清水泰行(医師) 光文社新書 2021/11/22 この頃、良い本が見つけられない。 書店に行かないから見つけられないのか、 良い本の出版点数が減っているのか。 私は後者だと思う。 コロナの前も、 書店だけではなく、 多様な媒体の情報(広告など)で書籍を選んでいた。 それは今も同じなのですが、良い本に巡り会わない。 本書もダメだった一冊。 次から次に情報が語られるが、 専門書ではないのだから、 素人にも、ドラマとして、ストーリーとして、納得として読ませる必要がある。 自分の知識と、思いだけで本を書いても、それは自己満足でしかない。 それでも果糖の箇所だけでも読んでみた。 私は果物好きで、それが度を超して、脂肪肝になってしまった。 なぜ、脂肪肝なのか、酒も飲まず、大食いもせず。 その原因が果糖なのですね。 果糖の吸収力は高い。 しかし、 本書が語るところは 「果糖」は悪いと語るのみ。 それを超えたストーリーが欲しかった。 私のように、口寂しいときは果物。 それはダメだとして、どの程度がダメなのか。 果物を食するのを全面的に中止してしまう必要があるのか。 P266 もちろん、適度というのは現代の適度とはほど遠く、かなり少ない。現代の果物の甘さは狩猟採集の時代では異常な甘さであり、そんな甘い果物は存在しなかったはずである。そして、本来は飢餓を回避して生き延びるためのメカニズムが、現在の行動障警と関連していると思われる。進化の過程で必要であった生存経路を果糖が活性化し、採餌行動と脂肋としてのエネルギーの貯蔵を刺激するのである。 |
坂倉昇平(労働問題専門家) 講談社現代新書 2021/11/22 本書もダメだった一冊。 イジメの話しが繰り返して登場する。 これが本当ならサラリーマンなんて地獄の生活。 テレビドラマで見るサラリーマンは 大学のクラブ活動のようで楽しそうです。 おしゃべりと、 恋愛をやっていれば給料が貰える。 イジメなんて無駄なエネルギー いじめる方も、 いじめられる方も大変です。 鈍いか、メンタルが強いか、要領よくイジメ側に廻るか。 しかし、日本は、そもそもイジメの構造を持つ社会、 上下関係のあるサラリーマン組織でイジメがあったら、 だから、日本の軍隊と日本の刑務所には入りたくない。 そもそもサラリーマンという制度に矛盾があるのだと思う。 しかし、それを論じても社会が変わるわけではない。 P81 20代半ばまで、土木建築の現場を渡り歩いていたBさんは、新聞の求人欄でこの会社を見つけ、「大きい会社だから、受けるだけ受けてみよう」という軽い気持ちで採用面接に応募した。難なく採用は決まった。同社の採用のハードルは非常に低く、常時大量採用をしていたからだ、 同社の仕事はきつかった。早朝に営業所へ出勤し、外回りの業務を終えるのは20〜21時になることも頻繁にあり、その後営業所に帰って片付けなどを行うと、営業所を出るのが23時を回ってしまうこともあった。年末などの繁忙期は0時を回ることも珍しくなかった。当然のように1ヵ月の残業時間は過労死ラインを超えることになる。 しかも、業務量が多いので、取引先や利用者を回る際も、とにかく一件一件をスピーディにこなす必要があった。いくら働いても仕事が終わらない。集中力と持久力が必要になる。こまめに休憩を挟もうものなら、その日のノルマが終わらなくなってしまう。チームで業務を担当していたので、特に体力に余裕があるはずの20代や30代の従業員は、一日中外を駆け回ることになる。 Bさんはもともと、中学生のときはサッカー部で活躍し、社会人になってからも毎晩友人らとジョギングに励むなど体力に自信があり、持久力も高い方だった。そんなBさんでも、同社の業務はハードだったという。 それでも耐えられたのは、「自分だけが大変なのではない」という意識だった。周りの同僚たちがみな長時間働いていたので、不満を抱くことなく、きつい仕事を「当たり前」のものとして受け入れるようになっていた。 それから20年、Bさんは黙々と働き続けてきた。その間には、仕事が遅い後輩が同じチームに配属されることがたびたびあった。チームで業務を行うため、自分のノルマが終わると、今度は遅れている人の分を手伝うことになる。ただでさえ、ギリギリの状況でこなしているところに、他の同僚の応援の仕事が加わることは、チーム全員にとってかなりの負担だった。 そんなとき、決まって同僚たちは、仕事の遅い後輩に対して、馬鹿にする発言を繰り返したり、事あるごとにきつくあたっていた。どうしても辞めない後輩に、「本当に頼むから辞めてくれ」と懇願する同僚もいた。 膨大なノルマをチームでこなすためには、「使えない」人間を追い払って、新しい見込みのある人間に「取り替える」必要がある。そのために、仕事の遅い同僚を「辞めるようにもっていく」ことが習慣になっていた。別に、会社からスピードの遅い同僚を辞めさせうと指示されたわけではない。現場で行われた「自発的」な行為だった。しかし、Bさんによれぼ、営業所のあちこちで同じことが行われていたという。 この頃の自分を、Bさんは「会社の手先だった」と振り返る。Bさんも後輩に厳しくあたる同僚に同調し、「いじめる側」にいたのだ。 |
新川帆立(弁護士) 宝島社 2021/11/24 1991年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい! 』大賞を受賞し、2021年に『元彼の遺言状』(宝島社)でデビュー。 そんな経歴を見たら読んでみたくなります。 amazonからの到着が楽しみです。 著者は天才です。 今年に入って、始めて、面白い本を見つけました。 脚色はしてあるでしょうから、実際とは異なりますが、それでもビジネス弁護士の現場と、 女性の弁護士の生き方と、そして事件と。 読み終わりましたが、登場人物の個性が書き切れてない、ストーリーの必然性がない、事件の動機としても、事件の態様としても不自然。素人が日曜小説教室で書いた原稿を超えてない。ただ、「コンビニ人間」は小説教室から始まったそうですから2冊目、3冊目と進歩するのかもしれません。しかし、実感としての経験値について欠けているところは著者の年齢かもしれません。 筆者の文書力は100点ですが、ストーリーとしての完成度23点です。 |
