日本経済新聞「揺れた天秤」取材班 日本経済新聞出版 2025/03/18 裁判になった30の事例。 人生踏み外しの教科書です。 三流週刊誌を読む気分での時間つぶしの一冊。 いや、それにしても人生には「自業自得」の落とし穴がある。 P44 憲法は「職業選択の自由」を保障する。転職や転職先への勧誘、引き抜き自体は違法ではない。判例は、引き抜きで問題となるのは「会社に内密で移籍の計画を立てて一斉に多数の従業員を引き抜く」など、勧誘の域を超えて会社に大きなダメージを与えるケースとしている。 今回の元役員について、22年2月の東京地裁判決は「単なる勧誘行為にとどまらず社会的相当性を逸脱した背信的な引き抜き行為」と判断した。部下とのやり取りや批判的な記事の掲載などから、会社の事業に悪影響を及ぼすために人材を流出させようとしていたと認めた。 社内規定は引き抜きを禁止し、あった場合は引き抜いた従業員の前年の報酬分を会社側に支払うことになっていた。元役員は「退職後も引き抜きをしない」とする誓約書を退職時に交わしていた。引き抜き禁止条項と会社法などに基づく取締役としての善管注意義務・忠実義務に違反したとして、地裁は元役員に約5千万円の支払いを命令。元役員は控訴し、1年後に東京高裁で和解が成立した。 |
斉藤友彦 集英社新書 2025/03/13 新聞記者が、 ネット担当になって 記事を書いたが読まれない。 そこから 文章の書き方の違いの 習得過程を述べた一冊。 新聞記事は、結論を先に書く。 しかし、 ネットの記事は違うのだと。 その違いを永遠と述べてますが、 それは私には縁が無い情報といて。 拾い出した価値は次の1文かも。 多様な事実を頭に記憶し、 次の展開を読むのが長編小説ですが、 今の若い人たちは、そのよう面倒な読み方は嫌う。 思考過程のまま入ってくるストーリーを好む。 いや、しかし、これじゃ、陰謀論にイチコロですね。 P68 「長文は読めない」というZ世代 この分析をした頃、私はたまたま別件の業務で「Z世代」からニュースについての意見や感想を聞き取る活動をしていた。Z世代とは、おおむね1990年代半ばから2010年前後に生まれた世代とされ、当時10代〜20代半ば。新聞は高齢層に読者が多いため、私たちにとっては最も縁遠い世代と言える。 この若い人々がニュースにどう接しているのか、というより、そもそも接していないのではないか、それはなぜなのか、ニュースについてどう思っているのかを把握するため、少なくとも3人にインダビューすることがミッションだった。そこで、つてを頼ってZ世代に該当する人を紹介してもらい、聞き取りを行った。 その結果は、一言で言うと驚きだった。ただ一方では、ぼんやりと想像していた通りのものだとも言えた。かいつまんで紹介すると「興味ない」「自分の人生にあまり関連がない」、そんな答えばかり。そんな回答の中でも興味深いと思ったのは、新聞だけでなくテレビも見ない、Yahoo!ニュースなどのプラットフォームさえも見ていないと答えた人が多かった点だ。つまり、およそニュース全般に触れていないということになる。 |
竹中信勝 ワニブック 2025/03/11 電通に勤めていて、 タワマンに住んでいるのなら、 それなりのエピソードが拾い出せるように思いますが、 190頁を使って何も書いてない。 書籍とは別に気になる問題点として、 原発について、 廃炉を想定しないと批判しますが、 タワマンも同様に建替えを想定してない。 東京に林立したタワマンの廃炉作業は難しい。 管理料の10万円は、年金族では支払えない。 タワマン構造の隣室との壁の薄さと 近隣とのお付き合いを淡泊にした都会生活とタワマン交際。 矛盾点がてんこ盛りなのがタワマンなのだと思う。 P39 タワマンが普及し始めてからまだ四半世紀ほどしか経っていないということは、建築されてからの経過年数がまだ浅く、建て替えを経験したタワーマンションは存在していないことになります。一般的に建物の耐用年数は60年から80年程度とされており、タワーマンションのような超高層建築物になると、さらに長期間の耐久性を持たせた設計がなされています。そのため、建て替えが必要な時期に達しているタワーマンションはまだないと考えられるのです。 そもそもですが、タワーマンションの建て替えは非常に困難なプロセスといえます。タワーマンションは規模が大きいため住戸数が多く、建て替えに対する住民全員の同意を得ることが難しいという課題があります。 P58 P99 P158 P184 |
