中小企業にとっての連結納税

◆1)意外と多かった中小法人の連結納税申請

 平成14年10月、国税庁公表の「連結納税に係る承認申請書の提出状況」によると、申請件数は、親会社数換算で164件。そのうち47件は税務署所掌法人でしたので、約30%弱は資本金1億円以下の中小法人でした。「連結納税=大会社」というイメージがある中で、これは意外な数字です。そこで、中小企業にとっての連結納税のメリット・デメリットとその課題を検討してみます。

◆2)連結納税のメリットはグループ内の所得・欠損通算による税負担軽減

 連結納税では、グループの一体性に着目し、グループ各社の所得と欠損を通算し、一体として連結所得を計算し、法人税を課税します。つまり、連結納税最大のメリットは、グループ内の所得・欠損通算による法人税負担の軽減です。

 これを享受するには、次の2条件を満たす必要があります。1)連結グループは親会社とその直接又は間接保有の100%子会社に限定され、2)グループ内に所得法人と欠損法人とが存在すること。

 中小企業グループの殆どは、オーナー一族が、直接、会社の株式を所有しています。連結納税を適用するには、まず、この株式保有関係を整理し、100%親子会社関係を作りだす必要があります。株式譲渡益課税と資産の評価益課税なしでこれを実現するには、例えば、株式交換の利用がありますが、無制限にこれを認めるとグループ外欠損法人の持込みが可能になりますので、税逃れ目的の場合と、多額の含み損益の実現を見込んだ場合は、グループ外法人の無税持ち込みはできません。また、単体納税時代の繰越欠損金を連結納税に持込めるのも、親会社だけで、子会社の欠損は切捨てです。

 したがって、税負担軽減メリットが出るのは、a)親会社に繰越欠損金又は含み損がある場合か、b)100%子会社又は親会社が赤字体質で、他の連結納税法人が黒字体質である場合に限られます。

◆3)連結グループを一体として計算する各項目はデメリット?

 さらに、連結グループを一体として要件判定や所得計算を行う次の項目はデメリットを生じさせる可能性があり、所得計算上の注意点になります。

 a)寄附金の損金不算入額はグループを一体として計算。その損金算入限度額の計算基礎となる所得金額と資本等金額は連結所得金額と親会社の資本等金額を使用。グループ内相互の寄附は全額損金不算入。b)貸倒引当金の繰入限度額はグループ内法人間の金銭債権を除外して計算。c)交際費の損金不算入額は親会社の資本金額を基にグループを一体として計算。d)グループ内法人からの受取配当は負債利子を控除せず、全額益金不算入。e)親会社が同族会社である場合、グループを一体として留保金課税適用。f)中小法人の軽減税率は親会社の資本金額によりグループ全体に1度だけ適用。

 このようなメリットとデメリットを比較考量し、さらに事務負担の増加等も考慮し、合併等と比較して、なお中小企業にとって連結納税適用が有利か否かを判断することが肝心です。

              taxmlグループ(税理士 掛川 雅仁)