國分功一郎 太田出版 2021/11/08 コロナは多様な無駄に気づかせてくれた。 いや、無駄で成り立っていたのが経済なのだと思う。 通勤する時間、営業のために移動する時間、待機する時間、雑談する時間。 おそらく、働く人たちの16時間の内の3分の2は、この無駄な時間だった。 さて、コロナが終わった後の社会。 無駄をそぎ落とし、暇な時代が到来するのか。 そうだとしたら暇の扱い方を考えておく必要がある。 そこで「暇」でamazonしたのが本書。 日経新聞の、少し長めのコラムに、積極的でもなく、消極的でもない、「中道的」な意思決定を語っていた哲学者。 437頁の本書で、暇について古今の思想を紹介しながらじっくりと語ります。 ウサギ狩りに行く貴族、 その人たちに、 わざわざウサギを狩る必要はないと 手にするウサギを提供したら喜ぶか。 著者は、もう少し、短文で思想を語った方が良い思う。 著者が論じる「暇論」ではコロナの次の時代は説明できない。 暇な人たちは食うために仕事を探すとして、 食える人たちは暇な生活を喜ぶのだろうか。 試験勉強のときに、 これが終わったら小説を読みたいと思い続けた。 しかし、試験が終わったら、その熱意は消えてしまった。 自由が制限されたコロナ禍の時代。 しかし、コロナ禍が終わっても、いま、思うことを実行するとは思えない。 コロナ以降、 いや、コロナが終わるとして、 どんな社会が実現し、どんな思いで生活することになるのか。 本書を読んで納得したのは 「なるようにしか成らない」と 考えることを止めてしまう人たちへの戒め。 多くのサラリーマン氏は、 いま、「なるようにしか成らない」と考えてテレーワーク命令に従う。 P2 本書が哲学の本であるとは、それがある問題を扱っていることを意味する。哲学とは、問題を発見し、それに対応するための概念を作り出す営みである。過去の哲学者たちも、各々が各々の問題を発見し、それに対応するべく新しい概念を作り出してきた。本書もまた新しい概念の創造を試みている。 人の生は確かに妥協を重ねる他ない。だが、時に人は妥協に抗おうとする。哲学はその際、重要な拠点となる。問題が何であり、どんな概念が必要なのかを理解することは、人を、「まあ、いいか」から遠ざけるからである。 |
山本守之 中央経済社 2021/11/01 業界の偉人の「最期の書」です。 いや、本人が帯に「日本一愛された税理士、最期の書」とうたってます。 a 北野先生の租税憲法論 b 竹下重人弁護士の租税民法論 c 土地重化や小規模宅地の時代の租税技術論 d 消費税が導入されて理論喪失論の時代 e 組織再編税制とグループ法人税制の時代の租税技術論 f 会社法の改正と資本の部の改正の配当所得論の時代 g コロナ後の時代の××× dの時代に活躍した方と位置づけるべきか。 「租税法律主義」を確立し擁護していく、 そこに初めて租税正義が実現するという方向で税理士法が改正されれば、 そのように論じてますので、 今の時代と比較して見たら一時代前の発想と思えます。 私のように、税理士を、 税務署のアウトソーシングの一員と位置づける発想は、 おそらく、著者は堕落した発想と定義すると思う。 しかし、いま戦う税理士ではなく、調和する税理士の時代だと思います。 司法制度、弁護士制度に比較し、格段の完成度を示すのが税務行政です。 P84 それは弁護士の持っている歴史との違いかもしれないがいいずれにせよ、今の税理士法と弁護士法は基本的にスタンスが違う。私自身は、どちらかというと弁護士法のスタンスに近づけないといけないと考えている。近づけるということは、要するに、国の強大な権力から納税者を守ることが重要になり、それはまさに租税法律主義を支えるということである。この租税法律主義こそ、罪刑法定主義と並んで近代民主主義の大きな柱になっているのだ。 民主主義国家に絶対に不可欠である「租税法律主義」を確立し擁護していく、そこに初めて租税正義が実現するという方向で税理士法が改正されれば、弁護士ほどではないとしても、やっと税理士が1人前になっていくのではないか。 P86 税理士がいかにあるべきかという場合に、税理士が法律の専門家なのか、会計の専門家なのかという点はやはり議論があるところだ。私は、税理士は法律家であるべきだと考えているが、そもそも税理士は訴訟代理権を持っていない。弁護士はこの訴訟代理権を当然有しているものの、司法修習所へ行っても税法を学ぶことはほとんどない。そうすると、税法の「ぜ」の字も知らない人たちが弁護士や裁判官になるということになる。そのような人たちが税務訴訟の当事者になるのだ。 そうすると、じゃあ、裁判官はどうやって税務訴訟の判決を書けるのかという話になるが、いよいよわからなくなると、例えば、東京の地方裁判所に国税庁から出向していくのだ。その人たちにいろいろ相談しながら裁判官は判決を書くわけであるが、考えてみると、課税した側と納税者の間で訴訟を進めている中で、その判決文の書き手が、課税した側から出向している人に教わりながら書くといったら、どういう判決が出るかはわかりきったことである。 このような非常に歪んだ形の中に税理士も弁護士もあると考えるべきだと思う。もっとも最近では、かかる批判を意識して半数は国税庁からの出向者以外の税理士などを採用しているようだ。 |
岩井勇気 ◆ 2021/10/ 9月28日に出版なのに126個の五つ星の評価がついている。 「キレのあるエッセイにワクワクした!」というコメントがある。 これは読んでみなければ。 と、amazonする。 いや、何時になっても到着しない。 ま、いいか。 |
ドミニク・フリスビー 河出書房新社 2021/10/26 同業者から教えて貰った一冊。 彼は自分では読んでないようですが。 歴史の流れには税金が影響を与えている。 それは私の持論で、米国の独立戦争、フランス革命、サッチャーの失脚など全て税金が原因。 本書はメソポタミアからエジプト、ロシアの髭税、フランス革命と話を進める大作ですが、 ただ、なんとなく物足りない。 何が理由なのか。 大量の情報が書かれすぎている。 |
吉田潮 kkベストセラーズ 2021/10/24 体が動けなくなったら介護老人ホームに入るとして、 認知症になり、大声を出すようになっても引き取って貰えるのだろうか。 誰か一人、罵詈雑言の大声を出す年寄りがいたら集団生活は成り立たない。 そんなことが気になってamazonした一冊。 認知症になった父親を特養に入れるまでの経過。 介護老人ホームに入れるのに躊躇する必要はない。 その点は私も同感です。 91頁 また、忘れちゃいけないことがひとつ。父が不快だろうなと心配しすぎるのもよろしくない。実は、案外、視界に入っていなかったりもするからだ。ユニットには10名の入居者がいるが、父が把握しているのはほんの数人。つまり、ストレスになる以前に認識していない可能性もおおいにある。 施設の対応に文句をつける家族も多く、トラブルの原因になると聞く。でも、当の本人は認知症でそんなに理解していなかったりもする。24時間365日いる入居者がさほど気にしていないのに、たまにしか来ない家族が神経質になってイチャモンつけるケースもあるのではないか。 介護施設の職員が入居者を虐待したり、金を盗んだりといった事件は、大々的に報道されることが多い。逆に、職員が入居者の暴力で大怪我をしたり、精神的なダメージを負わされている事実は、報道されにくい。というか、されない。 施設に通ってみて、思うことがある。多くの施設はきっちりしている。スタッフも身を粉にして働いている。ごく少数の悪徳介護業者やクレーマーに近い家族がいると、事件として取り上げられて、大声で拡散されてしまう。印象操作の恐ろしさ、である。 父はいいケアマネに恵まれて、いい施設に入ることができた。まずはその幸運を噛みしめるべきだ。 |