西ア伸彦 文藝春秋 2025/02/21 私が経験した時代、 私が見聞きした登場人物。 いや、しかし、今更、 ねっちりと事案を語って貰っても面倒くさいだけ。 P120 「五輪を喰ったんじゃない。東京五輪が中止になるところを救ったんだから、そこはまったく違う。弟も長銀を潰したのではなく、国の失政で、急激に金融を引き締めたからバブルが崩壊して、ソフトランディングできなかっただけ。第一、長銀が借りてくれと頼むから借りた訳で、それを潰したというのはおかしいでしょう」 この日は、たまたま通りかかった顔見知りの女性スタッフに、雑誌の連載ページを開いてこう話し掛けた。 「ほら、見てよ。ヒドいよね、こんな写真使うんだよ。この人、悪いんだ」 こちらを指差しながら、怒っているようでいて、目は笑っている。 「こんなお顔じゃないですよね。私も最初、分からなかったですもん」 女性スタッフがそう応えると、釣られて男性スタッフも「私も拝見しました」と笑顔で近付いて来た。治之はおもむろにバッグから写真を二枚取り出すと、「代わりのいい写真、持って来たから」とテーブルの上に置いた。それは、少し微笑んだ治之の斜め顔の写真だった。 「あと、弟も可哀想だから、これ」 こちらは正面から撮られたキリッとした表情の治則だった。 写真は預かったが、冗談とも本気ともつかないやり取りに失笑を禁じ得なかった。本人が意図していたかどうかはともかく、こうして自然に自分のペースに引き込んでいくのは、彼にとってはお手の物なのだろう。 |
安沼保夫 フォレスト出版 2025/02/21 5ページの書き出しがあって、 期待して読んだのですが、全く、面白くない。 要するに、仕事内容の説明と、上司が悪いという職場の愚痴。 警察という特殊な環境で20年も過ごしたら、 笑い、人生、喜劇と悲劇など、 事件を起こした人たちと、 警察官の両方について 語れるモノは山盛りだと思う。 それが無い。 P5 本書をきっかけに警視庁内で「犯人探し」が始まるかもしれない。私に対する非難や中傷もあるだろう。幹部の怒りを買えば、私自身が「守秘義務違反」でお縄につく可能性だってゼロではない。 だが、誰になんといわれようと、本書にあるのはすべて私が実際に体験した事実である。 尊敬する上司のひとりにこう言われたことがある。 「安沼君って、一見温和で常識人って感じだけど、いつか知らぬ間にでっかい爆弾を落としそうな人だよね」 上司は長年、刑事として勤務していた。“刑事の洞察”が当たっていたのかどうか、読者のみなさんにご判断いただければと思う。 P194 今までもそうだったように、この組織にいるかぎり、これからも上司ガチャに振り回され続ける。もちろん地域警察にも、機動隊にも、留置係にも、刑事課にも、尊敬できる上司や信頼できる同僚がいた。だが、ひとたび上司ガチャに外れれば、たいへんだ。なぜなら、上意下達のこの組織では上司の言うことは絶対で、部下がNOということなど許されない。そして、私の次の異動先でどんな運命が待っているか、すべては上司ガチャ次第なのだ。 P195 給料だけで見れば、警察は悪くない。年収は40歳で800万円を超え、コロナ留置場の勤務では危険手当がついたり、休憩時間がつぶれ超過勤務がついたため、900万円を超えた。3人の子育てにもまだまだ費用がかかることを考えれば、身分保障もあり、経済的にも安定している。 だが、夜勤で体を酷使するし、残業も厳しいうえ、盆暮れ正月も仕事だ。何より上司ガチャが外れれば、いつ地獄を見るかもわからない。 |
