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                               (第7回分)

◆ 資本等の金額

 出資の払い込みについては、2分の1以上の金額を資本金にしなければなりません。商法では発行価額の2分の1としていましたが、これが払込額の2分の1に変更されました。最低資本金の制度が廃止された会社法で、なぜ、払込額の2分の1を資本金に組み入れる義務を残したのかは不明です。

 そして、資本金に組み入れなかった金額は準備金とされます。さらに、「剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額」を利益準備金として積み立てることになっています。ただ、商法のように「支出する金額の10分の1」なのか否かは法務省令を待つ必要があります。また、商法のように「資本準備金の額と併せて其の資本の4分の1」を積立限度額とするか否かも、法務省令を待つ必要があります。

 ▲条文▲
 第445条(資本金の額及び準備金の額)
 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。 2 前項の払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
 3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
 4 剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

◆ 剰余金の金額


 会社法は、資本の部をシンプルに整理しました。資本金、準備金、剰余金の3区分です。この区分は、株主の拠出金か、あるいは利益の留保金かの区分ではなく、分配可能額の基礎に含まれるか否かの区分です。

 そして、分配可能額の計算の基礎に含まれるのが剰余金額であり、剰余金額は446条によって計算することになっています。

 ▲条文▲
 第446条(剰余金の額)
 株式会社の剰余金の額は、第1号から第4号までに掲げる額の合計額から第5号から第7号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
 1 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
  イ 資産の額
  ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
  ハ 負債の額
  ニ 資本金及び準備金の額の合計額
  ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

 資産の額に自己株式の帳簿価額を加算し、そこから負債の額と、資本と準備金の額を差し引くという計算です。自己株式の帳簿価額を加算するとの意味は次のような例で説明することができます。


 ┌───────────┬───────────┐
 │資 産    5000│負 債     750│
 │           │資本金    1000│
 │           │準備金     250│
 │           │剰余金    3300│
 │           │自己株式   ▲300│
 ├───────────┼───────────┤
 │       5000│       5000│
 └───────────┴───────────┘


 剰余金  =純資産額−資本金・準備金+自己株式
 3300 =4250 − 1250 +300

 自己株式の帳簿価額を剰余金に加算することには違和感がありますが、結局、461条で分配可能額を計算するについて、自己株式の帳簿価額は剰余金額から差し引かれることになります。

◆ 減資手続


 会社法は、資本の部について、資本金と準備金をグループにし、それと剰余金を区分するとの構成を採用しています。そして、各々の金額からの相互の振り替えを認めました。
 まず、資本金の減少について447条は次のように定めています。株主総会の特別決議をもって行い、債権者保護手続が必要です。ここで注意すべきは、減少すべき資本の額の記載はありますが、株主に払い戻しをすべき金額の記載がないことです。つまり、減資手続に於いては、株主への金銭等の払い戻しは想定されていないわけです。

 ▲条文▲
 第447条(資本金の額の減少)
 株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議【特別決議。但し、例外があり、詳細は第309条2項9号】によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
  1 減少する資本金の額
  2 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
  3 資本金の額の減少がその効力を生ずる日
 2 前項第1号の額は、同項第3号の日における資本金の額を超えてはならない。

 減資は特別決議によって行うのが原則であり、この点は商法と変わりません。しかし、有償減資との概念はなくなり、株主への払い戻しは、全て、剰余金の分配として行われることになりました。つまり、資本金を減少しても、払い戻しは行わず、減資した金額は剰余金に組み入れるとの構成です。商法における有償減資を行いたいのであれば、減資と同時に、株主に対する剰余金の分配手続を行う必要があります。


┌──┬───────────────────────┬──────────┐
│  │株式数が減少する               │株式数は減少しない │
├──┼───────────────────────┼──────────┤
│有償│減資+剰余金の分配+株式併合         │減資+剰余金の分配 │
│減資│減資+自己株式の有償取得+自己株式の消却   │          │
├──┼───────────────────────┼──────────┤
│無償│減資+株式併合                │減資        │
│減資│減資+自己株式の無償取得+自己株式の消却   │          │
└──┴───────────────────────┴──────────┘


