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 レストランには30種類以上のグランドメニューに加え、日替わリメニューまで用意されている。毎週木曜日には、世田谷の梅丘に総本店がある美登利寿司の職人が出張して来て、寿司を握るという。
 「この寿司屋は行列のできる店としても有名ですが、ここでは並ばずにお寿司を食べることができます」

 サクラビア成城では、野外でのイベントも頻繁に催される。
 「例えばこちらでバスをご用意して、皆さんで近隣の遊園地ヘイルミネーションを見に行ったり、砧公園にお散歩ツアーに行ったりもします。以前にはディズニーランドや横浜中華街に行ったこともあります」
 どのコースも庶民的で、まるで高校生の遠足のように思えた。

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 では、入居する側にとっては何が決め手となるのだろうか。再び齋藤氏に聞くと、「健康」と「介護」、それに「食事」の3つだと即座に答えた。
 「経営者の方は富裕層向けの医療クラブに入られているなど、非常に健康意識堺高い方が多いです。ここサクラビアでは4階に協力医療機関であるサクラビアクリニックがあり、24時間365日医師がいます。医療スタッフがいる施設でも昼間帯だけということが多いですが、ここは24時間365日常駐しています」
 確かに老人ホームでは、提携している医療機関から医師が定期的に診察に来るとアピールしている施設も多い。特に高級と呼ばれるホームでは、看護師が常駐しているところは珍しくないが、医師が土日を含めた24時間常駐しているというのは、あまり聞かない。
 介護の面においてよく見学者に驚かれるのは、最期まで自室で介護を受けられることだという。
 「一般的には介護度が高くなると、介護居室に移っていただくことになりますが、サクラビアではご自身が選ばれた住み慣れたお部屋で最期までお世話させていただきます」
 もちろん、状態が悪化した場合に備えて、クリニックの近くに介護専用の居室が用意されているが、それは一時的な利用にとどまるという。
 「介護度が重い方がご自分のお部屋で介護を受けているとご説明すると、皆さん驚かれます。介護が必要になっても、これまで10年、20年、30年とお暮らしになったお部屋で過ごすことで、精神的に大変落ち着かれるんです。ですから、ここで俳徊する方は滅多にいらっしゃいません」
 本当だろうか。アメリカの研究では、アルッハイマー病の10人に6人が俳徊をするというデータもある中で、俳徊する居住者が滅多にいないというのは驚くべきことだろう。
 「病状にもよりますが、病院で亡くなるより、ご自身のお部屋で、スタッフに見守られて天国に逝かれる方ぷ多いです。それでご家族様から『病室で一人寂しく亡くなったんじゃないのね。お世話になった皆さんに見送られて逝ったなら母も幸せだったと思います』と言われたこともあります」

 好みの氷の数まで把握する徹底ぶり
 食事面では、特にレストランの運営に自信を持っているという。
 「入居されている方はご高齢ですので、その日の体調や天気によって食欲や嗜好が変わります。一週間前に、天ぷら定食に丸を付けていたけど、今日は胃がムカつくなとか。そうしたとき、サイドメニューが麺類やカレーライスしかないという所もあります。しかしここは、レストランを自前で運営し、和食、洋食でそれぞれ調理人を雇っています。『食』は生活の基本です。食べたいときに食べたいものを、その場で選ぶことができることは何より大事なことなんです」
 グランドメニューだけで常に30種類以上あるという点では、都心にあるレストランも顔負けだろう。さらに個室も完備され、レストランは予約の必要もないため突然の来客時にも対応できると胸を張る。
 「大学生のお孫さんが今日遊びに来ることになったという居住者様がいらっしゃって、『なんで来るか知ってるかい』と聞かれたことがあります。なんでいらっしゃるんですかと聞き返したところ、『ここのステーキを食べに来るんだよ』と。予約のいらない自前のレストランだから、気兼ねなくゲストを呼べるのです。もちろんプライベートダイニングもありますので、ご自身の誕生日やお孫さんの入学祝いなどに、フレンチのコースや懐石料理のオーダーにお応えすることもできます。今まで、有名ホテルや旅館でお正月を過ごしていた居住者様の中には、サクラビアで同じことができるのなら、ということで、ここでお正月を過ごされてから空いたシーズンに馴染みの定宿に行かれるようにしたという方もいらっしゃいます」
 さらに驚くのは、レストランスタッフも自社スタッフであるため、好きな料理から趣味、性格まで全て把握しているというのだ。お客様相談室の主任、石塚氏はこう話した。
 「お茶を出すタイミングから、お好きな氷の数まで言われなくても全てわかっています。ですから、今日はいつもより食が細いといったことにもスタッフが気付き、そこから医療や介護に繋げていくことができるという点が強みです」