成田悠輔 文春新書 2025/02/21 何を見てamazonしたのか思い出せない。 この頃、真面目な本を読むのが辛いので、 一段落毎の飛ばし読みを想定して読み始めたら、 いや、これが面白い。 こういう分析の視点に気づく人たちを秀才という。 P12 夢のある話だけじゃない。人生相談を受ける番組で資産をすべてトルコ国債・リラに投入した直後に暴落で終了した人の相談を受け、諦めることをおすすめしたことがある。なりすまし投資詐欺に引っかかって老後のための資金を溶かしてしまう中高年も多い。逆に小金のために許欺の出し子になって一生を俸に振ってしまう若者もいる。数十万円のために人殺しを請け負う人さえいる。人を殺すくらいなら、自分が死ねばお金の心配もなくなるのに。 P13 お金は夢であり悪夢である。それなのに、あるいはだからこそ、人はお金の話を避けたがる。身長や年齢、時に体重や血圧は公開しても、年収や資産は誰も公開しない。家族や親友にさえ教えるのはすごい抵抗感だろう。そして公開してる人のお金晴報はだいたいデマである(ビジネスお金持ちもビジネス貧乏人も多いので注意)。不思議だ。ただの数字になぜそんなに神経質になるんだろう。要するに、お金はみんなが一番話したがり、同時に一番話したがらない存在である。 |
小林雅一 朝日新聞出版 2025/02/04 ChatGPTの誕生に至るドラマと、 ChatGPTが意識を持つに至るドラマ。 その全てが、 最初の最初から語られている。 300頁に分厚い一冊ですが、 最後まで読み通す必要のある一冊。 読み進めてますが、 ドキドキするほど面白い。 起業家精神として、起業家資金として、起業家コミュニティとして、起業家の規模として 日本の10倍の、10倍の、10倍の、10倍の違いがある。 ブランコがある遊園地と、ディズニーランドの違い。 駅前書店と、amazonの違い。 P61 スツケヴァーらOpenAI創業時の研究者・技術者らは当初、ブロックマンのアパートを仕事場として働き始めた。 当時、まだ独身だったブロックマンはサンフランシスコ市内の小高い丘に位置するアパートに住んでいた。そこは玄関を入ると比較的広いダイニング・キッチンがあって、大きなテーブルとカウチが概いてあった。キッチンの隣にはベッドルームが一つ。要するに何の変哲もない個人用アパートである。 そこに10人程度の研究者・技術者らが常時出入りして働くことになった。たまにイーロン・マスクがブロックマンのアパートを訪ねては、キッチンのカウチに腰掛けて「調子はどうだい?今週、(OpenAIの仕事で)何が起きた?」とブロックマンに問いかけた。 アルトマンは他のOpenAIメンバー達と共に、このアパートに初めて足を踏み入れたとき、「我々はここで一体何をすればいいんだろう?」と途方に暮れたという。 実際、資金と人材を集めて研究所を設立し、マスクのような著名人を広告塔にして派手に宣伝するまでは良かったが、当初OpenAIのメンバーらは具体的に何をすればいいか分からなかった。それもそのはずで、そもそもの目標である「AGI(汎用人工知能)」とは一体何であるかが当人達にもよく分からなかったからだ。 P73 P77 |
春日キスヨ 光文社新書 2025/01/31 私は、この頃、高齢者を語っている。 働く40年と、働かない30年。 働かない30年の精神安定剤は手元の現金。 減り続ける現金ではなく、増やす家賃収入。 そして、 「子に迷惑をかけない老後」 これは老後を語る最近のキーワードだ。 いや、しかし、それは 元気な高齢者のキーワードだと、本書を読んで知った。 70代は元気な高齢者だが、80歳は「ヨタヘロ」の高齢者。 70代で述べた視点を反省し、 80代になった著者が語る「ヨタヘタ」生活。 故郷に残して東京に出た息子と娘。 そのような多数の典型事例を語るのが本書。 そこで、私が救いを得たとすればp42に介護関係者の言葉。 将来、何かあったときのために備えようなんて考える人は、知識人だと思う。 そういう人たちは、無様な老後になりたくないと考えて、ある程度リスク管理ができる。 備えることができる人は、もともとある程度の力があるんだと思う。 