うさぎ親父 不動産工房ゆくはし株式会社 2021/10/24 マンガで語る不動産屋の開業の仕方です。 キンドル版の無料だってので読んでみました。 宅建業免許の説明から、開業する場合に利用すべき業界団体、土地の権利関係の調べから、現地での調査方法、販売、賃貸の仲介、賃貸管理、それら全てを語ります。 マンガと軽く見ることは出来ない完成度です。 仲介業者がトラブルに巻き込まれる事柄なども紹介してます。 不動産業者の心得を次のように語ります。 このように語る業者と共に仕事をしたいですね。 ―――――――――――――――――――― 気づき考えて機転をきかせる 気がついたことはそのままにしない それはなぜかと考える それが問題なら無理なく解決する方法を考える これが不動産業の本当に重要な部分です。 これが出来る不動産業者は、実は多くなく、 しかし、これからの時代に求められる不動産業の姿だと思います。 x頁 新聞の折り込みチラシの効果は、年々弱まってますが、不動産購入者のほとんどが近隣の方なので、情報がお年寄りから若い人というように流れます。結果10万部で10人ぐらいは問い合わせが見込めます。 広告宣伝には目安があります。ポスティングの反響は0.03%といわれてます。新聞広告のチラシは0.01です。 x頁 管理手数料は、通常、家賃収入×3%〜15%の間ですが、8%程度が多いようです。 管理業務とは、入退去の立会や賃料の集金、共有部分の管理、ゴミや騒音などのクレーム対応、設備の故障や雨漏りなどの対応が主な仕事です。 と言っても、共有部分の掃除や修理などは、別途料金をいただきますので、業者を手配するだけです。 |
宮下規久 光文社新書 2021/10/19 聖書を読めば、イスラエルに行きたくなる。 イスラエルに行けばルーブルに行きたくなる。 歴史と画家の知識が無くてはルーブルは廻れない。 カラヴァッジョ研究の第一人者という著者。 本書は歴史と画家の知識を深めてくれるのだろうか。 気になった時はamazon。 明日には手に入る。 音楽でも、 小説でも「解釈」が必要。 アニメの人物の声を音声読み上げソフトで代行させ、 自動ピアノが音楽を奏でても解釈が無い。 声優が解釈した言葉や、 ピアニストの解釈によって始めて音楽になる。 本書は絵画を解釈する書です。 カルバッチを「聖マタイの召命」から始まり、 取税人マタイは、描かれた人物のどれなのか。 そんなことを論じて定説を否定していきます。 どの章からも読める。 そのような著者のアドバイスに従って、 手元に置いて、気になった箇所を読み進めてみようかと。 いや、しかし、西洋から日本、ロシアのイコン、慰安婦像まで扱う総花的な解説は、絵画の「解釈」としては薄い。 その画家、その絵画を単独で扱った美術書を全く超えてない。 やっぱ、没の一冊。 |
高水裕一 光文社新書 2021/10/19 星野之宣氏のコミック「2001夜物語」は傑作でした。 5度は読み返しただろうか。 この書から得た知識でミルトンの失楽園を読むことになった。 「それにしても知識が禁じられるとは、そんな奇怪な無法なことがあり得ようか」と。 気になった時はamazon。 明日には手に入る。 残念ながら外れです。 映画を題材にして宇宙を語りますが、そこにはストーリーがない。 2001夜物語は、第1巻の太陽系と、そこで手に入れた反物質をエネルギーとする太陽系の脱出が第2巻、さらなる深宇宙を求める第3巻。宇宙理論だけではなく、人間が登場する叙述史です。 |
一般社団法人 みつめる旅(著) 日本経済新聞社出版 2021/10/19 テレワークでも意味が分からない。 なぜ、仕事が出来るのだろうか。 それを超えて「場所を自由に選んで生きること」。 その実践例を読めばテレワーク型の働き方が理解できるかもしれない。 特殊な人たちなのか、進んだ人たちなのか、普通の人たちでも可能なのか。 コロナ禍で良書に出会わない時代。 良い本であることを期待して、 amazonすれば明日には手に入る。 20分で読める本ですが、 言いたいことは何なのかが読み取れない。 大好きな五島列島で仕事をする楽しみを語っているのか。 会社に通わなくても済むテレワークという働き方の究極型を語っているのか。 ヨットが大好き、海が大好き、そこで働く楽しみを語っているのか。 東京23区という刑務所に入り、 会社という雑居房に入り、9時5時で管理され、 昼飯を食べる時間まで管理されていたサラリーマンが、 出所し、海岸でヨットのさび取りをする開放感を語っているのか。 仕事の内容も語らず、 仕事の仕方も語らず、 家族も語らず、ただ、 フーテンの寅さんのような生き方を語るのか。 いま住んでいる「自宅」が自分にとって最高に心おどる場所であれば、わざわざ出かける必要はないのです(P57)。 そのようにも語ってますので、 そうでない人たちに向けた「心おどる」一冊なのか。 P210 私たち一般社団法人みつめる旅のメンバーも、今でこそ自由に移動しながら仕事をしていますが、数年前までは毎日オフィスに出かけていく「普通の社会人」でした。IT企業でバリバリ働きながら、ときにはオフィスに泊まり込んで徹夜も厭わないほど夢中になって事業を推し進めていたメンバーもいますし、キャリア官僚として寝る間も惜しみ霞が関の省庁でハードな仕事に遭進していたメンバーもいます。 それがやがて、「田舎の稼業を手伝いながら仕事をしたい」「体力と体調にあった働き方をしたい」「育児が大変なので通勤に時間を使いたくない」といった理由から、2016年から2019年にかけて、それぞれに、会社を辞めて独立したり、より柔軟に働ける職場に転職したりといった選択をしました。 新型コロナウイルスの蔓延により、数十年もかかると思われていた社会の変化が一気に起き、テレワークが、会社員でも少なからぬ人にとって取りうる選択肢となりました。今後は、もっと多くの人にとって手の届くオプションとなっていくでしょう。今の仕事や会社を辞めなくても、自分の好きな「場所」と「時間」を自由にデザインできる時代が訪れつつあるのです。このタイミングを、一人でも多くの人に活かしてもらいたいと思いながら原稿を書きました。 自分が心地よい「場所」と「時間」を選ぶこと。それがどれほど人生に大きな影響を与えるのかは、実際に選んでみないとピンとこないかもしれません。 しかし一度、自分にとっての陽所」と「時間」をデザインすることの楽しさを覚えると、もっとデザインしたくなります。残された人生を、もっと自分にフィットした「場所」と「時間」の中で過ごしたいと願うようになります。 ワーケーション・イベント開催期間中も、それ以外でも、これまでたくさんのビジネスパーソンを五島に誘致してきました。五島は、東京からだと飛行機を乗り継いで行かなくてはならないので、沖縄などの観光地よりも、お金も時間もかかります。飛行機や船の欠航も少なくないので、不便です。でもそれを乗り越え、「どうしても行きたい!」と前のめりで集まってきてくださった方々ばかりですから、滞在中の「熱量」がすごいのです。やはり人間というもの、心底「行きたい!」と思った場所にいるときは、内側から湧いてくるエネルギーの質が普段と全然違うのだと思います。 |
