平成13年商法改正で、減資の方法は、1)株式数が減少する「株式消却を伴う減資」と、2)株式数が減少せず、資本の額だけ減少する「株式消却を伴わない減資」との2つだけになりました。今回は、株式消却を伴わない減資につき、有償と無償の場合の課税関係を考察します。
まず、有償減資ですが、発行法人と株主の各々の税務上の仕訳は、次のようになります。
前提条件:資本の減少額 10、発行済株数 10株、株主の株式取得価額 50
このように、株数が減少しない減資の払戻金は、税務上、発行法人の簿価純資産構成比に応じた資本の部の一部払戻しと考え、株主側は、払戻金のうち資本等金額対応額を株式譲渡対価とし、利益積立金対応額を配当とみなします。その結果、株主側では、所有株式の帳簿価額のうち、発行法人の簿価純資産のうち払戻金対応額を株式譲渡原価として減額し、残りの株式の帳簿価額を計算します。
なお、無償減資は、上記算式の払戻金に0を代入して計算するので、株主側では何も処理せず、発行法人は,(会計上)資本金10/資本金減少差益10(税務上)資本金10/資本積立金10と処理します。
このように、実際に株式を売却も消却もしないのに、株式譲渡損益とみなし配当課税を行うのは、税法の抜け穴を封じ、同じ改正商法で登場した金庫株に対する課税と均衡を図ったためです。例えば「金庫株買取り(@払戻金交付)+金庫株消却(A株数減少)+その後の無償減資(B資本金減少)」と「株式消却を伴わない有償減資(@+B)+その後の株式併合(A)」とでは、経済的効果として同じ結果を生み出せます。こうした行為に対し同様の課税を行い、資本払戻しに対する課税を統一したのです。
taxMLグループ(税理士 掛川雅仁)