課税権の除斥期間
過少申告の場合に行われる更正処分、あるいは無申告の場合の決定処分には期間制限があります。これは時効ではなく、除斥期間ですが、以前には次のように分類されていました(国税通則法70条)。
更正処分の場合でしたら、法定申告期限から仮に2年を経過した後に更正処分が行われた場合であっても、延滞税の計算期間は1年間に限定されます(国税通則法61条)。しかし、決定処分の場合は、法定申告期限の翌日から納付の日までの延滞税が課税されます。その意味で、無申告のリスクは、加算税よりも、延滞税にあると考えた方がよいかもしれません。
その後、悪質な脱税について、5年を遡っての更正処分が行えないことに批判が集まり、次のような期間制限が追加されました(国税通則法70条5項)。
なお、7年間に遡って課税処分が行われるのは、「偽り不正」の逋脱額には限定されません。仮に、6年前の申告について、「偽り不正」の逋脱額が200万円で、その他の過失による逋脱額が800万円の場合に、遡っての課税処分が行われるのは、偽り不正部分に限った200万円ではなく、過失による逋脱額を含めた1000万円についての課税処分です。もちろん、重加算税が課税されるのは200万円部分だけであり、800万円部分に課税されるのは過少申告加算税です(最高裁昭和51年11月30日判例時報833号57頁)。
さらに、平成15年3月31日の税制改正で導入された相続時精算課税に関連し、贈与税の課税期間について次のような特例が設けられました(相続税法36条)。
たとえば、平成15年に3000万円の贈与を受け、相続時精算課税に基づく贈与税を申告していた場合に、平成16年に2000万円の贈与を受け、これについて贈与税の申告を怠り、その後6年が経過し、贈与税の課税については除斥期間が成立した場合です。この場合においても、相続時には、相続時精算課税の適用を受けた財産として相続税の課税価額に取り込まれるのは3000万円ではなく、5000万円だということです(相続税法基本通達21の15−1)
次に、平成16年の税制改正で、法人税について、次のような除斥期間が定めれれることが予定されています。これは青色欠損金の繰越控除期間が7年間に延長されたことに関連しての改正です。