税務訴訟の納税者側勝訴率が低い理由についての原因分析


 税務訴訟の納税者側勝訴率は、全面勝訴が4%、一部勝訴を入れても8%を下回っている(注1)のが実状である。なぜ、税務訴訟の納税者側の勝訴率は低いのだろうか。

 訴訟である以上は、原告と被告の言い分は拮抗しているはずであり、統計学的な結果として原告と被告の勝訴率は五分五分になるのが正しいのではないだろうか。

 さらには、自分の主張が正しいと思うからこそ、弁護士に手数料まで支払って訴訟を起こすのであり、社会常識的な予想では、原告(納税者)の勝訴率が高い方が自然ではないだろうか。

 なお、さらには、訴訟を、裁判沙汰と言って嫌う国民が、あえて国を被告に訴訟を起こすのには、勝てる訴訟との確信がある場合だと思うのだが、そうであるならば、一般の訴訟に比較しても、税務訴訟の原告の勝訴率は高くなければおかしいのではないだろうか。

 さらに指摘すれば、税務訴訟の納税者勝訴率が低いことは、弁護士、あるいは税理士業界では周知の事実であり、だから、訴訟を躊躇し、よほどのことがないと訴訟の提起をアドバイスしないとの常識が完成してしまっているのであるが、そのような常識の下で、あえて訴訟を起こす。これは五分五分の訴訟は排除され、より勝訴率の高い事案だけが選択されているとの意味で、さらに勝訴率は高くなければならないと思うのだが、現実は、そのようにはなっていない。

 そこで、納税者側の勝訴率の低さが正当な現象なのか否かを検討し、次に、納税者敗訴の判決が登場する理由(判決書きのテクニック)を追及してみようと思う。
    目  次
 納税者側の勝訴率
 刑事事件と比較して
 民事訴訟と比較して
 高裁判決と比較して
 人事交流と調査官制度
 弁護士の能力と知識不足
 完全ではない所得把握率
 公務員の能力と判断傾向
 判決を書きのテクニック
 形式的な判断基準(その1)
 形式的な判断基準(その2)
 実質的な判断基準
 判断基準を使い分ける理由
 ★通達の訴訟における地位
 ★平成12年の訴訟の概要
 ★東京地裁の逆向きの偏り