=== 組織再編成税制についての法人税基本通達と解説の公開====


 商法改正で会社分割が可能になりましたが、これを受けて改正された法人税法は、会社分割だけではなく、合併、現物出資、事後設立などを包括して、組織再編成税制とする全く新しい税制を導入しました。いままでの取り扱いとは全く異なる考え方を採用していますので、古い知識で合併などの処理をすると思わぬ課税を受けることになってしまいます。


 そこで、合併を例に、組織再編成税制について入門を紹介すれば次の通りです。


 まず、適格合併になるか否かが問題です。適格合併の要件を整えていれば良いのですが、その要件に欠け、非適格合併になってしまった場合は、被合併会社から合併会社への資産の移転は時価による譲渡とみなされてしまいます。つまり、被合併会社が、帳簿価格1億円で、時価が10億円の土地を所有していれば、それを合併会社に10億円で譲渡したものとみなしての法人税課税が行われるわけです。


 さらに、非適格の場合は、被合併会社の利益積立金の引き継ぎが認められず、全てが資本積立金として受け入れられますので、利益積立金を持つ会社が被合併会社になる場合は、株主に対して配当所得課税が行われます。つまり、被合併会社が利益積立金5億円を有する場合は、それが合併会社には資本積立金として引き継がれることになりますので、利益積立金の資本組み入れが行われた場合と同様に、被合併会社の株主に対して5億円の配当が支払われたとみなされます。


 しかし、適格合併の要件を整えていれば、譲渡益課税も、配当所得課税も行われません。資産は帳簿価格で合併存続会社に引き継がれ、利益積立金も、そのまま合併存続会社に引き継がれることになります。


 そこで、適格合併になるための要件ですが、これは次の3つのいずれかに該当し、かつ、被合併法人の株主に合併法人の株式以外の資産が交付されないものとされています。

 第1の場合 100%の持分関係にある会社の合併

 合併法人と被合併法人のいずれか一方が他方の発行済株式の100%を所有している場合、あるいは同一の株主によって両社の100%の株式が所有されており、その株式の全てが継続して所有されることが見込まれている場合。

 第2の場合 50%超の持分関係にある会社の合併

 合併法人と被合併法人とのいずれか一方が他方の発行済株式等の100分の50を超える株式を所有している場合、あるいは同一の株主によって両社の100分の50を超える株式が所有されており、その株式の全てが継続して所有されることが見込まれている場合のいずれかで、かつ、次に掲げる要件のすべてを充足する場合。

  1.  被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が合併法人の業務に従事することが見込まれていること。
  2.  被合併法人の主要な事業が合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。

 第3の場合 持ち株関係にない会社の合併

 持株関係にはないが、その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を営むための合併として「第2の場合」の要件に加えて、次の要件を備えている場合。

  1.  被合併法人から引き継ぐ事業と、合併法人の事業が相互に関連すること。
  2.  被合併法人から引き継ぐ事業と、合併法人の事業の規模が5倍以内であるか、被合併法人の役員を引き継ぐかのいずれかの要件を満たすこと。
  3.  合併法人から交付を受けた株式について、それを継続して保有することが見込まれる株主の持株数が80%以上であること(被合併法人の株主数が50人を超える場合は要件とされない)。

 さて、組織再編成についての改正税法は昨年の年度末(3月)に成立しているのですが、このことについての法人税基本通達と、その解説が、先日、国税庁のホームページに掲載されました。通達だけではなく、解説までもが国税庁によって発表されたのは初めてのことです。


http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/houzin/1053/01.htm