菅野晴隆(弁護士) インプレス 2021/10/18 アマソンで見かけた一冊。 「弁護士だけが知る、生き方・働き方の処方箋31」と題するが、何が書いてあるのだろう。 トラブルから学ぶ生き方はないし、 弁護士から学ぶ生き方もない。 私の持論ですが、それを否定してくれるだろうか。 そのような興味でAmazonして見た一冊。 到着するのが楽しみです。 amazonすれば翌日に届きます。 そして15分で読めてしまう一冊。 浮気による離婚、労働事件、覚醒剤、相続紛争。 あり得ることですが、しかし、普通の人たちにはあり得ない場面。 離婚事例を元にして夫婦円満のコツを語り、 相続紛争をネタに遺言書の重要性を語る。 それは、私が、全く想定していない語り方、生き方。 事件、トラブル、裁判所、弁護士に学ぶところは無い。 P136 遺言は「子孫に自分が発信できる最後のメッセージ」です。その遺言書のおかげで、されたご家族が揉めずに済む、幸せに過ごせるツールになるのは間違いありません。 私の先輩の弁護士には、「50歳になったら、財産の多寡にかかわらず遺言書を作りなさい」とおっしゃる方もいらっしゃるほど、遺言書は重要です。 |
田渕直也(金融アナリスト) 日経ビジネスジン文庫 2021/10/14 バブルを論じる一冊で、 標準分布から論を始めて、 べき分布と論を進め、多様なバイアスを論じます。 そして、バブルは管理不能という結論のようですが、それは違います。 バブルとは「値上がりするから買う、買うから値上がりする」という経済が始まったときです。 そして、バブルからは降りられないのが投資家という人たち。 有利な投資を求めるカネが集まり、 目の前の資産に投資すれば、 「値上がりするから買う、買うから値上がりする」という資産がある。 コロナ禍の株高は、 300億円の資金を運用するファンドに、 さらに200億円のカネが出資された状態。 ファンドマネージャーはそのカネを金庫に入れておくことは出来ない。 コロナ禍で痛んだ経済を無視し、 「値上がりするから買う、買うから値上がりする」という経済で湧き上がっている。 しかし、実経済を無視した株価はあり得ない。 何時か、逆回転を始めることは投資家の全員が知っている。 東京23区を売れば、 アメリカ全土が変えると言われた昭和のバブル。 誰もが、異常な状態であり、地価と株価は暴落すると予想していた。 しかし、いま投資を止めてしまったら値上がり循環に乗れない。 投資家は、値上がり循環に上手に乗る必要がある。 しかし、一般素人は「値上がりするから買う、買うから値上がりする」という循環に乗ってはならない。 ただ、「値上がりするから買う、買うから値上がりする」というバブルが終わった後には、 暴落という調整作用と共に、異なる社会という新しい経済の芽が出現しているのも現実。 その現実に目を背けて、バブルを無視した隠遁生活をするのも、それなりに危険。 さて、コロナバブルが終わった後に出現する社会は、どんなものだろうか。 IT化がさらに進み、テレワークが常識化する社会なのか。 貧困格差が極端に進み、需要が減少してしまった経済なのか。 P182 オランダは勤勉を旨とするカルハン派といわれるキリスト教新教(プロテスタント)が根付いた堅実な国民性を持つ国である。しかし、値段が上がるから買う・買うから値段が上がるという循環的なプロセスはそんな国民性を凌駕するほどに強く、異常ともいえる状況が作り出されていった。それがチューリップ・バブルである。もちろん、このバブルはすぐに崩壊し、多くの破産者を生み出すことになった。 P186 バブルをもたらした鉄道やラジオ、自動車、インターネットなどのイノベーションは、すべて人類の歴史に後戻りすることのない大きな変革をもたらしたものである。そうしたものであっても、投機の行きすぎと急反転による淘汰という道を必ずたどってしまうのだ。そうした画期的なイノベーションや社会の変革は、バブルの発生と崩壊を乗り越えて初めて着実に根付き、その一連の荒波を生き残った者だけが新時代の覇者として大きな成功を収めることになるのである。 P192 こうして、景気拡大が株価上昇をもたらし、今度は株価上昇が景気を押し上げ、さらにそれがまた株価上昇につながるという循環的なプロセスが生まれていくことになる。このような幾重にも重なる自己増幅的なフィードバックに支えられたバブルの持続力は、非常に強いものがある。 P193 1980年代の日本のバブルもそうである。日銀がバブル退治に乗り出して金利の引き上げを開始しても、1年近くの間、株も土地も価格が上がり続けた。 サブプライムローン・バブルでは、2007年にパリバショックが起きて危機が表面化した後ですら、株価はなお上昇を続けた。 P197 たとえば「我々は今、新時代の到来を迎えている、株価はまだまだ上がる、2倍3倍になる」と主張する者が脚光を浴びる。バブルの熱気が過ぎ去った後には、彼らの主張はバブル期の愚かさを象徴するエピソードとして笑い話の類となっていくのだが、また新しいバブルが起きれば、人々は性懲りもなくその手の主張をもてはやすようになる。 P204 暗黒の木曜日の当時(1929年)では、地方の一般投資家は、週末の新聞で株価の暴落を知り、月曜日に証券会社に押しかけるという状況だった。今では、世界中の一般投資家がリアルタイムで世界の市場を追いかけることができる。そのため、世界のどこかで起きた異変は瞬時に他の市場に伝わる。こうした環境が、投資家の聞で恐怖が伝播するスピードを増す方向に働き、市場の急変を起こしやすくしているとも考えられる。 |
