再建型と清算型(岩渕)

倒産処理実務マニュアル

◆1)再建型と清算型の選択基準

 関与先の倒産が避けられない時代です。そこで、倒産について相談された場合にどのような対処方法をアドバイスすべきか、その判断方法を検討してみます。倒産処理として選択できる手法としては、大きくは、1)会社更生、2)民事再生、3)破産、4)私的整理のいずれかでしょう。

 会社更生と民事再生は再建型の手続きですので、事業に収益力があり、営業活動によるキャッシュフローがプラスであることが必要です。不採算部門の廃止やリストラでプラスに転じる場合も再建型を選択することは可能ですが、退職金や店舗撤退に伴うコストが発生することがありますし、業種や規模によっては、再建型手続の申立によって売上減少等の事態が起きる可能性もあるので注意が必要です。

◆2)会社更生と民事再生

 会社更生では、会社の再建は裁判所が選任した管財人が行い、倒産に経営責任のある旧経営陣は排除され、責任追及の対象になりやすいので、旧経営陣にはメリットの少ない手法ともいえます。

 これに対し民事再生では管財人が選任されず、経営者と申立代理人(弁護士)の二人三脚での再建手続になります。したがって営業活動で資金を産み出すことができることに加え、経営者に会社を再建させる熱意、能力、人望があることと、有能な申立代理人を確保することも重要となってきます。

 民事再生は、会社更生と異なり担保権者を拘束しない手続ですので、担保を設定している不動産などが営業上不可欠な場合には、全担保権者と弁済協定を締結するか、DIPファイナンスやスポンサーの資金援助による担保権消滅請求を検討することになります。それらが不可能なことが予め分かっている場合には民事再生は困難ということですので、むしろ会社更生に向いているといえるかもしれません。

 再生型の手続きをとる場合には運転資金以外に裁判所に納める予納金が必要になり、これはおおむね負債に応じて決定されています。一例を挙げますと負債が10億円であれば予納金は350万円から500万円といったところですが、これ以外に申立代理人へのほぼ同額〜1.5倍程度の報酬も必要です。なお、これらの費用を含めたうえで申立後少なくとも約6ヶ月の資金繰りの目処が立たないと、そもそも手続き自体の開始に至らないことになりかねないことに注意する必要があります。

◆3)破産と私的整理、そして倒産処理の選択の仕方

 破産手続を選択するのは、再建が不可能で倒産時点での混乱が予想される場合、更には代表者に私的整理を進める能力が無い場合などです。ただし、破産するにも費用が必要で、負債などに応じて20万円から400万円程度の予納金とその半額〜同額程度の申立代理人への報酬が必要です。

 私的整理は事業の閉鎖の際に混乱が生じない場合などに選択できる手法で、破産の予納金や、裁判所を利用する時間を節約し、売掛金などを迅速に回収し、債権者に平等弁済してしまう方法です。

 以上のほか、再建型手続きの中で、裁判所の許可のもと事業を別会社に移転して再生させ、会社は清算することもありえます。倒産処理には会社を捨てて事業を残すという方法もあるということです。

                 taxmlグループ(弁護士 岩渕健彦)