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 税理士のための百箇条(第5弾)
 令和5年10月25日出版予定


 パンデミックは時代を進める。まさに、この3年は、そのような時代だった。まず、コロナの恐怖を語る本書の原稿が古くなってしまった。しかし、あの当時、こんな気持ちで生活していたことを思い返してほしい。

 そしてテレワークなどの働き方改革が進展し、多数の企業がコロナ対応の緊急避難として実行してきたが、それがコロナ以降も続くのか、働き方改革の行方が見えない。NTTは社員の全員をテレワークにするそうだ。
 この間に日本の財政は解決不能なほどに不健全化してしまった。低金利政策による円安と貿易赤字。日銀が保有する多額の国債と、補助金支給のバラマキ政策が財政を痛める。しかし、そのことについて不安も解決策も聞かない。パンデミックによって財政の不健全化も解決不能の事態まで進んでしまったように思う。

 そして戦争が始まり、日本にはデジタル庁が出現した。しかし、個人番号を筆頭にデジタル庁の施策の多くは空回りをしている状況だ。そのために注ぎ込まれた財政支出は2兆円を超える。

 そして登場したのがChatGPTだが、これは核戦争よりもインパクトを与えると学者が論じ、私も同感だ。どんな理屈で完成しているのか想像するのも難しい。システムには大量のデータが必要になるが、これらデータは米Google、マイクロソフト、Meta、そして中国のいくつかのIT企業に独占されている。まさに巨大IT企業によるインターネット空間の「植民地化」が成立してしまった。

 そのような社会の変化に対して、税制は3年間について冬眠状態だ。新しい税制は登場せず、税制が時代を先導する場面を見かけることもない。毎年12月に行っていた「税制改正祭り」もコロナ禍で延期されて3年。しかし、コロナが終わった4年目にも開催される見込みはない。

 このような時代に、私たちは、どこに漂流するのだろう。そのためには過ぎ去った過去を忘れるのではなく、理解し、位置づけ、記憶する必要がある。コーヒータイムに「戦争のことを語らない」という一文を置いたが、まさに、コロナのことを語れない、働き方改革を語れない、そしてChatGPTを語れない健忘症にならないために、これらを事の始まりから定義する必要がある。時系列に沿って並べた100のコラム。この3年間を語る歴史書になれば嬉しい。

 本書の第1を令和3年5月に書き始め、その後、毎月3本の執筆を続けて第69までは税理士新聞に連載してきた。第70以降は本書のためのオリジナル原稿として執筆した。