 447条2項は面白い条文です。「前項第1号の額は、同項第3号の日における資本金の額を超えてはならない」としています。つまり、資本金が1000万円なら、減少する資本金の額は1000万円を限度とするということです。限度額までの減資をした場合は、資本金額はゼロになってしまいます。資本金ゼロの会社が認められるとは思えませんが、条文を素直に読めば、資本金ゼロの会社になってしまいます。そして、理論的にも、資本金の最低額の定めが無くなり、資本と株式との関係が切断された会社法では、資本金ゼロの会社もあり得ないことではないと思います。

  株式会社の設立後の減少することが出来る資本金・準備金の額については、制限を設けないことにする(いずれもゼロ円とすることが可能) 新会社法一問一答162頁)。

  計算省令では、設立時から資本金ゼロの会社を認めています。《1》出資自体がマイナスである場合と、《2》出資金から定款認証手数料などを差し引いた結果がマイナスになる場合です。《1》は、企業支配会計に基づき、簿価による出資が行われた場合を想定しているようです。

 しかし、株主ゼロの会社はあり得ません。もし、株主ゼロの会社が作れるとしたら、究極の相続税の対策になります。少々脇道にそれますが、後に説明する合同会社を利用すれば、出資者ゼロの会社は作れます。A社がB社の100%出資持分を所有し、B社がA社の100%出資持分を所有するとの関係の会社を作り出してしまえば良いわけです。

 減資額が欠損の金額(剰余金のマイナス)を超えず、それが定時総会で決議される場合は、普通決議をもって減資を行うことができます。つまり、309条2項9号の要件を満たす減資ですが、この場合は、減資をしても、剰余金の分配可能額が増えないので、普通決議でもよいとの商法の思想が引き継がれているわけです。そして、定時総会と臨時総会の区別が無くなった会社法に残された数少ない定時総会の意味が、この欠損額までの減資については普通決議でも行えるとの条文です。

◆ 準備金の減少手続


 準備金の減少は、減資とは異なり、株主総会の普通決議によって行うことができます。法定準備金として、資本金の4分の1を維持するとの制限はなくなりました。減資でさえ自由に行えるのに、準備金の減少には制限があるという商法の制度には矛盾があると指摘されていたためです。

 ▲条文▲
 第448条(準備金の額の減少)
 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
 1 減少する準備金の額
 2 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額
 3 準備金の額の減少がその効力を生ずる日

 減資と、準備金の減少には債権者保護手続が必要ですが、準備金の減少額を資本金に振り替える場合は債権者保護手続は不要です。さらに、準備金の減少の場合は、定時総会で決議し、かつ、欠損金の額を上回らないときは債権者保護手続を省略することができます。


┌─────┬────┬─────┬────────┬───────┐
│     │    │適用条文 │ 要  件   │債権者保護手続│
├─────┼────┼─────┼────────┼───────┤
│減資   │特別決議│447条1│        │ 要     │
│     │    │項    │        │449条1項 │
│     ├────┼─────┼────────┤       │
│     │普通決議│447条1│ 定時株主総会の│       │
│     │    │項    │決議      │       │
│     │    │309条2│ 減資額が欠損額│       │
│     │    │項9号  │を超えない   │       │
│     ├────┼─────┼────────┤       │
│     │取締役会│447条3│ 増資と減資の同│       │
│     │決議  │項    │額同日実行   │       │
├─────┼────┼─────┼────────┼───────┤
│減準備金 │普通決議│448条1│ 資本金に振替 │ 不     │
│     │    │項    │        │449条1項 │
│     │    │     ├────────┼───────┤
│     │    │     │ 剰余金に振替 │ 要     │
│     │    │     │        │449条1項 │
│     │    │     ├────────┼───────┤
│     │    │     │ 定時株主総会の│ 不     │
│     │    │     │決議      │449条1項 │
│     │    │     │ 減準備金額が欠│       │
│     │    │     │損の額を超えない│       │
│     ├────┼─────┼────────┼───────┤
│     │取締役会│448条3│ 増資と減準備金│ いずれの場合│
│     │決議  │項    │の同日実行   │もあり得る  │
└─────┴────┴─────┴────────┴───────┘


 商法では、減資については有償と無償があり、準備金の減少についても有償で行うことが可能だと解説されていました。その場合の払戻金は、払い戻しを受ける株主については、配当課税なのか、資本金の払戻しなのかという議論がありました。