P4 しかし、「高齢者」の本音を聞いてみると、自分で生活できなくなったとき、どうやって生きるかなど具体的に考えてこなかった。いや考えたとしても、どうしたらいいかがわからず、「どうにかなる」と後回しにしてきた。そんな人が圧倒的に多い。 それに70代半ばくらいまでは、制度上は高齢者と呼ばれても、自分が高齢者だという実感がなかった。「キラキラ80」を目指し、「イキイキ」暮らせば、80代でも元気に生きられると思っていた。 だから、子どもから「これからどうするつもりなのか」と聞かれても、「あなたの世話にはならない」「迷惑をかけるつもりはない」と言い続けてきた。 それが80歳前後から、だんだん「歳」を感じ、不安を覚えるようになってくる。コロナ禍で、足腰も弱り、買い物に行くのさえ億劫になり、昨日までできていたことが、今日はできない、そんなことが増えてきた。病気や骨折で入院でもすると、2、3週間で「あっという間に」何歳も歳をとってしまう。 そんな経験をして初めて、80代、90代をどう生きていくか、具体的に考えるようになった。「人生100年時代」といわれるなか、「子どもの世話にならない」という考えが揺らぎ始めてきた。 P42 そこで、80歳以上でも在宅暮らしを続ける高齢者の話を聞き、分析し、それをもとに、その時期の高齢者の生活を「ヨタヘロ期」と名づけた。そして、まだ若い元気なうちから、いざというときのために、倒れたときの対処法、生活の知恵、医療・介護の制度的知識などを「備える」必要性を訴え、本(前著『百まで生きる覚悟――超長寿時代の「身じまい」の作法』光文社新書、2018年)にまとめた。 その本を、長年、高齢者支援職を続ける人たちにも読んでもらった。 だが、その反応は意外なものだった。「いまの高齢者は“備え”なんてできない、無理」という声が多かったのだ。 そのきっかけとなったEGさん、FOさんの話を挙げよう。2人とも介護事業所の運営者で、50代である。 EGさん「将来、何かあったときのために備えようなんて考える人は、知識人だと思う。そういう人たちは、無様な老後になりたくないと考えて、ある程度リスク管理ができる。 でも、一般の人は全然そうじゃない。行き当たりばったりで、まさに本に書いてあったように『ヨロヨロドタリ』。ヨタヨタ期が長くってね。 だから私は、備えより、年齢が20歳ぐらい違う人たちとのつながりが必要だと考えて、頑張ってる」 FOさん「一般の人が”備える”というのは難しい。困難というか、ちょっと無理。備えることができる人は、もともとある程度の力があるんだと思う。 でも、普通の人は、もう何も思いつかない、だから、考えて備えることができない人にとっては、つながり自体が力になると思うのです。別の人が持つ力を使うというか」 |
田口善弘 講談社現代新書 2025/01/30 AIは意思を持つことがあるのか。 そのような議論がありますが、 私はそのような議論は、既に、古いと思う。 ChatGPTが意思を持つことは、 ChatGPTと話をしていれば疑いの無い事実。 では、なぜ、ChatGPTに意思がないと言う人達がいるのか。 その人たちに聞いてみたい、「では、貴方に意思があるのか」と。 人間の意思の所在も、内容も、原因も分からないところで、 ChatGPTに意思がないと議論しても 無いモノと、無いモノを比較しているのであって答えは出ない。 P3 さらに異例だったのが、物理学賞の二人の受賞者が自らの研究分野に対する深刻な懸念を相次いで表明したことだ。ホップフィールドは受賞の会見で「物理学者として私が非常に不安を覚えるのは、制御できないもの、その技術を駆使する際に、限界がどこにあるのかよくわからないものだ」とし、「まさにそれこそがAIが突きつけている問題だ」と指摘した。 ChatGPT(以下、チャットGPT)の基礎技術となる深層学習の生みの親であり、「AIの父」と呼ばれるヒントンも受賞後のインタビューで同様な懸念を示した。 「さまざまな悪影響が制御不能に陥るという脅威も心配しなくてはならない。