課税関係のミスで恐いのがダブルパンチ課税ですが、今回は、さらに恐いトリプルパンチ課税について説明してみます。
まず、路線価額3000万円の土地について、固定資産評価額で息子に売却すれば贈与税は課税されないと考え、固定資産税評価額2000万円で土地を売却したという事例を想定してみます。
しかし、贈与税に適用される評価額は、固定資産税評価額ではなく、路線価額ですので、差額の1000万円については、受贈者(息子)に対して贈与税が課税されてしまうことになります。
更にこれだけでは済まないのが税法の社会です。時価(実勢価額)を下回る価額での低額譲渡が行われた場合は、贈与税は、路線価額ではなく、実勢価額(取得時における通常の取引価額に相当する金額)によって課税するとの個別通達が存在するからです。
したがって、贈与した土地の実勢価額が4000万円であれば、受贈者(息子)に対しては差額の2000万円についての贈与税が課税されてしまうことになります。
しかし、これはダブルパンチ課税の序盤戦です。
次に、本物のダブルパンチ課税を説明してみます。つまり、この土地が、個人(息子)に対してではなく、会社に対して贈与された場合の課税関係です。この場合は次のような課税関係が生じてしまいます。
無償で贈与した贈与者(父)に対し、譲渡所得課税を行う課税の根拠は所得税法59条と60条に定めてありますが、この説明は別の機会に譲ることにして、さらに行われてしまうのが次のトリプルパンチ課税です。
トリプルパンチ課税が行われてしまうのは、上記に限りません。次のような場合にも、一つの取り引きについて3度の課税が行われてしまうことになります。
1)会社から役員に対して所有資産を無償で贈与した場合。@会社には譲渡益課税が行われ、A役員には給与所得課税が行われます。そして、会社が納税を怠れば、B役員に対して第二次納税義務(法人税の代理納付義務)が課されることになります。
2)会社の売上を代表者が私消していた場合。@会社には売上の計上漏れとして法人税が課税され、A役員には給与所得課税が行われます。さらに、場合によっては、B会社に対しては支出額の40%の税率による使途秘匿金課税(租税特別措置法62条)が行われる可能性があります。
課税されないと思った取り引きが課税対象だった。これだけでも相当の悲劇ですが、さらにダブルパンチ課税が行われ、続いてトリプルパンチ課税が行われるとの事態になってしまったら救いがありません。イレギュラーな取り引きを行う場合は、正面からだけではなく、側面、裏面からも、課税関係を検討してみる必要があるのが税法の課税関係です。