郵便による申告(田中)(2)

件名:土壇場の申告はどこまで認められるのか?

◆1)税務申告書の提出方法

 税務申告書の提出方法には、1)税務署の窓口に直接に提出する方法、2)税務署の夜間ポストに投函する方法、3)郵便や宅配便を利用する方法があります。そして、2)の税務署の夜間ポストなら、朝一番の開函までに投入しておけば前日の収受印が押されることはご承知の通りです。

 しかし、郵便ポストへの投函は、逆に、当日中に投函しておいても、翌日付の消印が押されてしまうことがあります。そのことが争われた審判例や判決がありますので紹介します。

◆2)郵送による申告書の提出期限

 税理士自身が請求人になった事例で、所得税の確定申告書が郵便によって提出された案件です。3月17日に税務署に送達された確定申告書の封筒の消印は3月16日になっていました。このために期限後申告として扱われてしまいました。

 税理士は、3月15日中にポストに投函したが、その日の郵便物の最終回収の時刻後だったため、通信日付印が16日になってしまったのだから、税務署の時間外文書収受箱と同様に期限内申告書として取り扱われるべきと主張しました。しかし、この主張は認められませんでした(名古屋審判所平成12年10月10日裁決)。

 やはり、翌日付の日付印になってしまった事案について、申告書をポストに投函するところを撮影したビデオがあるので、申告書を期限内に発信した事実を証明できると主張した珍しい訴訟がありますが、この事案でも納税者の主張は認められませんでした(千葉地方裁判所平成12年4月26日判決)。

 郵便での提出には、この他にも注意すべき点があります。一つは宅配便による提出。宅配便は国税通則法第22条の郵便には該当しませんので、「郵便物の通信日付印により表示された日に提出がされた」とはみなされません。

 次に注意を要するのが国税通則法22条の適用範囲です。これが適用されるのは、納税申告書と、それに添附すべき書類などに限られます。ですから、それ以外の各種申請書や届出書は、確定申告書に同封して提出しても、その郵便が期日内に配達されなければ期限を守ったことにはなりません。

◆3)税務当局では弾力的な運用も

 ただ、税務当局の取り扱いは、必ずしも、原則通りではないようです。情報公開法によって入手が可能になった「源泉所得税関係質疑応答事例集」や「消費税審理事例検索システム」などの税務当局内部マニュアル「白本」には、例えば、次のような書類は、国税通則法22条が認める書面ではないが、同条の規定に準じて取り扱うとしています。

 (1)法人税や所得税の青色申告承認申請書、(2)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、(3)消費税課税事業者選択届出書、(4)消費税簡易課税制度選択届出書。

 いずれにしても、時間に余裕のない仕事はミスを犯す原因となります。実務においては、申告書等の提出は土壇場を避け余裕を持って行いたいものです。

                      taxMLグループ(田中 良幸)