適格年金の廃止(岡野)

 適格年金廃止後の新退職金給付制度

◆適格年金の廃止

 平成14年4月1日をもって適格退職年金の根拠となっていた法人税法施行令159条が削除されました。今後も継続して掛け金を支払うことは可能ですが、税制上の優遇措置(掛金の全額損金算入)を受けられるのは平成24年3月末日までとなります。また、会社分割や合併の場合を除き、新規加入も認められませんので、今後は適格年金に替わる新たな制度への加入を検討する必要があります。

◆適格年金廃止後の新たな退職金制度

 中小企業の場合、適格年金廃止後の退職金準備制度として、1)確定給付企業年金、2)確定拠出年金、3)中小企業退職金共済制度などの社外準備型の退職金制度が候補として挙げられます。そのほか、生命保険などを利用して、退職金の支給原資を確保する方法もありますが、税制上のメリットが少ないことや、退職時期により掛金返戻率が増減するなどのリスクがあり、採用には長期的な判断が必要です。

 また、平成14年度の改正で退職給与引当金の損金算入が認められなくなった現在では、社内で退職金原資を準備するというのも現実的ではありません。よって、中小企業においては、掛金を全額損金に算入しながら、確実に退職金原資を準備することができる上記1)〜3)の社外準備型の退職金制度を利用することが得策だと考えます。

 適格年金では、従業員が退職すれば、退職時の年齢に関係なく給付金が支払われていましたが、1)〜3)の中で「退職」を支給事由とするものは3)中退共だけしかありません。その他の制度は退職しても当然に支給されるわけではなく、1)では退職時の年齢が60歳に到達していなければ制度からの払い戻しはされませんし、2)においても50歳到達が要件となります。つまり、どちらも退職金の準備としては利用しづらい制度だと言えます。

◆退職金制度自体の見直しも必要

 掛金が全額損金になり、退職時に給付金が支払われるという点では、中退共を利用する中小企業が多いものと予想されます。しかし、この中退共においても、昭和61年当時には6.6%あった予定利率が、現在では1%まで落ち込んでおり運用次第によっては今後さらに給付額が減少することも考えられます。

 そもそも退職金制度は高度成長時代に、インフレを前提に作られた制度ですから、これをそのまま現在の企業にも当てはめようとすること自体に無理が生じてきているのではないでしょうか。従業員の福利厚生のために退職金制度を導入した企業も多いことでしょうが、インフレ時代に規程した退職金額を今後も従業員に約束していくとすれば、企業の存続自体が危ぶまれることになりかねません。そのような企業では、適格年金制度の廃止に合わせて、退職金制度自体を抜本的に見直してしまうのも企業存続の一つの対策かもしれません。

                   taxmlグループ(税理士 岡野 訓)