破産の税務(戸田)

会社が破産した場合の税務

◆1)破産会社と税務申告

 破産は解散事由ですので、破産日に通常の事業年度は終了し、翌日からは清算手続に入ります。その後は、事業年度が終了する毎に清算予納申告等を行い、手続が終了した段階で清算確定申告を行います。破産の税務で重要なことは、単に申告・納税することではなく、逆に過年度に納めすぎていた税金の還付を受けることです。そこで、破産手続における還付手続を検討してみます。

◆2)還付が期待される税金

 還付が期待されるのは、(1)予納申告した法人税、(2)預金利息等に係る源泉所得税、(3)違法配当に係る源泉所得税、(4)青色欠損金の繰戻による法人税、(5)仮装経理による過大納税額、(6)貸倒損失の計上等による消費税などです。

 (1)、(2)とも申告さえすれば還付は容易ですが、通常は期待できる程の金額ではありません。(3)は特殊なケースです。一般的に期待できるのは(4)〜(6)ですが、これは不用意な会計処理や申告をすると還付が受けられなくなってしまうので注意が必要です。

◆3)解散(破産)事業年度における決算・申告が重要

 |…第5事業年度…|…第6事業年度…|…破産(解散年度)|…第1清算年度…|…第2清算年度…|

 (4)の青色欠損金の繰戻還付には解散年度の処理が重要になります。青色欠損金の繰戻還付は、清算年度の予納申告で生じた欠損金には適用されないからです。

 青色欠損金の繰戻還付は、解散の場合には解散年度の欠損金だけでなく、その前年度の欠損金も繰戻還付の対象になります。つまり1年決算法人の場合ですと、解散年度の欠損金が第6年度に繰り戻せるだけでなく、第6年度の欠損金が第5年度に繰り戻せるのです。

 しかし、第1清算年度以降の欠損金の繰戻還付はできません。したがって第5年度か第6年度に納税額があれば、第6年度あるいは解散年度において、各種引当金、減価償却費などを限度額まで計上し法人税の還付を受けることになります。

 (5)の仮装経理に基づく過大申告については、嘆願申請によって過去5年間に遡っての還付が期待できます。破産会社は粉飾しているケースが多いので、この見直しは不可欠です。仮装経理の更正には「確定した決算での修正の経理」が要件ですから、解散年度が仮装経理を修正する最後のチャンスになります。解散年度では法人税の申告を急がず、期限後申告も覚悟の上で、関係者から事情聴取しながら従来の決算や申告内容を慎重に洗い直す必要があります。

 (6)の貸倒による消費税還付については、売掛金の発生と回収不能が証明できるように帳簿・請求書、回収状況の説明資料等を用意しておく必要があります。また回収不能の売掛金について裁判所に放棄の許可を求め、その許可通知を申告書に添付するのも実務的です。

     taxmlグループ(公認会計士・税理士 戸田 厚司)