消費税1000万円(飯田)

 1)→まる数字にして下さい。

免税点1000万円、簡易課税の適用上限5000万円の適用開始を控えて

◆改正消費税の適用開始期間と基準期間

 平成15年度の消費税改正に伴い、免税点が1000万円に、簡易課税の適用上限が5000万円に引き下げになりました。その適用開始期間と基準期間は下記のとおりです。


 個人      15/1 =基準期間= 15/12     17/1 =適用開始= 17/12
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 法人 14/4 =基準期間= 15/3     16/4 =適用開始= 17/3

◆免税点1000万円で課税事業者なら簡易課税と割り切るのも一計

 確定申告時期に手集計で所得金額を算定しているケースや、白色申告者・農業所得者で帳簿すら用意できていないケースでは、簡易課税の適用と割り切ってしまうのも一つの選択肢です。課税売上高が約1000万円であれば、サービス業なら約25万円、小売業なら約10万円の消費税額となります。なお、免税点引き下げにより課税事業者となる場合には、その最初の課税期間中に届出をすることで、その課税期間から簡易課税の適用を受けることが可能(平成15年政令135号附則3条)です。

 原則課税を選択することで「新たに課税事業者になった場合の棚卸資産に係る仕入控除税額の調整」を受けられる長所もあるので、小売業など在庫保有高が大きい場合は検討の必要性があります。ただし、手集計で原則課税の税額計算をすることは技術的に難しいこと、「帳簿及び請求書の保存義務」を果たせず、仕入税額控除がまったく受けられないなどのリスクとの兼ね合いとなります。

 課税事業者となるか否かについて、平成15年10月〜12月の課税売上高を4倍した金額で判定する特例(平成15年改正法附則25条2項)があります。ただし、本来の方法によることが困難な場合に限り認められる特例であり、安易に利用することはできないと解釈すべきです。

◆帳簿の記載要件のほか原則課税で注意すべき点

 簡易課税の適用上限の引き下げに伴い、原則課税となってしまう場合には、下記の点に配慮する必要があります。1)すべての取引につき、税区分の処理が必要となる、2)個別対応方式では、課税仕入が課税売上に対応するか否かについて取引ごとに区分が必要となる、3)課税売上割合が著しく変動した場合や、課税業務用から非課税業務用に転用した固定資産がある場合の税額控除の調整があり得る、4)簡易課税選択不適用届出書を提出しない限り、基準期間の課税売上高に応じて、簡易課税に逆戻りするケースがあり得る、5)一定の要件を満たす帳簿と請求書の保存が必要になること等です。

 1)及び2)については、課税期間の最初から対応していかないと、決算時点ですべての処理について見直しが必要となり甚大な手間がかかることになります。3)については、コンピュータ処理をしている場合でも、自動計算は行われませんし、過年度の数値と比較したり、事実確認を行って初めて表面化してくる問題であるため、人為的な管理が必要となります。4)については、突如、簡易課税適用に逆戻りとなり、設備投資等に係る税額控除が受けられないとのリスクが考えられます。そして、5)は、帳簿の記載要件を満たさない場合に、仕入税額控除が不可となる非常に厳しいものです。

             taxMLグループ (担当 税理士 飯田聡一郎)