フロイド

 P174

 私たちは「無意識のうちに……」という表現をしますが、この無意識を発見した人がジグムント・フロイトです。あるとき、彼はヒステリー患者の治療を試み、患者らが意識の裏側に例外徐く性的なトラウマを秘めているこどに気づきました。

 P175

 さらにフロイトは、不都合な記憶がなぜ、心の扉の奥深くに閉ざされてしまうのかという疑問へ向かいました。その大きな理由は、性的な欲求にまっわる体験が関係していたのです。ある体験が、性的に不愉快な形で阻止された場合、心を守るために自動安全装置が働き、その体験内容を記憶の彼方に追いやってしまうというのです。それが心のセキュリティシステムだったのです。

 P178

 ユングは、フロイトの影響を受けたスイスの精神病学者・心理学者です。ユングは、師匠のフロイトが、心のエネルギ一のすべてを性欲衝動に還元する立場を否定して、彼と袂を分かちました、ユングによると、入間存在は単に過去にねじ曲げられた性的なエネルギーによって決定されているものではありません。ユングは、すべての衝動が、はじめに1つであったということを強調します。リビドーはフロイトが説くような性的な意味に限定されるものではなく、様々な形として噴出する中立的エネルギーであると考えます。

 ユング

 P180

 ユングは、無意識のうち側には、個人的経験ばかりでなく、先祖の経験も含まれていると考えました。

 というのは、違った国や文化で育った人間が、同じように蛇の幻覚を見る場合があるからです(アルコール中毒などで)。ユングはこれを先祖が体験したできごとがしこりとなって、遺伝的に伝えられたものであろうと考えました。

 ユングは神話を、客観的な出来事ではなく、内的な人格からの啓示の象徴とします。いわば無意識的なドラマが神話として表現されているわけです。人間にはすべて、時代や民族や個人的経験を超えた人類共通の「集合的無意識」があり、これが精神活動の基盤をなしています。