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 従来、同社の営業職は「朝出社して事務処理や資料を準備してからお客様を訪問する。お客様から会社に戻り夜遅くまで営業日報の記入や多くの事務処理をして、深夜、タクシーで帰宅するというパターンが多かった」という。モバイルワーク制の採用により、会議日等を除けば出社する必要はなくなる。

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 インタビューの回答者としてMRを選定したおもな理由はふたつである。第一に製薬会社は、他業種にさきがけて、最も早い時期からモバイルワークを導入してきた。そのためもあって、テレワーク研究者のあいだでは、モバイルワーカーといえば製薬会社のMRという定説ができているほどである。第二に、製薬会社では制度が徹底している場合が多い。他業種ではモバイ

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 テレワークといえば、先端企業で働く人びとの働き方というイメージが強い。あとで述べるように、主婦たちをおもな担い手とし、「電脳内職」とも椰楡される家内労働にすぎない在宅
ワークを、テレワークに含めることに反対するテレワーク推進論者や研究者も少なくない。

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 在宅ワークとして受注される仕事の内容については、名簿やアンケート、帳票などを、ワープロソフトや表計算ソフトを使って入力し、校正する作業が最も多い。その他にも、アドレス収集(一定の条件にあてはまる企業の所在地や電話番号、メールアドレスなどを収集する作業)、テープ起こし(講演等の録音をもとにワープロで講演録を作成する作業〉、ウェブデザイン(ホームページ等の作成)、ソフトウェア開発(コンピュータソフトのプログラミング)など、在宅ワークの幅は非常に幅広い。

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 在宅ワークをはじめた初期のころは.Fさんの場合も、帳票や調査結果など、数値入力の仕事が多かったという。今でもときどきは、入力の仕事もしている。しかし現在メインにしている仕事のひとつは、ある企業が自社のホームページの集客のために載せている、初詣でや花見、花火大会などといった、季節イベントの情報を更新するための作業である。

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 主たる家計維持者ではない在宅ワーカーたちの多くは、報酬に対して、ある種の鷹揚さとも諦観ともとれる態度を示す。しばしば在宅ワーカーたち自身から、「まとまった収入が本当に必要なら、パートに出る」というような発言を聞く。在宅ワークだけで家計を支えなければならないとしたら、時間あたり106円というような低報酬の業務を受注するはずがない。