本当の最終版「株式を消却する減資と譲渡損」

株式を消却する減資と譲渡損

◆1)平成13年商法改正と減資の方法

 平成13年改正商法は、金庫株解禁と併せて、額面株式を廃止し、1株当たりの純資産を5万円とする制限も撤廃すると同時に、株式併合を減資の方法から独立させました。その結果、改正後は、減資の方法から株式併合が消え、1)株式数を減少させる「株式消却を伴う減資」と、2)株式数を減少させず、資本の額だけを減少させる「株式消却を伴わない減資」の2つだけになりました。そこで、株式消却を伴う減資につき、1)有償の場合と、2)無償の場合について、株主の課税関係を考察します。

◆2)株式消却を伴う有償減資

 株式消却を伴う有償減資の場合は、税法上、株主に、みなし配当と株式譲渡損益を認識します。

 有償減資の払戻金は、税法上、株主が出資した資本等の金額の払戻し部分と、利益積立金の払戻し部分に分解され、前者は株式の譲渡対価とされ、後者は配当とみなされます。

 仮に、1株5万円の払戻しを受けた場合に、そのうちの2万円が利益積立金の払戻しとして配当とみなされる場合は、株式の譲渡対価としての受領額は3万円になります。この株式の譲渡対価の金額は、株主が所有していた消却株式の帳簿価額と比較され、株式の譲渡損益が計算されます。

 税法上の「譲渡」概念は、民法上の売買等よりも広く、代物弁済、競売、財産分与、収用などの所有権を移転し、消滅させる一切の行為を含むと取り扱われています。したがって、株式消却も、その株式に係る株主権の消滅であり、株券も、商法213条による株券提供手続を経て消滅しますので、強制消却であっても、税法上は、株主における株式譲渡とされるのです。

◆3)株式消却を伴う無償減資

 株式消却を伴う無償減資の場合は、払戻金はゼロなので、利益積立金の払戻しを受けたとのみなし配当課税は行われませんが、無償であっても株式消却なので、税法上は、この場合も株式譲渡があったと取り扱われます。

 この場合は、減資払戻金はゼロですから、株式譲渡対価はゼロになり、譲渡原価になる消却株式の帳簿価額が譲渡損失として認識されます。ここが平成13年度税制改正前と大きく異なる点です。

 改正前も、減資を株式の譲渡としていましたが、譲渡原価は、「保有株式帳簿価額のうち交付金銭等の金額に達するまでの金額」としていたので、株式消却を伴う無償減資では譲渡原価はゼロになり、株式数だけの減少として株式帳簿価額の付替計算を行うだけでした。

 改正後は、消却株式に対応する株式の帳簿価額が譲渡原価になり、無償減資の場合も譲渡損が計上されることになります。しかし、税法上は、無償減資も譲渡とされますので、仮に、譲渡対価(無償減資の場合はゼロ)と株式時価との間に差が存在すれば、その差額は譲渡損ではなく、寄附金とされてしまいます。

 つまり、株式消却を伴う無償減資によって株主に譲渡損が認められるためには、評価損と同様に、発行法人が相当の欠損金を抱える等、資産状態が著しく悪化している事実と、経営再建策の一環として、株主責任上、欠損填補を行う必要がある等の経済的合理性が要求されるのです。