企業再編成税制の申告調整


 参考  週刊税務通信2708号

★ 説例4

 被合併法人に繰越欠損金があるため、欠損金見合いの営業権を計上して受け入れた場合


(条件)
 1)乙の合併直前のB/Sは次のとおりである。
            乙の合併直前のB/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産    500│ 負   債   700
               │ 資 本 金   300
               │ 利益準備金  △500
 2)甲は乙を吸収合併するに当たり、乙が繰越欠損金500を有していたので、その繰越欠損金に見合った資産として営業権500を計上して受け入れた。
 3)甲は合併に際して資本金を100増加させた。
 4)甲は乙から引き継いだ資産・負債の差額300から増加した資本金100を控除した残額を資本準備金200として受け入れた。
 5)合併比率1:3に基づき乙の株主に対して甲の新株を発行した。

● 甲の合併受入れB/Sは次のとおりである。


            甲の合併受入B/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
   (営業権500を含む。)│ 資 本 金   100
               │ 資本準備金   200

● 甲の会計仕訳


   資   産  1,000/ 負   債   700
   (営業権500を含む。)/ 資 本 金   100
               / 資本準備金   200

● 甲の税務仕訳


   資   産    500/ 負   債   700
               / 資 本 金   100
               / 資本積立金額  200
               / 利益積立金額 △500

● 申告調整仕訳


   利益積立金額  500 / 営 業 権   500

★ 説例5

 合併法人が被合併法人の発行済株式の全部を有しており、その株式に対して株式の割当を行わず消却し、被合併法人の純資産価額はすべて利益準備金として受け入れた場合


(条件)
 1)乙の合併直前のB/Sは次のとおりである。
            乙の合併直前のB/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
               │ 資 本 金   100
               │ 利益準備金   200
 2)乙は甲の100%子会社であったため、合併に際して新株の発行は行わなかった(資本金の増加もない。)。
 3)甲は乙から引き継いだ資産・負債の差額300を利益準備金として受け入れた。
 4)甲が有していた乙の株式(抱き合わせ株式)の帳簿価額は100であり、その株式の消却については、消却損を計上した。

● 甲の合併受入れB/Sは次のとおりである。


            甲の合併受入B/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
               │ 利益準備金   300

● 甲の会計仕訳


   資   産  1,000/ 負   債   700 合併受入れに係る仕訳
               / 利益準備金   300 
   株式消却損    100/ 乙社株式    100 株式消却に係る仕訳

● 甲の税務仕訳


   資   産  1,000/ 負   債   700
               / 資本積立金額  100 合併受入れに係る仕訳
               / 利益積立金額  200
   甲社株式    100 / 乙社株式    100 みなし割当てに係る仕訳
   資本積立金額  100 / 甲社株式    100 株式消却に係る仕訳

● 申告調整仕訳


   利益積立金額  100 / 資本積立金額  100 合併受入れに係る調整
   甲社株式    100 / 株式消却損   100
   資本積立金額  100 / 甲社株式    100 株式消却に係る調整

★ 説例6

 合併法人が有する抱き合わせ株式に対して合併法人の株式を交付せず、被合併法人から受け入れる資本準備金によって消却した場合


(条件)
 1)乙の合併直前のB/Sは次のとおりである。
           乙の合併直前のB/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
               │ 資 本 金   100
               │ 利益準備金   200
 2)乙は甲の100%子会社であったため、合併に際して新株の発行は行わなかった(資本金の増加もない。)。
 3)甲は乙から引き継いだ資産・負債の差額300を資本準備金として受け入れた。
 4)甲が有していた乙の株式(抱き合わせ株式)の帳簿価額は100であり、その株式の消却については、資本準備金によって行った。
 5)甲の合併受入れB/Sは次のとおりである。
        甲の合併受入B/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
               │ 資本準備金   300

● 甲の会計仕訳


   資   産 1,000 / 負   債   700 合併受入れに係る仕訳
               / 資本準備金   300
   資本準備金   100 / 乙社株式    100 株式消却に係る仕訳

● 甲の税務仕訳


   資   産 1,000 / 負   債   700
               / 資本積立金額  100 合併受入れに係る仕訳
               / 利益積立金額  200
   甲社株式    100 / 乙社株式    100 みなし割当てに係る仕訳
   資本積立金額  100 / 甲社株式    100 株式消却に係る仕訳

● 申告調整仕訳


   資本積立金額  200 / 利益積立金額  200 合併受入れに係る調整
   甲社株式    100 / 資本積立金額  100
   資本積立金額  100 / 甲社株式    100 株式消却に係る調整

★ 説例7

 適格分社型分割で分割法人に賞与引当金の繰入超過額があり、会計上の賞与引当金を分割によって分割承継法人に移転した場合


(条件)
 1)分割法人を甲、分割承継法人を乙とします。
 2)甲の分割移転資産等に係るB/Sは次のとおりである。
         甲の分割移転資産等に係るB/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
               │(賞与引当金120を含む。)
               │ 交付を受ける
               │ 株式の価額   300
 3)分割によって移転する資産及び負債については、会計上の帳簿価額により行った。なお、乙の別表五(一)には、税務否認金として賞与引当金繰入限度超過額100がある。
 4)分割法人の会計上の賞与引当金勘定は200で、そのうち移転使用人に係る賞与引当金勘定の金額として分割承継法人に対して120を移転した。この賞与引当金勘定について税務上では、繰入限度超過額100が「利益積立金額の計算に関する明細書」に記載されている。
 5)乙の分割受入れに係るB/Sは次のとおりである。
        乙の分割受入れに係るB/S
 ──────────────┬─────────────
   資   産  1,000│ 負   債   700
               │(賞与引当金120を含む。)
               │ 資 本 金   300

● 甲の会計仕訳


   負   債    700/ 資   産  1,000
   乙 株 式    300/

● 乙の会計仕訳


   資   産  1,000/ 負   債    700
               / 資 本 金    300

● 甲の税務仕訳


   負   債    580/ 資   産  1,000
   乙 株 式    420/

● 乙の税務仕訳


   資   産  1,000/ 負   債    580
               / 資 本 金    300
               / 資本積立金額   120

● 甲の申告調整仕訳


   乙 株 式    120/ 賞与引当金    120

● 乙の申告調整仕訳


   賞与引当金    120/ 資本積立金額   120