DESと貸し倒れ処理(掛川)

 DESと貸し倒れ処理

◆DES=「債務の資本化」=「債権の株式化」

 膨大な債務を抱え、経営が著しく悪化した会社の再建策として、会社債務を資本に振り替えるDES(Debt Equity Swap)が注目されています。DESは、債務者から見れば「債務の資本化」ですが、債権者にとっては「債権の株式化」です。そこで、債権者におけるDESの税務上の取扱いを検討します。

◆「債権の株式化」=「債権の現物出資」

 「債権の株式化」では、債権者が、債務会社に対し有する債権を、その会社に現物出資し、対価としてその会社の株式を受け取ります。税務上は、現物出資も譲渡の一形態なので、1)「債権の現物出資による譲渡損益」と、2)対価として得た「株式の取得価額」は幾らかという問題が生じます。

 まず、1)の「債権の現物出資」ですが、平成13年度に創設された「組織再編税制」によれば、100%子会社に対する現物出資のように、法人税法上の適格現物出資に該当する場合は、現物出資資産をその税務上の帳簿価額によって譲渡したものとされ「債権の譲渡損益」は生じません。

 一方、非適格現物出資に該当する場合は、時価により債権の譲渡が行われたとされるので、税務上、「債権の現物出資による譲渡損益」を認識します。金融機関等が行うDESは、これに該当します。

◆現物出資した債権の帳簿価額と取得した株式の時価との差額は

 「債権の譲渡損益」の認識は、2)「債務会社株式の取得価額」と表裏一体です。現物出資で得た株式の取得価額は、税法上、現物出資資産の時価ではなく、取得株式の時価とされています。例えば、次のような場合、債権者は債権60を現物出資し、その対価として時価20の株式を得たことになりますから、DESにより債権譲渡損(一種の「支援損失」)40が生じることになります。


 DES前のB/S    DES後のB/S    (債権者の仕訳)
 ────┬────  ────┬────               但し、既発行
 資産 20│負債 60  資産 20│負債  0  株   式 20/債 権 60 済株式数は無
     │資本▲40      │資本 20  債権譲渡損 40       視して計算

 ただし、この債権譲渡損が、税務上容認されるのは、法人税基本通達9−4−2に定める合理的な再建計画などの損失を負担するについての相当な理由がある場合に限ります。これ以外の場合、債権譲渡損により供与する経済的利益の額は、税務上は贈与(寄附金)であるという考え方があります。

 しかし、債務超過の会社に対する増資に応じる場合が、常に、寄附金と認定されてきたわけではありません。企業支配のために、経営判断として行われる増資もあるからです。したがって、法人税基本通達9−4−2に該当しない場合に、それが寄附金になってしまうのか、あるいは企業支配株式等として有価証券の取得価額になるのか(法人税基本通達9−1−12・15)、この点については答が出ていないのが現状です。これは、金融機関等以外の同族グループ等が行うDESでの注意点です。

                 taxMLグループ(税理士 掛川雅仁)