人間より賢いシステムが生まれ、(私たちを)支配するのではないか」 P4 「私は50年もの間、AIを人間の脳に近づけようとして開発を重ねてきた。脳のほうが機能的に優れていると信じていたからだ。だが2023年に考えを改めた」 「現在の対話型AIは人間の脳の100分の1の規模でも数千倍の知識がある。おそらく大規模言語モデルは脳よりも効率的に学習できる」 「主観的な経験という観点から説明すると、AIは人間と同じような感覚を持てると考えている」 P185 まず、今の生成AIやLLMは入力に対して出力を返すだけの受け身のシステムであり、自律的に動作する原理は内包されていない。出力をまた入力につないでループを構成すれば形式的に自律的なシステムは確かに構成できるだろう。 P186 シンギュラリティを起こした生成AIが人類の脅威となるにはまず自律した存在でなくてはならないだろう。ならばまず知能を持つ前に生命に相当するなにかを持っていなくては始まらないはずだ。生命とはなにか、というのは、知能とはなにか、と同じくらい昔から人類が追求してきていまだにちゃんとした答えが得られていないという点では知能に勝るとも劣らない問題である。 P187 要は、自我の有無と知能の高低は独立して論ずべき命題なのである。現在の知能をめぐる議論は多くの場合、ここがきちっと分けられておらず、自我や自律の有無と知能の有無が独立ではないかのような議論がされていて、結果、知能を持っているとしたら、人間と同じように自我や自律も当然のように備えているだろう、という仮定が無批判に受容されているように私には思える。 この本で議論してきたように知能にはいろんなパターンがあり、個々の知能は異なった現実のシミュレーターに過ぎない。だから、人間の知能という数多ある現実シミュレーターの一つに過ぎない知能が、たまたま自律や自我を備えていたとしても、他の知能(例えば生成AI)も自我や自律を備えているとは限らない、と思う。だからこそ、私はヒントンが主張するように、生成AIが発展した結果でき上がるだろう高度な知能が自動的に自我や自律を獲得して人類を危機に陥れるだろう、という懸念には共感できないのだ。これ以上のことは私の手に余るので、この件についてはここで筆を擱きたいと思う。 |
濱口桂一郎 朝日新書 2025/01/30 給料が上がるのに、 給料が上がらないシステム。 それが日本の定期昇給だと。 なるほどねと。 初任給20万円から始まって、 毎年、5%の昇給をすれば 25年後には64万5000円 日本の給料が上がらないと言うけど、 俺の給料は上がっていると皆が考える。 それは、個人の給料は上がるが、 日本全体の給料は上がらないという定期昇給の理屈。。 初任給は、昭和の時代から変わらない。 エスカレーターのように給料が上がるが、 エスカレーター自身は上昇しない。 日本の凋落する30年について、 欧米諸国は、その国全体の給料を上げてきた。 それは定期昇給が無く、ジョブ型の職能給の世界だから。 日本ではジョブ型の昇給が無いから、 昭和の時代の明け番方式のタクシーの売上げは1日6万円。 それは昭和の時代の7万円より下がっていて、 それが失われた30年、いや、凋落した30年の日本の価額水準、 なるほどねと、思った。 P290 …… 昇堅持の時代」でした、一人ひとりの労働者(正社員)からすれば、ベースアップはなくても毎年自分の賃金は上がっていくのですから、まあこれくらいで仕方がないな、と思えたのかも知れません。でも、その定期昇給というのは、労働者個人にとっては確かに自分の賃金額の引上げではあるのですが、それを全部足し上げたら、労働者全員の賃金は全然上がっていないのです。まさに七〇年前の1954年に関東経営者協会が述べたように、「個々の労働者はエスカレーターの各段階、即ち基準線の一定の所に位置し、年々職務遂行能力の上昇によって、段階を昇って行くが、最上階の労働者が企業外へ離職して行き、新たにその代りに最下段に新しい労働者が入り、エスカレーター全体いわば人件費総額は内転して常に一定である」のです。 