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 まず、図を2つ示します。いずれも矢印のQRSは先行するQRS波形と同じかどうかは別にして、予想されるQRSよりも早いタイミングで出現しています。この「予期される心拍よりもいいタイミングで出現した心拍」を「期外収縮」といいます。

 期外収縮の電気刺激の発生源が心房(または房室結節)であれば、刺激は房室結節を経由してヒス束からブルキンエ線維を通って心室を興奮させるため、左図のようにQRSの形は正常になります。このような期外収縮を、異所性刺激の発生源が心房を含む房室結節よりも上位の興奮に基づくものと考えて、「上室期外収縮」と呼びます。

 期外収縮の前に洞性P波とは異なるP波を認めることがあります。

 一方、異所性刺激の発生源が心室の場合には、心筋内の刺激伝播速度は刺激伝導系よりも遅いので、右図のようにQRS波は正常QRSに比べて幅が広く、奇妙な形を呈します。このような期外収縮を「心室期外収縮」と呼びます。

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 正常調律に対して期外収縮が一定の割合で規則的に繰り返す病態を「段脈」といいます。正常収縮と期外収縮が交互に見られる場合を2段脈、正常収縮2つに1つの期外収縮が認められる場合を3段脈と呼び、同様に4つに1つを4段脈、5つに1つを5段脈といいます。
 上室期外収縮の2段脈と心室期外収縮の3段脈の心電図を下に示します。

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 期外収縮の判定区分について解説します。2023年版のマニュアルでは、「上室期外収縮」、「心室期外収縮」ともに、通常の心電図記録において単発(連発しない)で2個以下の記録であれば、B判定とし、重篤な基礎心疾患がある場合や、動悸・息切れなどの自覚症状を伴う場合にはC(C1)判定としています。上室・心室期外収縮の頻発(単発で3個以上の記録)の場合にもC判定としており、基本的にはC1と考えますが、「心室期外収縮」では「頻発」の程度によってはC2〜C3判定も考慮します。

 上室期外収縮の連発では、2連発もしくは3連発以上のショートランは、C判定(連発の頻度によってC1〜C3)とします。ただし、重篤な基礎心疾患がある場合、動悸・息切れなどの自覚症状を伴う場合には、D(D2)判定とし、3連発以上で心拍数が100拍/分以上の場合にも「上室頻拍」と診断してD(D2)判定とします。

 心室期外収縮でも2連発までは上室期外収縮と同様にC判定(連発の程度によってC1〜C3)とし、基礎疾患や自覚症状を伴う場合にはD2判定とします。しかし、3連発以上であれば心室頻拍と診断してD判定とします。

 このとき、心室頻拍(下図)が、30秒以上持続する場合を持続性、30秒未満の場合を非持続性と呼ぶことはすでに述べたとおりで、持続性心室頻拍はD1判定、非持続性心室頻拍ではその出現頻度によってD1またはD2判定とします。