民事再生と会社更生(最終)

 会社更生と民事再生−税務上の取扱の相違点

◆1)事業年度、財産評定の相違点

 代表的な倒産処理法である会社更生法と民事再生法について、税務上の取扱の相違点を検討してみようと思います。まず、会社更生では、開始決定日と更生計画認可日に事業年度が終了します(会社更生法269条2項)が、民事再生では事業年度の変更はありません。

 次が財産の評価損益です。会社更生では、財産評定によって評価損益を計上した場合(会社更生法182条1項)は、税務上も、それが益金(法人税法25条1項)、あるいは損金に計上されることになります。しかし、民事再生の場合は、評価損の計上は認められていますが、評価益の計上は要求されていません。民事再生法の財産評定(民事再生法124条)は、破産配当との対比のためのものであって、帳簿価額の改訂のために行うものではないからです。

◆2)欠損金の取扱の相違点

 青色欠損金は5年間の繰越しか認められていませんので、多額の債務免除益が計上された場合には、債務免除を受けた年度において法人税額が算出されてしまうことにもなりかねません。

 そのため、会社更生や民事再生では、5年を超えた繰越欠損金(特例欠損金)の控除が認められていますが、その内容には次のような違いがあります。

 まず金額ですが、会社更生の場合は特例欠損金の全額が対象ですが、民事再生の場合は特例欠損金から資本積立金を控除した残額に限っての欠損金控除の制度です。

 次が控除の順番です。民事再生では、まず5年以内の青色欠損金を控除し、次に特例欠損金を控除します。しかし、会社更生の場合は控除の順番が逆になります。先に特例欠損金を控除し、次に5年以内の青色欠損金を控除するとの順番です。会社更生の場合は5年内の青色欠損金を温存できる優遇的な処理が準備されているわけです(大阪高裁平成2年12月19日判決)。

◆3)債務免除益の先延ばし処理

 欠損金額を超える債務免除益が計上される場合には、債務免除益の計上を先延ばしする手法が検討されることがあります。仮に、債務額の7%を毎年1%ずつ弁済するとの弁済計画の場合に、最終の7年目の弁済が終わった段階で残債務93%を免除するとの弁済計画です。このような方法なら債務免除益の計上を7年後に先延ばしすることができます。債権者は、5年を超えて支払いを受ける部分について貸倒引当金を計上することができますので、債権者に不利益を与えることはありません。

 しかし、債務者には最終弁済期日に多額の債務免除益が計上されるとの問題があります。それに、このような弁済計画が税務上の取扱として認められるのか否かには疑問も残りますので、実務の集積が待たれるところです。法人税等の課税の有無は再建の可能性に大きな影響を与えます。企業再建手続において知っておくべき課税関係を会社更生と民事再生について紹介してみました。

taxMLグループ(荻野 芳夫)