TFT(菅野)6

見えてきた新投資信託税制(ETFとオープン型投信を比較して)

◆1)二つの証券税制を比較してみると

 平成15年の税制改正の中には金融証券税制の改正が盛り込まれています。今回は、この改正のうちの投資信託の個人の課税関係について、いま注目を集めているETF(株価指数連動型上場投資信託)と、もっともポピュラーなオープン型株式投資信託(公募)を比較して検討してみます。

◆2)平成14年以前の課税関係

 ETFは、日経平均株価指数などに連動する株式を集めて運用している投資信託で、市場に上場され取引されています。ETFについては、収益分配金に対する課税も、譲渡所得に対する課税も、上場株式等と同様の課税関係になっています。ただし源泉分離選択課税制度(所得税)は選択できません。

 これに対してオープン型投信は、同じように株式を集めて運用する投資信託ですが、収益分配金(特別分配金は非課税)、解約差益、それに償還差益についても20%の源泉分離課税によって課税関係が完結します。

 買取請求によって中途換金した場合は、譲渡益は非課税になりますが、解約差益に対する課税との整合性を考えて、譲渡益の20%が特別控除額として譲渡対価から差引かれます。

 ですからETFとオープン型投信は、収益分配金について配当控除できるか否か、譲渡損失について他の株式等の譲渡所得と損益通算できるか否かという2点で異なります。

◆3)平成15年以後の課税関係

 平成15年税制改正要綱の中には、ETFの課税関係の詳細は記載されていませんが、従来から上場株式等とほぼ同様の課税関係ですので、平成15年4月1日以降に受け取る分配金については10%の源泉税が徴収され、配当金額の多寡にかかわらず、確定申告不要制度を利用し、あるいは確定申告によって精算するとの制度が選択できることになると思われます。

 ETFを譲渡した場合は、譲渡益に対し、平成15年1月1日以降は10%の税率を乗じた税額になり、確定申告不要の特定口座を選択した場合を除き、株式等の譲渡所得等としての確定申告が必要になるはずです。

 これに対し、オープン型投信の分配金については、平成16年1月1日以降は10%の源泉税が徴収され、確定申告不要制度が利用できるようになると思われます。また償還や、中途解約による損失は、同日以後、他の株式等に係る譲渡所得等の金額と損益通算することができるようになると思われます。

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 このように平成15年まではETFとオープン型投信の課税関係は異なります。平成16年以降は、両者の収益分配金は原則的には10%申告不要を選択することができると思われます。しかし、オープン型投信の償還差損と解約差損はETFを含めた他の株式等の譲渡所得と相殺できますが、償還差益と解約差益は他の株式等の譲渡損失と相殺することはできないと予想されます。

               taxMLグループ(菅野真美)