==== 会社分割の類型と課税要件を整理してみれば ====


 商法改正によって会社分割の制度が導入されました。商法が認める分割は、分割型分割と分社型分割の二つです。そして、この二つには新設分割と吸収分割の方法がありますので、組合せは4つになります。さらには、分割型分割と分社型分割を同時に行う方法も認められていますし、分割型分割については非按分型(株主の一部に株式を割り当てる)も認められています。

 さて、会社分割の課税関係ですが、会社分割は、異質な二つの類型に区分して考える必要があります。一つが同一グループ内で行う会社分割であり、他方は共同事業を行うために資本関係のない会社間で行われる会社分割です。

 そして、各々について適格要件が定められており、これを満たせば適格分割として課税関係は生じませんが、満たさない場合は、分割による資産の移転について譲渡益課税が行われ、株主に対する株式の割り当てについて配当所得課税が行われてしまうことになります。

 では、同一グループ内の会社分割と何なのか。これを簡単に言ってしまえば、特定の株主(x)の立場で考えて、分割後の会社が100%、あるいは50%超の持株関係にある場合の会社分割で、次のような類型が想定されています。

◆ 同一グループ内の会社分割

 1)新設分割型分割…… 兄弟会社を作る方法です。新設法人の株式の割り当てを受けるのは分割法人の株主です。グループ内の組織再編成として行われます。


   ┌────┐      ┌────┐
   │ 株主x│      │ 株主x│ …… 100%又は50%超の持株関係
   └────┘      └────┘
     ↓     →    ↓  ↓
 ┌───────┐ ┌─────┐┌─────┐
 │  法人a  │ │分割法人a││新設法人b│
 └───────┘ └─────┘└─────┘


 2)新設分社型分割…… 子会社を作る方法です。新設法人の株式の割り当てを受けるのは分割法人自身です。これは「現物出資による会社の設立、あるいは事後設立」と同様の結果を生じさせる手法です。これもグループ内の組織再編成として行われます。


  ┌───────┐  ┌───────┐
  │  法人x  │  │ 分割法人x │ …… 当然に100%の持株関係
  └───────┘  └───────┘
            →    ↓
              ┌─────┐
              │新設法人b│
              └─────┘


 これらは特定の株主xが存在する場合に可能な手法ですので、上場企業のように多数の株主が存在する場合は、1)の新設分割型分割は行えません。上場会社が行えるのは、2)の新設分社型分割と、次の共同事業を行うための会社分割に限ります。

◆ 共同事業を行うための会社分割

 共同事業を行うための会社分割には持株関係は登場しません。資本関係のない複数の会社が、相互に出資し、あるいは一方の営業部門を他方が吸収するとの方法で行われる会社分割です。その意味では、合併、現物出資の範疇に含まれる行為であり、合併や現物出資と同一の要件が要求されています。つまり、相互の事業の関連性があり、相互の事業の規模が5倍以内であることなどの要件です。これには次のような類型が想定されます。

 ただし、これら類型も、特定の株主(x)の立場で、100%、あるいは50%超の持株関係にあれば、グループ内の組織再編成にも該当することになります。

 1)承継分割型分割…… 分割部分は既存の会社に吸収されます。その意味では、「一部合併」と同様の結果を生じさせる処理です。


 ┌──────────┐┌────┐ ┌─────┐┌───────────┐
 │法人a  営業の一部││ 法人b│→│分割法人a││営業の一部+承継法人b│
 └──────────┘└────┘ └─────┘└───────────┘


 2)承継分社型分割…… 次の類型も、分割部分は既存の会社に吸収されます。その意味では「既存の会社に対する現物出資」による増資と同様の処理です。


   ┌─────┐┌─────┐   ┌─────┐
   │ 法人a ││ 法人b │ → │分割法人a│
   └─────┘└─────┘   └─────┘
                        ↓
                       ┌──────────┐
                       │承継財産+承継法人b│
                       └──────────┘


 このように、同じ会社分割との言葉でも、上記のような異質な二つの類型に区分して考えてみる必要があるのが税法の適格要件です。

 なお、非按分型の会社分割は適格要件を満たさないとされています。たとえばA株主とB株主による合弁事業を解消するについて、新設会社の株式の全てをB株主に割り当てる分割型分割は非適格(課税されてしまう会社分割)とされています。

 適格要件の詳細は専門書籍に譲るとして、会社分割についての基礎知識として、異質な二つの類型が存在することをご理解下さい。