阿部恭子(加害者家族の支援) 幻冬舎新書 2021/10/05 殺人事件の多くは家族間で起きる。 その場合は、残された家族は、 被害者家族と 加害者家族の両方を演じることになる。 まさに地獄。 P157 「息子を殺して私も死ぬ……、そう思った瞬間は一度や二度ではありません」 小山美智子さん(仮名・70代)は20年以上、息子の家庭内暴力に悩まされてきた経験があり、熊沢被告に同情する親のひとりだ。 小山さんの夫は医師で、地元では名士だったことから、長男は「医者の息子」というプレッシャーを受けて育った。小山さんもまた、息子には医師になってほしいと思っていた、 ところが長男の成績は振るわず、大学受験に失敗。毎年、受験に失敗するうちに家から出なくなり、引きこもり生活を送るようになっていた. 小山さんは無気力になっている息子に何とか目標を持たせようと、有名大学に通う学生を何人も自宅に連れてきて息子に会わせようとした。息子はこうした母親の勝手な行動に腹を立て、暴言を吐き暴力を振るうようになっていった。 息子の行動はエスカレートしていき、夜中に暴れたり大声を出すようになった。小山さんも息子と同じような昼夜逆転の生活になり、親子は徐々に社会から孤立していった。 夫は仕事で忙しく、ひとり悩む小山さんのSOSを受け止めてくれる人はいなかった。 「うちは経済的に恵まれていたほうだったので、周りに相談しても深刻に受け止めてくれる人はいませんでした、夫の面子も考えると、本当のことを話すこともできなかったと思います」 周囲からプレッシャーを理解されず、悩みを抱え込んでいたのは息子も一緒だった。浪人生活の長期化で友人と疎遠になっていたが、最初の頃は余裕のある生活をむしろ羨ましいと言われ、自分の悩みは他人には理解されないと心を閉ざすようになっていった。 ある日、息子は犬の鳴き声がうるさいと、隣の家に向かって怒鳴り始めた。 息子は母親だけでなく、近所や外の物音にも敏感に感情を爆発させるようになっていた。そして怒りが収まらない息子は、包丁を持って隣の家に向かおうとした。小山さんは慌てて息子を追いかけ、包丁を取り上げようと、揉み合っているうちに、腹部に包丁が刺さってしまった。 小山さんが病院で目を覚ますと、夫から、小山さんが倒れた後、息了が自ら命を絶ったことを告げられた、 「あのとき、息了から包丁を取り上げていたら、私が息子を刺したと思います。“死”以外の出口が見えなくなっていました」 |
日本経済新聞社(政治担当論説委員) 日本経済新聞社 2021/10/05 生活実感の無い新聞記者が書いた本はダメ。 ただ、本書は、そもそも生活実感を必要としない「コロナと政治」の話し。 そして、コロナはウイルス(自然科学)である以上に「政治と文化」の問題だと思う。 中国、日本、韓国、米国のコロナを語ります。 コロナについては、既に、一応の知識がありますが、 各々の国の文化と政治については知識がない。 その意味で、本書は、コロナ以上に、各々の国の政治と文化を知るのに有効でした。 日本編については、国民全員への10万円のばら撒き、アベノマスク、小学校、中学校の一斉休校、安倍総理の退陣など、コロナという戦争中の歴史として永久保存本です。 P190 1968年に北朝鮮から韓国に侵入したスパイによる朴正煕大統領暗殺未遂事件が国民に住民登録証を義務づける契機となった。住民登録番号に代表される各分野横断の中央集権システムが、未曽有のコロナ禍でもスピーディーかつ正確な感染者の把握から追跡、隔離、情報開示まで威力を発揮している。世界有数のIT先進国になった韓国は、国民の95%がスマートフォンを持ち、民間のカード決済は9割に達するデジタル社会だ。韓国全土に張り巡らされた電子・通信インフラがK防疫を下支えしている。 P194 金大中大統領(在任1998年〜2003年)は、脱税防止のためカード決済の所得控除を大きくする促進策を進めた。中央省庁に対する青瓦台(大統領府)の力がひときわ強く、大統領がいったん方針を決めると、末端までスピーディーに意思決定がなされる。朝鮮戦争が1953年に休戦したままで今も北朝鮮との戦争状態が終わっていないため、準戦時体制のような国家の仕組みが温存されている。その結果、現在の韓国社会はほぼキャッシュレス化が実現し、日常生活で現金を使うことはほとんどなくなっている。 P207 P222 P227 P238 P242 P244 P247 P257 |
西村秀一(医療センターウイルスセンター長) 幻冬舎 2021/09/16 分類すると、 飛沫感染 = 唾の粒(蒸気) マイクロ飛沫感染(エアゾール感染)= 唾の粒から水気が蒸発したもの 空気感染 = ウイルスのみ コロナは空気感染であって、 つまり、次の説明は間違い。 ――――――――――― コロナ「空気感染」対策を 国内専門家ら、国に提言 飛沫小さく3密で浮遊 換気や不織布マスク徹底 厚労省は「3密空間ではエアロゾル感染が起きるが、一般的に飛沫感染と接触感染が起きる」と説明する。飛沫感染は感染者のくしゃみなどで出る直径5マイクロメートル以上の飛沫を吸い込み感染する。飛沫は1〜2メートル先まで届くといわれる。接触感染は感染者の飛沫が周りの物につき、それに触れた手で口や鼻を触って感染する仕組みだ。「新型コロナでは空気感染は起きていない」(厚労省担当)という考えだ。 ――――――――――― 飛沫感染 = 嘘 接触感染 = 嘘 くしゃみ感染 = 嘘 飛沫は2メートル = 嘘 これらは空気感染を含むが故に危険なのであって、 気道まで吸い込まれれるのは乾いた、軽い、ウイルス。 口の中にウイルス(飛沫)を吸い込んでも唾液に張り付いてしまう。 軽く、気道や、肺まで入るウイルスが危険。 飛沫 = 重いので落ちてしまう。 接触 = 肌からの感染は無いし、 モノに付いたウイルス量が少なく、 半減期があり、触った手を気道まで入れない。 鼻をほじっても、鼻毛が生えている範囲は外皮と同じで感染しない。 クシャミ = クシャミを直接に浴びるなんて現実的では無い 2メートル = 空気感染は浮遊するので2メートルに限られない。 では、対策は、 1 外気を入れて新鮮な空気を吸う。 2 外気を入れる扇風機は、もちろん、ok。 3 不織布マスクに効果があることは実証済み P31 感染リスクが最も高い危険な行動は、ウイルスを吸い込むことです。吸い込まれたウイルスが上気道に感染するといわゆる風邪に似た症状となり、肺を含む下気道に達すると重症化します。 同程度の少量のウイルスがいたとして、手を介して粘膜にたどり着くウイルスは極めてわずかな一方、呼吸で吸い込めば多くが鼻の奥や気道へとやすやすと入り込みます。それを媒介するのが大きな意味での飛沫、つまり患者が呼吸や咳、くしゃみなどをした時に出る液滴です。 新型コロナウイルスは、呼吸器粘膜で増殖します。 気道(鼻、喉、気管、気管支、細気管支)の粘膜の表面は、つねに浸出液と呼ばれる気道細胞由来の液に覆われているのですが、感染した人の浸出液には、感染した気道粘膜細胞から出たウイルスが含まれています。そこを通る空気の流れによって、ウイルスを含んだ浸出液がちぎれ、大小さまざまなサイズの液滴(広義の「飛沫」)となって体外へ排出されるのです。 P31 P33 P36 P38 P40 P52 P66 P70 P114 |
