を得て、相続人に対し民法910条に基づく価額請求の訴訟を起こし、平成8年11月に判決を得て、平成9年2月に相続人から5000万円の支払いを受けた。その後、相続人が平成9年3月に相続税について減額更正(5000万円の支払いの事実に基づき)の請求を行ったため、課税庁は平成10年1月に原告に対して相続税法35条3項に基づく相続税の決定処分を行った。争点となったのは決定処分についての除斥期間の問題である。 |
原告(旺文社)は、100パーセント子会社であるA社(オランダ所在)の株主総会において、増資新株の全てをB社(オランダ所在)に割り当てる旨の株主総会決議を行った。ところが、新株の発行価額はA社の純資産額に比較し著しく低額だったため、新株の発行により、原告が保有していたA社株式の含み益の大部分はB社に移転することになった。この原告からB社への資産価値の移転について、本郷税務署長(被告)は原告に対する譲渡益課税を行った。この処分の適否が争われたのが本件訴訟である。 |
東京都が、資金量が5兆円以上である銀行に対し、課税標準を業務粗利益とし、税率を3パーセントとする法人事業税を課税するとの条例を制定した。銀行は、条例の無効確認を求めるとともに、条例の制定に関係する一連の行為が違法であるとする国家賠償を求めた。 |
父親は米国に居住する娘に、平成9年2月4日に北海道拓殖銀行から日本円に換算して2000万円をアメリカ合衆国にある娘名義の預金口座に送金した。なお、娘は昭和61年には米国国籍を取得し、平成3年からは米国に居住している。しかし、父親と娘の間には贈与契約に関する書面は残されていない。そして、平成9年9月に父親は死亡した。この送金について、贈与(死亡年中の贈与なので相続税の課税対象に取り込まれる)の事実の有無が争われることになった。 |