資本金1億円の損得

◆1億円を超えた場合の主なデメリット

 資本金の額が違うだけで、同じ所得であっても支払う税額が大きく変わることがあります。資本金の額が多くなると、税負担が増えるケースが大半です。中小企業者に対する税制上の優遇措置を受けられなくなる区切りの一つとして『資本金1億円』があります。

 資本金が1億円を超えた場合のデメリットで主なものを拾い出してみると次のようになります。  



 (1)年800万円以下の所得でも法人税率が30%  (2)交際費の定額控除限度額400万円の適用不可
 (3)貸倒引当金の法定繰入率の適用不可  (4)事業税の外形標準課税の対象になる
 (5)自己資本比率が50%以下の場合の留保金課税停止措置の適用不可
 (6)受取配当等の益金不算入で、関係法人株式等以外の株式等に係る配当の益金不算入割合が低くなる(60%→50%)
 (7) 退職給与引当金の取崩額が増える(10年間で取崩→4年間で取崩)
 (8)中小企業者(※)の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入特例の適用不可
 (9)中小企業者等(※)が機械等を取得した場合等の一定の税額控除・特別償却の適用不可
 (※)は大規模法人に単独で1/2以上、複数で2/3以上の資本が所有されていないことが必要です。

◆資本金と資本等の額は異なる

 上記は全て資本金の額で判定しますが、税務では『資本等の額』で判断・計算するものがあります。以下に例をあげます。


 (1)外形標準課税の資本割額は資本等の額を課税標準として計算(納税義務は資本金の額で判定)
 (2)留保金課税停止措置の適用を判定する際の自己資本の額(これには利益積立金も含みます)
 (3)寄附金の損金算入限度額の資本基準額  (4)法人住民税の均等割
 (5)法人住民税の法人税割(地域によっては資本金で判定する場合もあります)

 資本等の額は資本金と資本積立金の合算額です。資本金は決算書に記載されている金額を確認すれば済みますが、資本等の額は決算書だけでなく、別表5(一)の資本積立金額の計算に関する明細書の確認が必要となります。資本金と資本等の額は似て非なるものなので注意が必要です。

◆減資による節税

 既に資本金が1億円を超えている場合でも、減資を行い資本金を減らすことで資本金が1億円を超えた場合のデメリットを回避することも可能です。ただし、無償減資では資本等の額は減少しません。減った資本金と同額の資本積立金が増えるためです。従って資本等の額で判断・計算する項目は減資前と変わりません。資本等の額を減少したい場合は有償減資を選択することになります。有償減資の場合には、株主にみなし配当課税が生じることもありますので注意が必要です。

 

             taxMLグループ(税理士 奥田正名)