コロワくんサポーターズ 日経メディカル開発 2021/06/29 ワクチンが怖い。 そのような方には、ぜひ、読んで頂きたい一冊。 日経新聞にワクチンの製造方法の違いが解説されていた。 中国製は既存のインフルエンザワクチンと同じ製法。 だから有効率は50%なのだろう。 中国、ワクチン増産に逆風 シノファーム製など有効性低く 速さ優先、技術力に課題 日本経済新聞朝刊(2021/06/30) こうした欧米勢との格差はなぜ生じているのか。米マサチューセッツ大医学部の盧山教授は「中国2社の有効性は90%以上あるファイザーとモデルナより低い。その原因は技術の違いにある」と指摘する。 米国2社は遺伝情報物質をワクチンとして投与する「メッセンジャーRNA(mRNA)」と呼ぶ技術を活用。これにより「より良い抗体の反応を引き起こせる」(盧教授)。これに対し、シノファームとシノバックは毒性を取り除いたウイルスを投与する「不活化ワクチン」を使う。インフルエンザなどで使われている昔ながらの技術だ。 シノファーム幹部の楊暁明氏は中国メディアに「不活化ワクチンは長年の経験があり、その採用が迅速な開発成功の理由だ」と語った。政府による補助金などの全面支援も後押しとなった。 一方、独立行政法人の経済産業研究所の藤和彦フェローは「新型コロナはインフルエンザに比べて体内での増殖の速度が遅く、不活化ワクチンでは不適との指摘がある」としつつ、「ワクチンの有効性が低いとの判断から、欧米の製薬会社はこの手法を採用しなかったのだろう」と語る。 P22 従来のワクチンは、不活化ワクチンや生ワクチンと呼ばれるものが中心でした。これらのワクチンは、鶏卵などに病原ウイルスそのものを感染させて増やした後に感染力を持たないように不活化したものや、弱毒化して病原性を持たなくしたウイルスを培養して増やしたものから作っていました。このような方法でワクチンを作る場合、ウイルスの大量培養や安全な弱源化・不活化の条件探索に膨大な時間がかかります、それが、「新型コロナワクチンの開発には早くても5年以上かかるのではないか」と流行当初に指摘されていた理由です。 一方、新型コロナワクチンとして実用化されたmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンの製造では、病原ウイルスそのものは使いません、病原ウイルスの遺伝子情報の一部(RNAやDNA)を用いて、ヒトの体内で病原ウイルスのたんぱく質を作らせて、免疫を誘導する仕組みです。したがって病原ウイルスの大量培養や弱毒化・不活化は不要です。このような特徴の恩恵を受けて、有効性と安全性の確保において大切な臨床試験は省略することなく、開発スタートから1年足らずで新型コロナワクチンを実用化することができたのです。 なお、mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンは、急に出現してくる感染症に対応して素早くワクチンを開発することができ、病原ウイルスの変異への対応力も高い次世代型ワクチンとして期待され、新型コロナウイルス感染症が広がる前から開発が進められていたものです。 |
矢口椛子(乗客) 合同出版 2021/06/08 今のコロナ禍、 オリンピックを開催しようとしている。 いったい政府はこの混乱をどのように収集するのだろうか。 この混とん状態は、歴史で習った第二次世界大戦末期の軍部の統制のなさのようだ。 P41 ツイッターの画面には「豪華客船にのったまま、沖合に行ってそのまま帰ってこないでください」といったおぞましい書き込みが並んでいた。理性をかなぐり捨てると、このような言葉が出てくるのだろうか。 P73 的外れのクルーズ参加者への非難は、政府にとても都合よく働いたと思う。ダイヤモンド・プリンセス号を海上に停泊させ、乗員・乗務員を隔離することで、「政府は水際作戦をきちんとやっている」感を演出し、コロナウイルスへの恐怖がまだ実感できない状況の中で、コロナ問題の焦点をダイヤモンド・プリンセス号に当てることで、オリンピック開催の是非という政治的決断から目を逸らす恰好のショーになったのではないか。 P97 「水際対策」は大事だと思うから私も協力した。しかし、後手後手の場当たり的対応に振り回され、おびえていた乗客の気持ちを考えたことがあったのだろうか。陸に戻っても、そこは安全な場所ではないらしい。少なくとも船の上は、同じ経験をしている者同士の集まりだった。 しかし、ここは違う。これからは、クルーズ船での隔離生活とは別種の辛い生活が始まるのだと覚悟しなければならなかった。 P170 ダイヤモンド・プリンセス号での隔離生活が終わりに近づいたころ、「いったい政府はこの混乱をどのように収集するのだろうか。この混とん状態は、歴史で習った第二次世界大戦末期の軍部の統制のなさのようだ」と思ったことがよみがえる。ダイヤモンド・プリンセス号の経験をはじめ、今までの感染症対策の不備から何も学んでいないことの帰結だ。健康も命も人権も差し出して犠牲になった乗客乗員の思いは踏みにじられている。 |
戌ア朝子(ジャーナリスト) 朝日新書 2021/06/02 誰でもが何時かは病気になる。 その病気が 医者自身の病気だったら、 どのように人生を定義するのだろう。 高血圧性脳出血、脳出血・心筋梗塞、医療事故によるB型肝炎、乳がん、肺がん、腎臓がん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜色素変性症、パーキンソン病、B型肝炎から肝がんに、白血病、性同一性障害、アルコール依存症、2型糖尿病、舌がん、白血病、悪性リンパ腫、胃がん。 私が経験するのはどれだろう。 P16 「走る整形外科医」が片麻痺に 高血圧性脳出血 午前8時30分、エレベーターを待つ間から、これまで経験したことのない違和感に襲われた。左の手足がじわじわ痒れてきたかと思うと、力が抜けていった。瞬時に「倒れる」と分かったが、倒れるとしても、エレベーターの外へ転がり出なくてはならない、頭を打ってはならない。とっさに機転を利かせた。 P27 それでも、多くのことを諦めた、我慢だらけの人生だ。高尾山を駆け抜けたい、フルマラソンをもう1度走ってみたい、ボールを思いきり蹴ってみたい……。そして未だにメスを握る自身の夢を見て、深夜目覚めるとメスがないことに気付いてショックを受ける。 