■相続税評価額についての組織再編のリスク

◆組織再編後の株式の相続税評価額への影響


 組織再編は相続対策にも有効ですが、組織再編後の株式の相続税評価額への影響も十分に検討しておく必要があります。《1》受け入れた資産が3年内取得資産に該当してしまうこと、《2》類似業種比準方式が使えなくなってしまうこと、それに《3》受け入れた資産についての法人税相当42%控除不適用のリスクです。

◆組織再編直後の株式の相続税評価額


 組織再編直後の株価評価には注意する必要があります。

 純資産価額方式で計算する際に、課税時期3年以内に取得した土地・建物等は「通常の取引価額」により評価します。「取得」には、売買のみならず、交換・買換え・現物出資・合併等によって取得する場合も含むとしており、包括承継と個別承継とを区別していません。組織再編直後に株価評価をする場合には、その土地・建物等について、通常の取引価額による評価となってしまい、路線価などを利用できないことになります。

 合併直後の株式を類似業種比準方式で評価する場合に、合併直前と合併直後の会社実態に変化があると、比準すべき配当金額・利益金額・純資産金額の3要素の適用が不合理な数値になってしまい、適正な評価を算定できません。合併直後の年及びその翌年における株価の算定は、純資産価額方式のみによって株価を算定すべきとの見解があります。ただし、合併後の会社実態に変化がなければ、類似業種比準方式を利用できるとする解説もあります。

◆受け入れた資産についての法人税相当42%控除不適用


 最も注意すべきは、受け入れた資産についての法人税相当42%控除の非適用です。純資産価額方式は、原則として、相続発生時の相続税評価額と帳簿価額との差額は評価差額として計算され、評価差額に対する法人税額等調整額(42%)を控除できます。しかし、帳簿価額での引継ぎが「著しく低い価額で受け入れた資産」に該当してしまうと、時価と受入価額との差額に対する法人税額等調整額は、純資産価額の計算上控除されません。

 組織再編において、適格要件を満たせば、法人税法上は資産を簿価で承継します。場合によっては、現物出資、承継分割で受け入れる含み益のある資産は、「著しく低い価額で受け入れた資産」に該当することもありえます。ただし、そもそも、この現物出資等受入れ差額の規定は、法人が二階建てとなり、法人税額等調整額(42%)を二度控除することを防止するのが目的です。なお、合併の簿価承継だけは、二階建てにならず、現物出資等受入れ差額の規定はありません。
ただし、課税時期において現物出資等受入れ資産の相続税評価額が総資産価額の
20%以下であれば、このような調整は必要ありません。

 組織再編成は、相続税評価額を増額させるなどの不利益な結果を生じさせることがあります。相続税対策のための組織再編成には、相続に先立って、ゆとりのある段階で行うべきでしょう。