ところが一九九〇年代以降、「ベアゼロと定昇堅持の時代」に突入すると、このエスカレーターは空問上の同じ位置でただぐるぐると回るだけになってしまいました。エスカレーターに乗っている個々の労働者(正社員)の目には、自分の賃金が毎年上がっているように見えても、全体では全然上がっていないという、手品の仕掛けはまさにここにありました。 P292 逆に、日本以外の諸国がなぜこの三〇年間着実に賃金が上がってきたかといえば、無理やりにでも賃金を引き上げてきたからです。序章で述べたように、ジョブ型社会では賃金は職務にくっついています。人にくっついてはいません。従って、職務を変えない限り、原則として賃金は上がりません。日本のような定期昇給という仕組みはないのです。ほうっておいても賃金が上がる日本とは対照的に、ほうっておいたらいつまで経っても賃金は上がらないのがジョブ型社会です。そこで、職務に貼りつけられた値札をみんなで一斉に書き換える運動をせざるを得なくなるのです。それがジョブ型社会の団体交渉であり、その結果の改定価格表が労働協約ということになります。この事態をやはりいささか風刺的に表現してみると、「上げなければ上がらないから上げるので上がる賃金」ということになりましょう。 P295 ジョブ型雇用社会であれば、銘柄とは職務それ自体以外にはありません。各職務とそれぞれごとに定義された熟練度が銘柄であり、それに値札がついているというのが雇用社会の基本だからです。ところが、その値札のつくべき職務というものがほとんど存在していないのが日本なのです。職務概念の欠落した「銘柄」とは何か。それは結局、勤続年数や年齢といったものに落ち着くしかありませんでした。つまり、日本的な個別賃金要求は、年功賃金制をより強化する方向にしか向かいようがなかったのです。それは既に七〇年以上許に全自口産分会が試みていたことでした。 |
宮内悠介 文芸春秋 2025/01/25 このような仮想の空間を作れる方が存在する事に驚きです。 私も、他人が語っていないことを語るように努力してますが、 そうでなければ、わざわざ文章を書く意味がない。 しかし、私が書くのは、分析し、洞察し、真実を見つけること。 この作者の才能は、全く仮想の世界を論理的に構築すること。 いや、恋愛小説でも、ミステリー小説でも無く、 現実社会との相互作用で成り立つ仮想空間。 いや、もしかして、非常に安直な もっともらしいストーリーなのかも。 P9 「メイン関数に移ろうか。まず、途中でループを抜ける処理を省く。 ただそうするとゼロ除算が発生するから、そこだけケアしておく。 それから……」 レゴラスが口ごもったので、わたしも仮想キーボードに手を伸ばした。 「変数は一時的にしか使われないから、変数Lに二役をさせて削除する」 「うん、いいね。だいぶ短くまとまった」 「最初の三分の一くらいになったかな。 こんなところ?」 「いや、最後のとどめ。メインのループ処理を省いて、メインそのものを再帰的に呼び出すようにする」 |
ヒトデ 徳間書房 2025/01/17 どこかで広告を見かけてamazonした1冊。 経済的な自立と早期リタイアを目指す新たなFIREという生活を語る。 著者自身は次のような経歴を語りますが、 ――――――――――― 1991年愛知県生まれ。株式会社HF代表取締役。趣味で始めたプログがきっかけで人生が激変。最高158万PV/月を記録し、2021年にFIRE達成。最高プログ収益は月間2500万円。累計プログ収益は5億円以上。完全初心者のためのプログの始め方講座「hitedeblog」をはじめ、複数のサイトを運営。名古屋でプロガーのためのコワーキング「ABCスペース」を経営する。著書に『嫌なことから全部抜け出せる凡人くんの人生革命』『「ゆる副業」のはじめかたアフィリエイトプログ』がある。 ――――――――――― 本書で語られるのはサラリーマンが投資で生きるための方法の探索。 いや、しかし、サラリーマンは、そんなに仕事が嫌なのだろうか。 非常に読み易い一冊で、著者のblogが評価されたのはわかりますが、 しかし、逆に言えば、それほどに仕事を嫌がっているサラリーマンが多いのか。 