P53
史実自体は人格と一見関係ないように見えます。でも、それを捉える目というものは著者の人格です。人格があって、科学的発見がある。人格があって、歴史の捉え方がある。そう考えると、情報にも深みが感じられるはずです。
どんな情報も、誰かがそれを成したわけであり、そこに人格があります。
ですから、情報としての読書であっても、情報と人間の営みとを一緒に理解しようとすれば、おのずと深まっていくのです。
P71
どんなジャンルの本にせよ、情報として読むだけでは思考はなかなか深まりません。思考が深まりやすいのは、感情が動いているときです。
思考力のある人は、感情をよく動かしています。頭と心、両方必要なのです。だから、思考力を深めるには「感情をのせて読む」ことが重要です。
P79
私はよく「好きな文章を3つ選べ」という話をしています。好きな文章を3つ選ぶことを決めておいて、読み進める。そうすると、なんとなくのっぺりとした感じで読むのではなく、浮き上がって見えるような文章を探すことになります。
見つかったら赤や青の線で囲ってしまうと、さらに浮き上がります。これが思考を深める助けになります。
P99
驚くべきことに驚けるのは、実は教養があるからです。知識豊富で教養豊かな人は、もうあまり驚くことがないのではないかと思うかもしれませんが、逆なのですね。知れば知るほど、心の底から驚くことができるのです。知識がないと、何がすごいのかわからない。ぴんとこない、ということになります。
P144
聖書には「人はパンのみにて生くるものにあらず」という有名な言葉があります。物質的な満足だけで生きているのではないということです。では何が必要なのか。人生の意味によって生きるのです。意味を捉えようとする力を読書によって育むと、いろいろなものの深さがわかるようになってきます。
P177
本を1冊読むのにはある程度時間がかかります。その時間をかけて、自分の頭の中に著者が語り続けるわけです。本のワールドに没入しているときは、自分と著者とが区別できないような状態になります。言葉を使っているというのもポイントで、著者の思考をなぞることができてしまう。それだけ深いレベルで影響を受けやすいのです。