(破綻したゴルフ会員権の取扱い)
ゴルフ場が民事再生を申し立て、ゴルフ会員権の預託金がカットされあるいは一部の弁済が行われた場合の課税関係を実務で取り扱うことになりましたので、この経験を紹介してみようと思います。例として、預託金は2,000万円で入会金300万円の会員権を想定しますが、その取得の経過によって以下のようなケースが考えられます。
まず、プレー権は保証するが預託金の75%を免除し、残額の25%(500万円)が一括弁済される例ですが、1)個人の場合は免除額を課税所得から控除することはできません。その代わり免除額は取得費から減額されず、その後の譲渡原価になります。2)法人の場合は再生計画案が認可された事業年度に貸倒損失を計上し、帳簿価額を減額することになります。個人会員と法人会員について次のようにまとめられます。
個人会員 | A | B | C | D |
1) 弁済額−購入額 | ▲1,500万円 | ▲2,500万円 | ▲500万円 | 200万円 |
2) 1)に対する所得税法の取扱 | 損益通算、所得控除できない | 雑所得 | ||
3) 弁済後の取得費(名変料等含む) | 1,800万円 | 2,650万円 | 650万円 | 150万円 |
法人会員 | A | B | C | D |
1) 弁済額−購入額 | ▲1,500万円 | ▲2,500万円 | ▲500万円 | 200万円 |
2) 預託金のうち切り捨てられる額 | 1,500万円 | |||
3) 貸倒損失計上額 | 1,500万円 | 1,500万円 | 500万円 | − |
4) 収益計上額 | − | − | − | 200万円 |
5) 弁済後の簿価(名変料等含む) | 300万円 | 1,150万円 | 150万円 | 150万円 |
次にプレー権を保証し、預託金の75%を免除するのは上記の例と同じですが、残額25%が預託金として存続する場合です。基本的な課税関係は2と同じですが、預託金が現実には返還されませんので、個人のDで雑所得が課税されるのは退会したときになります。また、法人が有する会員権の簿価ですが、A〜Cは預託金残額分だけ2より高くなり、Aは800万円、Bは1,650万円、Cは650万円となりますが、Dは預託金残額がもとの購入額より高いので450万円のままとなります。
このように預託金のうちの減額分について、個人の場合は損益通算、所得控除は受けられませんが、取得費は減額されませんので、将来、会員権を売却、相続する際には注意が必要です。