1)、2)などの数字を丸に数字に入れ換えて下さい。

種類株式の利用(有田)

種類株式の改正と税務の対応

◆ 種類株式とは

 種類株式という言葉をよく目にしますが、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。そのような方は、ステレオの音質を調整するツマミをイメージしていただくと分かりやすいと思います。株式には、1)配当 2)残余財産の分配 3)株式の買受け、4)株式の消却 5)議決権などのツマミが用意されており、これらのツマミが全て真ん中に位置しているのが普通株式であるとイメージしてみてください。

 従来は、このツマミが固くてほとんど動きませんでした。議決権のツマミだけはゼロに調整することができましたが、議決権をゼロにすると配当のツマミが勝手に上に移動してしまいました。このように調整された株式を配当優先株式と呼んでいました。

 平成13年以降の商法改正によりツマミは修理され、自由に調整ができるようになったばかりでなく、6)取締役・監査役の選任という新しいツマミまで作られました。この商法改正により発行が可能となった、さまざまな内容をもつ株式を種類株式と呼んでいます。

◆ 種類株式の具体例

 それでは、具体例として、議決権制限株式と償還株式を紹介したいと思います。

 議決権ツマミを調整する株式を議決権制限株式といい、完全無議決権株式と一部議決権制限株式に大別されます。すべての議決権が行使できないように調整すると、完全無議決権株式が出来上がります。例えば、毎期の決算承認に関しては議決権は行使できるものの、取締役の解任に関しては議決権を行使できないように調整すると、一部議決権制限株式が出来上がります。このように議決権の調整を自由に行えることから、企業支配を確保したまま、第三者から資金調達する手段を柔軟に設計することが可能となりました。

 株式の買受・消却ツマミを調整する権利を設定した株式のことを償還株式といいます。償還株式のなかでも、発行会社が一定の時期に株式の買受・消却ツマミについて調整することを定めた株式のことを強制償還株式といいます。逆に、株主が一定の時期に会社に対して償還請求することを定めることもできます。発行会社と株主のどちらか一方が権利を持つと設定することも可能ですし、『発行後5年目から29年目までは株主が権利を有し、発行後30年目に会社が強制的に権利を行使する』と設定することも可能です。このように株式の買受・消却の調整を自由に行えることから、将来の返済が約束されている債務に近い性格の株式を発行することが可能となりました。

◆ 種類株式の時価と税務

 財産評価基本通達の改正により、種類株式の評価に関する指針が示されるのではないかと期待されていましたが、具体的に評価方法が示されることはありませんでした。ツマミの調整があまりに自由になったことから、株式の枠を超えて債務と呼べるような株式まで発行できるようになり、税務が対応しきれていないというのが現状です。種類株式の時価は、相続税ばかりでなく法人税・所得税でも問題となりますので、どのように対処されるのか注目されるところです。

         taxmlグループ(公認会計士 有田賢臣)