これらは米国企業から与えられたストックオプションですが、日本でも、取締役と使用人への付与に限定していた商法280条の19が改正され、子会社の社員、取引先、外部の顧問などについても自由にストックオプション(新株予約権)を付与することが可能になりました。その条件はおおよそ次の通りです。
さて、割り当てを受けたストックオプションを行使したときの課税関係はどのようになるのでしょうか。これについては、1)勤務する会社(と特定の親会社)から割り当てを受けた場合(適格オプション)と、2)その他の場合に区別して考える必要があります。
仮に、権利行使価格が1000円の場合に、株価が1400円になっている状態で権利が行使されたとします。
権利者は400円の利益を得るのですが、これが適格オプションの要件を満たしていれば、権利を行使した時点での課税は行われません。課税されるのは、その株式を最終的に譲渡したときです。仮に、譲渡の段階で株価が1300万円に下がっていれば、300万円について、有価証券の譲渡益としての分離課税(税額は利益の26%)が行われます。
しかし、適格オプションの要件を満たさない場合は、権利を行使した時点での課税が行われます。上記の例では権利を行使した時点で1株当たり400円の利益が発生し、それが、a)勤務先の会社から割り当てられたものなら給与所得として、b)親会社から子会社の社員に対して割り当てられた場合も給与所得(後に説明する訴訟が存在します)として、そして、c)顧問弁護士、あるいは顧問税理士として割り当てられたのなら事業所得又は雑所得としての課税が行われることになります。
さて、話しは戻りまして、適格オプションは次のような要件を満たす必要があります(租税特別措置法29条の2)。
さて、冒頭に紹介した米国親会社から日本子会社の社員に交付されたストックオプションですが、これが給与所得に該当するのか、あるいは一時所得に該当するのかが、いま訴訟で争われています。これは商法(税法)の改正前に交付されたストックオプションですが、仮に、改正後であっても、改正税法は米国企業から交付されたストックオプションにまでは適用がありません。
納税者にしてみれば、給与所得に分類されるよりも、一時所得とされた方が有利です。一時所得なら、50万円を控除し、その残額の2分の1に所得税の税率を乗じることになりますが、給与所得の場合は給与所得控除しか認められません。おおざっぱに比較すれば課税所得において2倍の差が生じるのが一時所得と給与所得の違いです。
さて、ストックオプション訴訟ですが、通常であれば納税者が敗訴することは相当程度の確率で予見される訴訟ですが、しかし、納税者を勝たせ続けている東京地裁民事3部にも同種の事件が継続していることもあり、納税者が勝訴する可能性が非常に高いと予想する関係者もいます。