「左片麻痺という障害を、自分はまだ完全に受け入れられない。患者さんには、病気や障害と共存していく術を身に付けてもらいたい。治らない症状をいつか治ると言い、治療を続けるのは罪悪であり、私のやり方ではない」 5年先、10年先の将来への不安は、今もなおある。70歳、80歳になった自分の生き方が見出せずにいる。一病息災で、1日1日を生きている。 P43 針刺しでB型肝炎に 死と生思う 医療事故によるB型肝炎 手先が器用だったことも幸いして、荒井はIVRの手技を着々と身に付けていった。愛知に暮らし始めて3年が過ぎようという87年2月、施術中に事故が起きた。局所麻酔を行った後、荒井は、注射針の針先に再びキャップをかぶせようとした。これは安全面から今日では禁じられている行為である。その際に目算がずれ、自分の指を針で刺してしまったのだった。現場の針刺し事故は、珍しいことではなかった。 P46 肝炎を発症したに違いない、8カ月前の針刺し事故の記憶がよみがえった。B型肝炎ウイルスは感染力が極めて強いため、体内に1億分の1ミリリットルが入つただけでも発症する可能性があった。さらにB型肝炎であれば、劇症化する可能性は決して低くなかった。 荒井は、とっさに死を直感した。というのも、その夏、三重大学医学部附属病院で、B型肝炎が劇症化した医師2人が死亡し、看護師1入も重体に陥ったことが報じられていた。荒井はまだ35歳だったが、「劇症肝炎になれば、助からない」と確信した。であれば、信頼の置ける医師に診てもらい、看取りまでしてもらいたいと思った。内科の年配の医師に電話をして、全てを託した。 そのまま個室に入院になった。急性のB型肝炎が劇症化する確率は1%程度にすぎなかったが、劇症化した場合の致死率は9割を超えていた。劇症化を防ぐ有効な治療はなく、1週間経っても検査値が下がる気配はなかった。横たわっていても身の置き所がないだるさの中で、荒井の脳裏に来し方の思い出が去来した。 P172 4歳で「男としての自分」に違和感 性同一性障害 87年に医師免許を得ると、大学院に進んだ。夏から、医局の人事で沖縄の病院に1年間単身赴任した。1人の時には女性の服装をして外出した。その時間こそは、自分に偽りのない人生だと実感できた。幼少期から男牲として生きることに疑問を抱き、その解決のため精神科医になったこともあり、1日も早く一人前の医師になりたいと願った。女性として暮らしたい、同じ障害を抱える患者を手助けしたいと、懸命に努力した。 医学生時代に長女が生まれていた。精神科医の修業に追われながら、自分の性別への違和感という1点を除けば、公私共に満ち足りていた。 P182 ちあきクリニックを訪れる患者の約7割が性別違和で、下は4歳、上は70代と広く、ライフステージごとに多様な問題を抱えている。思い詰める時期と、何とかなりそうだと思う時期を繰り返し、最後は追い詰められて来院する。 最初はじっくり話を聞く。多くの場合、生い立ちからの「自分史」を書いてくるため、本人も話しやすく、限られた診察時聞で松永も患者を把握しやすくなる。「診断書が欲しい」「性別を変えたい」「手術を受けたい」……訴えは幅広く、「違和感がつらいのではっきりさせたい」という人も多い。 「共通するのは性別違和感からくる苦痛で、専門家に診断をつけてもらい、生きる指針にしたがっている」 診断書は、学校や職場で望む性別の扱いをしてもらう根拠になる。全ての人に精神療法を行い、大半は身体的治療まで進む。ホルモン剤の注射までは自院で行うが、手術が必要な場合は大学病院へ紹介する。 子どものころから悩んでいる患者が多く、親に言えないどころか、親だからこそ気付けずにいる。性別への違和感を思うことさえ許されず、社会的に容認されない気持ちという価値観を刷り込まれ、自分自身を抑圧している。このため、まず本心に向き合うことから始める人もいる。苦痛を解きほぐすと、最初は性転換治療が必要だと思い詰めていた人が、自分には必要ないと気付くこともあるという。 |
日本看護協会出版会編集部 日本看護協会出版部 2021/06/02 現場での看護師さんと医者の働き。 感謝する以外にない。 162名が現場を語ります。 P208 その頃の中国での惨劇を目の当たりにしていた職員の間では、不安な表情と否定的な意見、肯定的な意見が混在していた。強張った表情で「家族に高齢者がいるから」「子どもがいるので」「うちがやる必要があるのですか!?」と様々な意見があった。院長と2人で時間を重ねて話し合ったが、院長のひと言がスタッフを1つにした。「私は救急医として、このときのために生まれてきたと思います。クリニックは潰れてもよいので、皆さん一緒についてきてください」――多くの現場の職員はこの言葉に使命感を感じ、コロナと対峙する決心がついたと思う。 P221 私は看護部長として、院内の患者も地域の住民も病院も大切だが、頼ってきた患者に対して、連日屋外でビニール素材に全身を包み、汗だくになりながら患者に寄り添って対応している看護師たち(図2)が愛おしくてならない。陽性者の対応をしていなくとも、感染のリスクに不安を抱えながら、当院の診療方針を受け入れ、過酷な状況でも前向きに協力を惜しまない看護師たちを心から大切にしたい。 |
井川直子(文筆業) 文藝春秋 2021/06/01 34人の飲食店経営者がコロナへの対応と思いを語ります。 食べ物屋、飲み屋などは、不要不急の存在で、コロナの感染を考えれば営業自粛すべきは当然。まさに、不要な存在。 そのように思っていたのですが、各々の経営者やシェフの考え方を知れば、それは一面的な見方だと気づかされる。 医者や、弁護士、税理士が、自身のカネ儲けだけではなく、社会に参加する意義を考えながら生活しているように、食べ物屋、飲み屋の経営者は、自分の店と、そこで提供するサービスが社会に参加する意味を考えながら仕事をしている。いや、コロナ禍の自粛騒動で、その思考を、より深めたのかもしれない。 その意味では、他人が考える飲食店への自粛要請と、本人が考える自粛要請との間には大きな差異がある。自身が自粛要請の対象にされてしまった人達の悩み、判断、資金、雇用、メンタル、解決策。 事業経営者が考えること、やはり、サラリーマン氏が考えることとは深さが違う。 P21 正解はわからない。自分とは違う選択を否定し合うと、ただでさえ重い空気の世のなかが、ますますギスギスしちゃう。こうなっちゃってるのも、厳し過ぎる状況にポンと放り出したまま、「あとはみんなで空気読んで」とでも言っているような政治のせいかなと思いますが。 P30 僕のなかでは、今はサバイバルだと思ってるんです。 アマゾンの奥地にポンと投げ出されて、さあ、どうやって生き延びる?と試されている。