信託銀行が取り扱う相続関連業務(いわゆる遺言信託業務)について

 日本弁護士連合会と社団法人信託協会とは、現在信託銀行各社が行なっている下記の相続関連業務について、拡大する国民の需要と弁護士・信託銀行双方の社会的役割を認識しつつ、相続関連業務の適正かつ健全な発展のために慎重に検討を重ねた結果、以下のとおり意見の一致をみたので、相互に確認する。双方は今後とも広く国民の期待に応えるべく、相互に協力を借しまないこととする。

第1 遺言書作成に関する相談業務

 1.信託銀行は、遺言による信託の引受および遺言執行者に就任する可能性のある事案において、遺言書の作成に通常必要とされる事項につき顧客の相談に応じる。
 2.信託銀行は、顧客の財産に関して本人と推定相続人その他の者との間で現に法的紛争があり、または法的紛争を生じる蓋然性が極めて高いと認められる場合には、相談に応じない。

第2 遺産整理業務

 1.信託銀行は、顧客の求めに応じて、相続人が遺産整理および分割協議を進めるために必要な知識・情報等の判断材料を提供し、相続人の総意に沿った分割協議のための参考案を提示したり、相続人全員の意見が一致した場合に分割協議の文書化に協力したりする。
 2.信託銀行は、分割協議がまとまらないときは、当該遺産整理業務を打ち切るものとし、分割協議を成立させるために、信託銀行が遺産分割案を作成・提示したり、調停工作に関与・助力したりすることは避ける。
 3.信託銀行は、相続債権・債務について、示談交渉を伴う取立・履行を行なわない。

第3 遺言執行業務

 1.信託銀行は、財産に関する遺言の執行業務を行なう。同一の遺言書に財産に関する事項と身分行為に関する事項とが併記されている事案においては、信託銀行は、両者を分離して処理することができることとなった時点で、財産に関する事項を執行する。

 2.信託銀行は、遺産に関する遺言書であっても、遺言執行者就任前にすでに法的紛争が生じており、遺言執行業務を遂行することが著しく困難と認められる場合には、遺言執行者に就任しない。

第4 広告・宣伝

 信託銀行は、相続または遺言に関してすべての相談に応じるという趣旨の広告・宣伝を行なうことを避ける。

第5 情報連絡会の設置

 この確認事項にかかる弁護士・信託銀行双方の業務に関し適正な推進を図るため、日本弁護士連合会と社団法人信託協会とは、年1回程度の情報連絡会を開催し、意見および情報の交換を行ない、併せてこの確認事項を適正に運営するための協議を行なう。

以上