株式交換(木本敦)訂正後

件名:株式交換・株式移転の中小企業的な利用法

□ 適格合併を行うための株式交換の利用

 オーナー経営者を中心とした企業グループ間での適格合併を行う場合について、その要件が整っていないときの救済策を検討してみようと思います。

 適格要件は、1)100%の支配関係か、2)50%超の支配関係が必要ですが、2)の場合は、消滅会社の従業者の80%以上の業務従事と消滅会社の事業継続が要件になりますので、たとえば、消滅会社が既に事業を休止している場合は適格要件を整えることは困難です。

 そこで100%の支配関係を作り出すことができれば処理が簡単ですが、その手法として考えられるのが株式交換です。株式交換によって被合併予定法人を合併予定法人の100%子会社にした後に合併すれば適格合併の要件を満たすことができます。

□ 連結納税における株式交換の利用

 関係会社に生じる欠損を有効活用するためには、連結納税制度の利用も一つの選択肢に入ります。連結納税制度を選択するためには、連結納税を選択する事業年度開始の6ヶ月以上前に100%親子関係が存在する必要があります。

 従来、この条件に当てはまらない形式で経営を行ってきた場合(複数事業を兄弟企業として経営している企業グループ等)であっても、株式交換で100%の親子関係を作り出してしまうことが出来ます。100%親子会社をつくる方法には、幾つかの方法が考えられますが、既存会社が繰越欠損金を有している場合には株式移転による方法でなければ、繰越欠損金を引き継ぐことが出来ない点に注意が必要です。

 また、連結納税制度適用開始前に生じた繰越欠損金は、親会社の繰越欠損金を除き、原則として連結所得に引き継げません。新規事業を新設子会社で開始したものの、立ち上げ段階で多額の赤字が発生すると見込まれる場合に、連結納税制度選択に6ヶ月間も要するとなると、企業グループ内に有効活用できない赤字が累積してしまいます。

 このような場合は、株式移転で100%親会社を新設し、承認申請の特例を利用すれば、100%親会社設立事業年度開始の日から1ヶ月を経過する日と、設立事業年度終了の日から5ヶ月前の日とのいずれか早い日を、連結納税制度承認申請の期限とすることができます。この親会社で新規事業を立ち上げれば、有効活用できる赤字を増すことが可能となります。

□ 株式交換利用時の注意点

 株式交換の目的に経済的合理性がないと判断された場合には、包括租税回避防止規定によって否認されるおそれがあります。また、株式移転で連結納税制度の適用を開始する際、この行為の目的が租税回避目的や、未実現損益の連結法人加入後の実現にあると判断されれば時価評価が強制されます。

 しかし、現状では、これらの判断基準が明確になっていません。通達等の公表で、中小企業でも税務面の憂いなく企業再編を進めることが出来るような環境整備を早期に行って欲しいものです。

            taxMLグループ(公認会計士・税理士 木本 敦)