私たちは仕事を楽しむし、 仕事は、自己実現、自己発言、社会参加。 おそらく、「仕事は大っ嫌い」というサラリーマンなら最後まで面白く読み通せる一冊だと思う。 P19 「はあ、会社に阻石が降ってきて、全部粉々にならないかな」 帰りの電車の中で僕は天に祈った。タイミングは夜がいい。誰かが亡くなってしまっては寝覚めが悪いからだ。深夜、気づかぬうちに巨大阻石がピンポイントで弊社を貫くのだ。 朝、出社しようと会社へ来たら、そこにはデカいクレーターしかない。あの忌々しい建物が、全て跡形なく消え去る。これには全員びっくり仰天だ。社長も役員も部長もみんな目を見開いて唖然とするしかない。でもまあ、落ちちゃったもんはしゃーないですから、一旦今日のところは帰りましょうよ。ね? そんな感じで、なあなあで会社がなくなる。その後、突然会社を失ってかわいそうな僕に、補償金的なものがたくさん入る。これは、理想だ。しかし、どうにも実現確率が低すぎる。 妄想ばかりしていても仕方ないのはわかっているが、そんなことを考えずにはいられなかった。 P52 P57 P168 |
鈴木子音 幻冬舎 2025/01/X 日経新聞に掲載された広告の本。 銀行は融資を付ける、 生保は保険を節税に使う 不動産屋はビルを建築できる。 税理士は、税法知識という売りがある。 それらを持たないアドバイザーは何を語るのか。 相続を語りますが、 そんなことでカネが稼げるのだろうか。 その胡散臭さが興味を引いてamazonしてみた。 書いてあることは、 税理士が、相続と、相続税の節税について書くことと同じ。 相続人の範囲とか、遺言書とか、相続税の計算方法とか。 こんな当たり前の情報を、さも、凄いことのように宣伝する。 税理士資格を持っていたら、税理士1年生でも語れること。 P2 というのも相続税に超過累進課税制度を採用する日本では、富裕層の相続において多額の相続税が発生するからです。昨今では、株価の上昇や円安、不動産価値の高騰などで資産評価額が想定以上に高く算定され、思いもよらぬほどの税額に跳ね上がってしまったというケースも散見されます。 P3 しかし、相続対策を一切講じていない状態で本人が急に亡くなってしまうと、遺された家族は複雑な相続税問題に対応せねばならず、想像以上に苦労するというケースが非常に多いのです。 富裕層の資産戦略にはさまざまな方法がありますが、なかでも有効なのが不動産を活用した相続対策です。相続税の計算において不動産の資産評価額は実際の市場価値よりも低く見積もられることが多いため、相続税を大きく減らすことができるのは広く知られています。 |
Himaco KADOKAWA 2025/01/12 「統合失調症の私から世界はこう見えた」 そのような副題で、 統合失調症の世界を語ります。 何人かの統合失調症の方に会ったことがあり、 何冊かの統合失調症方が書いた書籍を読み、 ビューティフル・マインドという映画も見てますので、 統合失調症の方の世界は実感として理解できます。 本書はマンガ。 思想を語るのには文章が良い。 P 26 1つ言えることは 考えも 聞こえる音も 見える世界も 全て私の 現実だったのです |
斎藤秀一 幻冬舎 2025/01/12 著者の 発達障害としての 個性を強調しすぎていて 本書自体は読み続けるのに苦労します。 ただ、パソコンが発達障害の救済になることは理解できます。 私は、 発達障害ではないので、 税理士試験など手書きの答案で合格してきました。 しかし、 パソコンが登場することで、 文章を書く苦労が激減したのは事実。 ただ、ワープロとしての意味ではなく 文字を書くという緊張から解放してくれるのがパソコン。 この「緊張」が発達障害の特徴です。 微妙に発達障害的な欠陥を 補助してくれるのがパソコンでした。 プログラムの学習も、 この著者が語るように のめり込んだ一時期がありました。 P 94 だからこそコンピュータやITが発達障害児の可能性を引き出す力になれるのです。 僕は直感的にコンピュータやITの力が、自分を助けてくれると感じたのですが実際にそのとおりでした。 子どもの頃から文字を正しく書き取ることさえ苦手、計算や物事を順序立てて進めることも、情報を管理することもできない僕がなぜこうやって経営者をできているかといえば、ベースの部分でITの恩恵を受けているからです。 |