 有償減資の場合なら、株数が減少する有償減資は株数プロラタ(比例配分計算)で、株数が減少しない有償減資なら純資産プロラタ計算になります。そのような議論を不要にしてしまったのが会社法です。減資や、準備金の減額については、株主への払い戻しは行われず、株主への払い戻しは、すべて、剰余金の分配として行われます。

◆ 株主拠出金と留保利益の区分


 会社法は、株主拠出金と内部留保金の区別を不可能にしてしまったかもしれません。たとえば、株主の拠出金2億円について、資本金1億円、資本準備金1億円と割り振れば、その全額が株主拠出金です。その後に計上した利益の留保額が剰余金です。

 この会社について、資本金を5000万円に減資し、剰余金に5000万円を組み入れるとの処理をすれば、剰余金の内の5000万円は株主拠出金です。つまり、剰余金の中で株主拠出金と留保利益が混じり合ってしまうわけです。しかし、この段階まででしたら、剰余金の資金源を紐付きで管理することも可能です。税法は、会社法の処理に関係なく、すべて、資金の源泉と結びつけて資本の部を管理しているからです。

 では、次に、剰余金の内の5000万円を資本金に組み入れたらどうなるのでしょうか。留保利益を組み入れたことになるのか、あるいは減資によって廻ってきた株主拠出金を戻したことになるのか。剰余金の資本組み入れを決議するについて、株主総会で、剰余金の源泉についてまで決議することになるのでしょうか。たとえば、「減資によって剰余金に組み入れた部分を、再度、資本金に組み入れる」との決議です。しかし、そのようにしないと、会社法では、資本の部の源泉別の管理は不可能になってしまいます。

 計算書類規則48条1項で、《1》資本準備金からの資本組み入れと、《2》その他の資本準備金からの資本組み入れはokとしました。しかし、「その他の資本剰余金に限る」として、利益剰余金の資本組み入れを禁止しています。

 その理由について、有限会社法では利益剰余金の資本組み入れは認めていなかったし、会計法理では、そもそも、利益剰余金は資本金に組み入れることが出来なかったが、商法が、利益剰余金の資本組み入れを認めていたので、実務では、それが実行されていた。それを会社法は禁止したとの理由が想定されます。

 しかし、なぜ、商法が認めていた利益剰余金の資本組み入れを、会社法が禁止する必要があったのか。その理由として、有限会社法理が基本だからとの説明と、資本と利益の混同を認めたのでは税法が対応できないとの批判を受けたとの二つの考え方が成り立ちます。

 いずれにしろ、今後、利益剰余金を資本に組み入れる場合は、金銭を配当し、それを増資払い込みに充てるとの二重の手間を要することになります。


◆ 剰余金の分配


 剰余金の分配は、どのように改正されるのでしょうか。今までの株主への配当金は当然として、その他、減資払い戻しも、自己株式の買い取り代金の支払いも、全て、剰余金の分配になります。

 剰余金を基礎に、分配可能額を計算しますが、その分配可能額が無ければ、自己株式は買い取れませんし、減資による払戻しも行えません。つまり、減資と同時に行う剰余金の分配決議が行えないわけです。

 さらに、分割型分割、つまり、人的分割ですが、これも剰余金の分配との手続で行うことになりました。会社法では、会社分割手続は、全て、分社型分割、つまり、物的分割に統一しました。

 しかし、A社が、分社型分割で子会社Bを設立し、その後、子会社Bの株式をA社の株主に交付すれば、分割型分割を行ったのと同様の結果になります。A社の株主は、A社の株式と同時に、B社の株式を所有し、A社とB社は兄弟会社になるわけです。その場合のB社の株式を株主に交付する手続が、剰余金の分配手続と位置づけられたのです。

 会社から株主に対する支払いは、すべて、剰余金の分配として整理されました。ですから、減資による払戻しを行う場合は、減資手続を行うのと同時に、剰余金の分配決議をする必要があります。

◆ 会社法と会計、それに税法


 会社法では分配禁止額と分配可能額とを区分することになります。分配禁止額は資本金と準備金で、分配可能額が剰余金です。

 資本金も、準備金も、債権者保護手続を採って剰余金に組み入れれば分配が可能になります。

 このような会社法の思想について、会計と税法は、どのように付き合っていくのでしょうか。会計は株主拠出金と留保利益金を区別しないわけにはいかないと思います。損益決算書もありますし、貸借対照表もあります。何よりも、会計の目的は当期の利益の計算と、留保利益の計算にあるからです。

