相続時精算課税制度に基づく生前の贈与を行った場合と、そのような生前贈与を行わず、相続による遺産の承継を選択した場合を比較すると、下記のようになります。
生前贈与財産からの債務控除 | ○ | 旧制度では生前贈与加算された部分からは債務控除なし |
時価(評価額)の変動 | ? | 贈与財産の評価額上昇でメリット・下落ならデメリット |
3年内譲渡の場合の取得費加算 | △ | 措置法39条・租特法令25条の16 |
特定事業用資産の課税価格の特例 | △ | 措置法69条の5 |
小規模宅地等の評価減 | × | 精算課税制度における生前贈与分には適用されない |
延納期間の延長 | × | 生前贈与財産が不動産等でも延納期間は延長されない |
物納 | × | 生前贈与財産を物納に充てることはできない |
登録免許税 | × | 生前贈与なら1%・相続なら0.2% |
不動産取得税 | × | 生前贈与なら課税・相続なら課税なし |
相続税法改正等の影響 | × | 課税最低限引き下げで相続時に思わぬ課税 |
逆相続に伴うリスク | × | 生前贈与しなかった場合に比べ税負担増加の場合あり |
※○精算課税選択で有利となる場合、×は不利となる場合、△は同一結果となる場合
相続時精算課税制度を選択した場合には、生前贈与財産から債務控除が可能となります。選択しなかった場合の生前贈与加算では、加算部分からの債務控除ができないため、誤解しやすい部分です。
特定事業用資産の課税価格の特例とは、相続税の課税価格に組み入れる金額について、一定の同族会社株式については10%相当額(3000万円が上限)を、一定の森林については5%相当額の減額を受けることができる制度です。相続時精算課税適用者は、贈与時に要件を満たしていれば、減額後の金額を課税価格に組み入れることができます。一方で、小規模宅地等の評価減は、相続時精算課税適用者が生前に受け取った財産には適用されないので、注意が必要です。
さらに検討を要するのが逆相続があった場合です。精算課税制度では、子が親よりも先に死亡するなど相続順序が入れ替わると、相続税の負担倍増という状況に陥ることがあるのです。
精算課税制度を選択していなければ、子の代襲相続人である孫が一度だけ相続税を負担すれば課税関係は終了します。ところが、精算課税制度による親から子への贈与があった場合は、その贈与財産につき、子から孫への相続段階と、父から子への精算課税段階の二段階で課税が行われるのです。
taxMLグループ(税理士 飯田聡一郎)