誤りやすい事例集(ゲラ訂正)

東京国税局税務相談室版の「誤りやすい事例集」

◆1)情報公開法の施行と「白本」の登場

 平成13年4月1日の情報公開法の施行によって、これまでオープンになっていなかった官公署の内部文書が簡単に入手できるようになってきました。最近、業界誌においてその内容を紹介する記事が散見されるのが、国税庁課税部課税課作成の質疑応答集、いわゆる「白本」です。所得税、法人税、消費税など、税目ごとに分厚い冊子となっており、表紙が白いので関係者の間でこう呼ばれているものです。

◆2)簡潔で、項目多彩な「誤りやすい事例集」

 そして、新たにその存在が明らかになったのが、東京国税局税務相談室作成の「誤りやすい事例集」(平成14年6月)です。これは1問1問が簡潔にまとめられた大量の質疑応答集です。

 いま分かっているだけも、所得税151、源泉所得税30、譲渡所得税60、相続税・贈与税・財産評価84、法人税62、消費税43、印紙税17の合計447項目が収録されています。現時点で開示されたのは、この中の法人税のみですが、その中から実務の参考なる幾つかの事例を紹介すれば次の通りです。


 ◆法人税 共有の減価償却資産の10万円未満の判定
  《誤った認識》 共有者全員の取得価額で判定する。
  《正しい答え》 自己の持分に対応する部分の価額により判定する。

 ◆法人税 営業権の減価償却
  《誤った認識》 減価償却資産である以上、期中取得の場合の償却限度額の計算は月割計算する。
  《正しい答え》 営業権の償却限度額の計算は、期中取得であっても月割計算は行わない。

 ◆法人税 中間法人の取り扱い
  《誤った認識》 公益法人等とみなされる。
  《正しい答え》 普通法人と同じ課税関係となる。

 ◆法人税 法人成りの場合の設立期間中に生じた損益の計上時期
  《誤った認識》 設立期間中に生じた損益は、設立後最初の事業年度の損益に含めることができる。
  《正しい答え》 法人成りの場合は、設立登記の日を境に個人・法人の損益を区別する。

 ◆法人税 市場価格が下落しているゴルフ会員権(預託金方式)の評価損
  《誤った認識》 有価証券に準じて、要件を満たせば評価損の計上は認められる。
  《正しい答え》 施設利用権(プレー権)であり評価損の計上は認められない。

◆3)まだまだ眠る「お宝」情報

 公開された情報は、既にTAINS(税理士情報ネットワークシステム)の税法ータベースで閲覧できるようになっています。課税庁の内部情報ですから、その説得力は市販の質疑応答集を上回るはずです。

 いままで公開された情報は氷山のほんの一角に過ぎず、役所にはまだまだ大量の有益情報が眠っているはずです。さらに新しい情報が公開されることを期待したいと思います。

                   taxMLグループ (税理士 田中良幸)