 税法も、株主拠出金と留保利益を区別しなければなりません。株主拠出金を払い戻しても課税関係は生じませんが、留保利益の払い戻しは配当所得になります。


    会社法       会 計         税 法

 ┌──────┐  ┌──────┐    ┌──────┐
 │分配禁止額 │  │ 株主拠出額 │    │株主拠出額 │
 │      │  │      │    │      │
 │      │  │      │    │      │
 ├──────┤  │      │    │      │
 │分配可能額 │  │      │    │      │
 │      │  │ 利益組入額 │<<┐ ├──────┤
 │      │  │      │  │ │留保利益額 │
 │      │  ├──────┤  │ │      │
 │      │  │ 留保利益額 │  │ │      │
 │      │  │      ├──┘ │      │
 │      │  │      │    │      │
 └──────┘  └──────┘    └──────┘


 しかし、会社法は株主拠出金と留保利益の区分を廃止してしまうようです。はたして、会計と税法は、会社法と付き合い続けることが可能なのでしょうか。

 準備金を剰余金に振り替え、その後、剰余金を資本金に振り替え、その一部を剰余金に振り替えるなどの処理を行った場合に、剰余金の中身が、留保利益なのか、資本金から回ってきた株主拠出金なのかといった入り繰りを無視し、税法が独自の立場で留保利益と株主拠出金の計算を行うことが可能なのか否かは、これからの会社法の計算書類についての取り決めにかかっています。

 計算書類規則47条で、結局は、資本等の金額と利益剰余金は区分されることになりました。これは会社法の思想を超える規則のように思います。しかし、資本等の金額と利益剰余金を区別することによって、会社法、会計、税法の思想の整合性は確保されることになりました。

 資本剰余金(3項)
  資本準備金
  その他の資本剰余金 …… さらに細分が可能(5項)
 利益剰余金(4項)
  利益準備金
  その他の利益剰余金 …… さらに細分が可能(5項)


 これまで、商法は勝手な改正を繰り返してきました。それを税法は一生懸命にフォローしてきました。組織再編も、株式交換も、全て、フォローしてきました。税務官僚は凄いと思うのは、この優秀さです。

 ただ、唯一、フォローできなかったものがあります。自己株式です。では、税務官僚は、フォローできなかった自己株式について、どのように対応したのでしょうか。無視することにしたのです。

 すべての事柄について、税法は通達を出します。組織再編についても、株式交換についても、すべて、通達を出してきました。ところが、4つの場合について自己株式の取得を認めた商法改正の時点では、自己株式に関する通達は出さず、自己株式の完全自由化を認めた商法改正の時点でも通達は出しませんでした。

 なぜ、自己株式について通達を出さなかったのかといえば、通達を出すと、自己株式についての税法上の矛盾が見えてしまうからです。税法上の矛盾が見えてしまえば、税理士は、その矛盾を利用します。例えば、株主から純資産価額1株5000円で株式を買い取り、社員からは1株500円の配当還元価額で自己株式を買い取ります。そして、次に、社員株主に対して1株500円で自己株式を売却して、2250円の譲渡損を計上するとの法人税の節税です。これが4つの自己株式を商法が認めた時点での、自己株式を使った節税方式でした。

 しかし、このような節税は、現在は行えません。現在は、自己株式の売却では譲渡損は計上できないからです。しかし、次には、また別の節税手法が登場しました。それが減資との手法です。株式を会社に売却し、あるいは株数を減少する無償・有償の減資をして、株主が譲渡損を計上する方法です。仮に、100%支配をしている会社なら、持ち株の一部を減資し、あるいは自己株式として売却しても、株主の支配関係には影響がありません。それなのに株主は、株式の譲渡損が計上できることになるのです。

 さて、会社法の施行後、特に、剰余金の分配について、税務官僚はどうやって会社法と税法の整合性を維持するのでしょうか。会社法を改正しても、税法が対応しない限りは、誰も何も実行できません。

 会社法の改正と、剰余金の分配は、平成18年4月1日から問題になる事柄です。平成18年来6月には、定時総会での配当決議が行われます。その場合に、剰余金の分配は、資金の源泉に関係なく、すべて、利益の配当にするのでしょうか。しかし、減資と同時に行う株主への払い戻しに配当所得課税を行ったら、株主は怒り出すでしょう。さて、国税の官僚は、どのような方法で、この問題を切り抜けるのか。まさに、優秀な人材の能力に期待したいところです。

