無償の減資(三谷)3

タイトル名: 無償減資では法人住民税の均等割は安くならない!!

◆1)無償の減資では資本等の金額は減少しない

 不況の時代ですから法人住民税の均等割まで節約したくなります。法人住民税の均等割は、資本金と資本積立金を合計した「資本等の金額」を算定の基礎としています。それなら欠損金を補填するための無償減資をしてしまえば均等割の節税になるのではないか。しかし、このような計算にはなりません。これが金銭等の払戻しのある有償減資ならよいのですが、無償減資の場合は、資本金の額は減少するものの、同額について資本積立金が増加し、結局、法人住民税の均等割額の算定の基礎となる「資本等の金額」は減少しないとの結果になってしまうからです。

 このような結果が生じることになったのは、みなし配当課税の廃止と、資本の部について、基本的な考え方が変更されたことにあります。このことを例を設けて説明します。

◆2)無償の増資から考えてみたら

利益積立金の資本組入れの制度があります。平成13年度改正前の税法のもとではみなし配当所得課税が行われていました(旧法人税法24条第2項)。会社が留保した利益を株主へ配当し、直ちに増資をした場合と経済的実質がおなじであるとの考えに基づくものです。しかし、現行法では、利益剰余金を資本に組入れても、みなし配当所得課税は行われません。新しい考え方では、仮に1000万円の利益剰余金の資本金への組入れが行われた場合は、税務上は、次のような仕訳が行われることになります。

資本積立金 1000万円 / 資本金 1000万円

 つまり、利益剰余金が資本に組入れられたにもかかわらず、その事実は無視され、資本積立金が資本に組み入れられたものとされます。仮に、資本積立金が存在しない状態なら、マイナスの資本積立金が計上されるというのが新しい資本等の金額についての考え方なのです。

◆3)無償の減資を考えてみたら

この理屈は無償の減資の場合も同様です。仮に、1000万円を無償減資した場合に行われる税務上の仕訳は、次のような仕訳です。

資本金 1000万円 / 資本積立金 1000万円

 仮に、欠損金を補填するために無償減資をした場合には、会計上は欠損金(マイナスの利益剰余金)の減少と、同額の資本金の減少になりますが、税務上は、利益積立金は変更せず、資本積立金を増加し、同時に資本金を減少するとの処理になります。新しく採用された資本等の金額についての考え方を一言で説明すれば、資本の部についての会計処理と税務処理の離別です。

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 平成13年度の税法改正後に採用された資本等の金額についての考え方によれば、無償での増減資では、資本等の金額は変動しません。これを均等割の節税のための減資との例で説明してみました。

                taxMLグループ(税理士 三谷 仁)