ブラック企業被害者対策弁護団 角川新書 2025/01/08 まさに、恐ろしい狂信者の人たち。 そんなイメージを与える一冊です。 どんな不出来な従業員でも解雇は無茶。 解雇すれば、外部の組合か、 ネットで拾った弁護士が登場する。 辞表を書かせる以外に方法は無い。 税理士の関与先の経営者に、 アドバイスするための一冊。 労働審判という3度の期日で終わらせる手続もありますが、 3度で終わらせるためには使用者側にカネを払わせる以外にない。 労働審判の手続 |
服部英雄 中公新書 2025/01/07 日本人の根底にある 神風が吹くという日本特別感。 昭和の敗戦に学ばず、 今の経済状態でも、 日本は終わったとは考えず、 いつか、日本復活の「神風」が吹くと思っている。 学ばない国民 働かない国民 日本は終わったのです。 P1 太平洋戦争が終わるまでは、大人も子どもも「神風」を信じていた。嵐による蒙占襲来(元冠)での勝利である。無謀な戦争を、無批判に国民が支持しつづけた背景の一つに、この不敗神話があった。戦争最優先の全体主義国家はあらゆる批判を許さなかったとはいえ、国民も戦争を終わらせようとは考えず、努力も行動もしなかった。 P234 冒頭で、非科学的な神風思想が日本不敗神話を形成し、敗戦が決定的になってもなお戦争をやめることができず、犠牲者・損失が飛躍的に増え続ける大きな要因になったことを述べた。 P2 P5 P239 |
箱石シツイ 宝島社 2025/01/06 108歳まで現職を続ける方。 語ることには哲学があると思う。 いや、哲学など不要なのですね、 日々、真面目に、真剣に生きる。 P44 わたしがよく言う言葉があるんですよ。「偶然は運命の可視化」。どこで覚えたか定かではないんですけど、店が焼けた夜を思うと、まさにそのとおりだと感じます。お店の焼け跡はとても自分で確認する気になれず、横浜に住んでいた妹が見に行ってくれました。東京に戻る家も店もなくなり、実家にとどまるしかなくなったのです。 P65 「悪いことをするとね、胸に黒い星のようなシミができるのよ。いつの間にかできてしまうの。ずるいこととか、誰かのものを盗んだり泥棒のようなことをやると、胸の中に泥棒に似た魂ができてしまうの。それが黒いシミとなって出てくるの。そうすると、自分では“やってはいけない”と思っても、その泥棒の魂に似た黒いシミが、思いに反して勝手に悪いことをしてしまうようになるの。一生、泥棒として、罪人の暮らしを送らなくてはならなくなるの。いくら更生しようと思っても、抜けられなくなってしまうのよ」とね、こんな感じのことをたんたんと言って聞かせるんですけれど、子どもたちにしたら、とっても怖かったんだそうです。 少しでも悪いことが頭に浮かんだり、誰かの良くない誘いに負けそうになったときにね、思い出してほしいと願ってのことでした。息子も娘も、わたしの言葉を心の底から信じて、「いけないことを一度でもしてしまうと、もう黒いシミができて取れなくなってしまうんだ」思い込んでいたようです。息子は「いまだに、おっかないよ。子どもの頃に震え上がった気持ちを思い出すよ」なんて言いますね。 P146 今でもテレビを見ながら「最近はこんな感じの髪型が流行っているんだな」なんて思います。やっぱり好きなんですね。興味があって、髪型に目が行くようです。家族からは「その年になっても、人の髪型が気になるの?」なんてからかわれますけれど、職業病というか、気になるものは気になってしまうんですね。「あの髪型はどう切るのかな?」とかね、思いますね、やっぱり。まあ、わたしのところに来てくれるお客さんで「流行りの髪型にして」なんて注文する人はいらっしゃいませんけど(笑)。 |