 計算書類規則20条1項2項と、21条が、この問題を解決しました。

 20条1項は、その他の資本剰余金を配当する場合には、資本金の4分1まで資本準備金を増やすとし、2項は、その他の利益剰余金を配当する場合には、資本金の4分1まで利益準備金を増やすとの規定を置いています。

 つまり、剰余金を配当した場合には、資本準備金を増加する額(a)と、利益準備金を増加する額(b)は、次のプロラタ計算になるとの考え方です。

          資本剰余金から支払った額 …… 会社の任意決定
 a=要積立額 ×――――――――――――――  (計算書類21条)
           株主に支払った金額

 計算書類規則21条は、配当後の「その他の資本剰余金」は次の計算になると定めています。

 資本剰余金 − (資本剰余金からの配当額 + 資本準備金組み入れ額)
 利益剰余金 − (利益剰余金からの配当額 + 利益準備金組み入れ額)

 つまり、資本剰余金からの配当が可能であることを明示しているわけです。さらに、どちらからの配当を行うかが、会社の選択で可能ということです。

 これは現行商法でも可能なことで、資本剰余金からの配当と利益剰余金からの配当が認められています。しかし、現行の税法では、どちらからの配当でも、全て、利益の配当とみなされます。

 会社法が資本剰余金からの配当を認めた場合に、それが配当所得になるのか否かは不明です。たぶん、資本剰余金からの払い戻しにはプロラタ計算が採用されることになるはずです。減資払い戻しまでもが配当として扱われることになったのですが、その全額を配当所得とすることは不合理だからです。


◆ 剰余金の配当


 配当は、定時総会に限らず、臨時総会でも決議できることになりました。もちろん、中間配当は従来通り、株主総会の決議を必要とせずに実行することができます。

 しかし、臨時総会では決算をしません。したがって、その時点での配当可能額の計算ができませんので、剰余金の額を計算し、そこから配当可能額を計算する必要があります。そこで、446条の条文を置き、この条文で配当可能額を計算することにしました。非常に難解な条文で、数字を当てはめて読まないと読解不能な条文です。しかし、現代化要綱は、次のように、この条文の意味をシンプルに説明してくれています。

 ▲要綱▲
 (1)分配可能額の計算方法
 《1》 分配可能額については、現行法の実質を変更することなく、最終の貸借対照表上の留保利益等から最終の貸借対照表上の自己株式の価額等及び当期に分配した金銭等の価額(現に金銭等の分配又は自己株式の取得をした価額)を控除する方法で算定するよう規定を整理するものとする。
 《2》 最終の決算期に係る貸借対照表から算出される分配可能額に、最終の決算期後その分配を行う時までの分配可能額の増減(金銭の分配、資本金の減少等による分配可能額の増減をいい、期間損益による変動は含まないものとする。)を反映させるものとする。
 最低資本金制度が無くなりましたので、極端には資本金は1円との会社も存在することになります。そのような会社については、最低でも300万円の純資産を維持することが義務付けられました。資本金が300万円を超える場合は、剰余金の計算において資本金の額を差し引きますので、必然的に、資本金相当の純資産は配当可能額から差し引かれることになります。したがって、300万円の制限は、資本金が300万円を下回る会社についての制限になります。

 ▲条文▲
 第458条(純資産が300万円を下回る場合の適用除外)
 第453条【株主に対する剰余金の配当】から前条までの規定は、株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には、適用しない。

 配当は現金には限りません。リンゴでもミカンでもokです。先ほどの分割型分割の例では、まず、分社型分割で子会社を設立し、その後、子会社の株式を、株主に対して剰余金の分配という方法で給付しましたが、これは、剰余金の分配との意味では配当金の支払いと同様の手続です。

 剰余金の配当等を、取締役会が決定する旨を定款に定めれば、会計監査人設置会社は、取締役会の決議によって配当を実施することができます。ただ、これは大会社についての規定ですので説明を省略します。

◆ 定款変更


 定款変更は、当然のことながら特別決議が必要です。ただ、466条には「株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって定款を変更することができる」としか書いてありません。

 その株主総会の決議が、普通決議なのか、特別決議なのかは、309条を見なければわからないとの条文になっていることは、先に説明したとおりです。


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