● 設例1
甲社は、株主である乙社から相対取引により自己株式(甲社株式)1株を80の価額で取得した。なお、乙社における甲社株式の帳簿価額は70である。
甲社のB/S
┌────────────┬──────────────┐
│ 諸資産 4,000 │ 諸負債 2,400 │
│ │ 資本金 1,000 │
│ │ 資本積立金額 200 │
│ │ 利益積立金額 400 │
├────────────┼──────────────┤
│ 4,000 │ 4,000 │
└────────────┴──────────────┘
(注)発行済株式総数は20株である。
【税務上の処理】
甲社の仕訳
利益積立金額 20(※1)/ 現 金 76
自己株式 60(※2)/ 預り金 4(※3)
乙社の仕訳
現 金 76 / 甲社株式 70
源泉税 4(※3)/ 受取配当 20(※1)
譲渡損 10(※4)
※1 (資本金1,000+資本積立金額200)÷20株=60(取得時の資本等金額)
譲渡(取得)価額80−取得時の資本等金額60=20(みなし配当金額)
※2 譲渡価額80−みなし配当20=60(自己株式の取得価額)
※3 みなし配当20×20%(源泉徴収税率)=4(源泉税額)
※4 譲渡価額80−みなし配当20=60(株式の譲渡対価……法61の2(1)一)
譲渡対価60−譲渡原価70=△10(譲渡損)
● 設例2
説例1について、仮に、乙社における甲社株式の帳簿価額が50であった場合の仕訳は次のとおり。
【税務上の処理】
乙社の仕訳
現 金 76 / 甲社株式 50
源泉税 4(※3)/ 受取配当 20(※2)
/ 譲渡益 10(※5)
※5 譲渡価額80−みなし配当20=60(株式の譲渡対価……法61の2(1)一)
譲渡対価60−譲渡原価50=10(譲渡益)
● 設例3
甲社は、設例1で取得した自己株式1株を消却した。なお、資本金額は減少しない。
【税務上の処理】
甲社の仕訳
資本積立金額 60(※6)/ 自己株式 60
※6 自己株式の帳簿価額60÷1株(自己株式の数)=60(1株当たり帳簿価額)
60−減少した資本金額0=60(減算すべき資本積立金額)
● 説例4
甲社は設例1で取得した自己株式1株を、その後丙社に65で譲渡した。
【税務上の処理】
甲社の仕訳
現 金 65 / 自己株式 60
譲渡益 5
自己株式の譲渡益(帳簿価格との差額)は資本積立金になります。
この説例の答は間違っているようです。
17 資本積立金額
イからルまでに掲げる金額の合計額からヲからナまでに掲げる金額の合計額を減算した金額をいう。
ロ 自己の株式を譲渡した場合(合併、分割又は株式交換により新株を発行することに代えて自己が有していた自己の株式を交付した場合を除く。)における譲渡対価の額(新株予約権の行使により新株を発行することに代えて自己が有していた自己の株式を交付した場合には、当該新株予約権の発行価額に相当する金額を含む。)から当該自己の株式の当該譲渡の直前の帳簿価額を減算した金額 |
● 設例5
設例1では甲社が乙社から相対取引で自己株式を取得しているが、設例1で甲社が証券取引市場から自己株式を取得した場合(市場買付けをした場合)の仕訳は次の通り。また、取得後、その自己株式を設例3と同様、株式消却を行う。
【税務上の処理】
◇取得時
甲社の仕訳
自己株式 80 / 現 金 80
乙社の仕訳
現 金 80 / 甲社株式 70
譲渡益 10
◇株式消却時
甲社の仕訳
資本積立金額 80 / 自己株式 80