僕は自分だけじゃなくて、自分の店だけでもなくて、(飲食業、生産者、お客も含めた)みんなで生き延びたい。 P49 僕らが置かれている現状もそういうことで、どっちが正しいとかじゃない。批判でなく、それもそうだよね、これもこうだよね、って話だけすればいいんじゃないかなと。誰もが、どのみち自分が決めたほうへ歩き出さなきゃいけないわけだから。 P63 こんな状況でも店から離れず、慣れないテイクアウトの仕事も受け入れて、一致団結してくれている。「ありがとう」以外ないじゃないですか。だからなんとか、100%は無理でも、少しでも近づくような給料を支払いたい。 P82 だって、ずっと夢だった仕事なんですよ。 だから今、実現していることがたまらなくうれしい。お客さんのために、毎日料理を作ることができている自分が、うれしいんですよ。それが僕の「やりたいこと」だったんですよね。 P90 足なみを揃えない者に対して、和を乱すな、と叫ぶ不寛容な社会には違和感を覚えます。本来、入はそれぞれの責任で生きているはずなのに、みんなが誰かの判断や指示を待っている。政治でも、上の人が、さらに上からの判断を待つ。 でも僕は自分で考え、自分で判断して行動したい。世のなかに必要なこの灯りを消さないぞ!と表明する、これは僕の意地でもあります。 P101 何も台風のなか傘をひっくり返してまで行かなくていい。でも翌日晴れたら、会社と家の通勤路をちょいと外れて、電車に乗って来てくれる。そうして「いらっしゃいませ」と言えるありがたさ、の積み重ねですよね。そんな不要不急の世界で飯を食ってきたけれど、これこそが人と人とのつながり。誇りを持っておきたいですね。 P119 今回のことで、お店を(自粛休業するか)どうしよう?なんてまったく悩まなかったです。だって個人店なんだから。店を開けるも閉めるも、それぞれの店主が思うようにすればいいこと。世間の声に左右されるとか、私に関して言えば考えられない。 店主が自分の責任で判断しないで、どうするの?と逆に訊きたいくらいです。誰かがこう言ったから、ではなくて、自分自身で考えて決めたことなら堂々としていればいい。 ちなみに、そういう私に自信があるのかといわれれば、本当は私にだってないですよ。でも、あるように見せるんです。店主が態度を決めないと、みんなが困るから。 |
平野啓一郎(作家) 文藝春秋社 2021/05/28 次のような書評をみて、 それは読みたくなってしまうでしょう。 AIと税理士業なんてテーマを講演していたら、尚更です。 コロナ禍が格差拡大に拍車をかけ、AI(人工知能)技術の進歩や気候変動、少子化が、社会の姿を大きく変えつつある。これから世界はどうなっていくのか。小説を通じて人間の心のあり方や、社会との関係を問うてきた作家の平野啓一郎さんは、26日発売の新刊「本心」(文芸春秋)で近未来の日本を描いた。「社会が変化し続ける限り、文学も終わらない」と語る平野さんに、作品に込めた思いを聞いた。 いや、しかし、全くダメ。 最初の3頁で、これはダメだと分かる一冊。 何で、次のような面倒くさい文書を書くのだろう。 P10 死は勿論、平凡な出来事だろう。誰もがある時、この世に生まれてきて、いつか死ぬ。これは、絶対に例外のない事実だ。取り分け、親が子供よりも先に死ぬというのは、まったく平凡なことに違いない。逆よりずっといい。そして、平凡なことを受け容れられない人間は、周囲を苛立たせる。――それはわかっている。僕の経験は平凡だ。ただ、ふと、どうしてそんなにみんな、何でも平凡なことだと思いなすようになったのだろうとは、考えることがある。決して口には出さないけれど。 僕は結局、感情生活の落伍者なりの手立てに頼ろうとしている。 ありがたいことに、そういう人向けのサーヴィスに目をつけた人もいるのだった。 |
本郷孔洋 TOHOSYOBO 2021/05/27 業界の偉人が、 毎年に発行するビジネス日記。 他の方達と異なり失敗を語る。 しかし、 失敗を語りながら 大事務所を作り上げたのだから凄い。 今年は、当然の事ながら、コロナ一色です。 P91 DX化とは? 「くもりガラスを手で拭いてあなた明日が見えますか?」 私は見えません(笑)。 P144 私のチャレンジ リモート会計事務所へのチャレンジ コロナ後の世界は、リモート経済が加速することは、間違いありません。 その流れに乗りたいと、ITとリモートだけに特化した、会計部門を立ち上げました。 七月一日スタートのほやほやです。 一切、お客さんのところに行かず、リモートで実践します。また、処理も、ITで人手のかからない、一気通貫経理を目指します。 弊社だけではありません。 リモート会計事務所を目指す同業者は、多いはずです。 弊社が、勝つとは断言できません。これの、立ち上がりが早いか、私のいのちが早いかはわかりませんが(笑)。 |
久保部羊(作家・医者) 幻冬舎 2021/05/26 世の中、全てが面倒くさくなっている。 面倒くさいなんて言ってられない方も多いとは思いますが、 しかし、いま、全てが面倒くさい。 無策の1年を超えたコロナ対策。 社会の「面倒くさい指数」は180くらいだろうか。 難しい本を買っても読む気になれない。 しかし、本書は面白い。 タダの読み物ですが、医者の横暴と、MR(プロパー)という典型的な営業の人達の生活と。 もちろん、書いてある事実はフィクションであり、おとぎ話、現実は1ミリも存在しない。 しかし、医者が語るMRの営業マンとして生活や、MRに対する医者の横暴は、 私が語る弁護士や、税理士の実態と同様に 斜めの視点から見た真実なのだと思う。 MRという職業、営業という職業、サラリーマンという職業。 おそらく1000種類があるのだと思いますが、その中の1つのサンプルとして参考になりました。 ただ、フィクション部分は無理が目立ちます。 架空の物語なので仕方がないのですが。 P7 三千百六十五人の従業員のうち、MRは約千三百人。外資の参入、大手の吸収合併が進む製薬業界で、天保薬品が独立を保ってこられたのは、ひとえにいくつかのテッパン医薬品と、優れた人材の登用による巧妙な経営方針の賜物である。 因みに、大阪市中央区の道修町が「くすりの町」と称されるのは、江戸時代に薬の検品を行う「和薬種改会所」が、この地に設けられたことによる。日本で商われるすべての薬は、いったんここに集められ、品質と分量を保証されてから全国に流通したのである。 P16 「接待とか贈り物なんかも、ひどかったんでしょう」 「もちろんや。春の花見から、夏は花火大会、秋は松茸狩り、冬はてっちりにカニツアーで、間で高級ステーキ、すき焼き、中華やフレンチのフルコースなんかも食べさせる。贈り物はゴルフセットやブランド品、ウイスキーにブランデー、コンサートや野球のネット裏のチケット、奥さま向けに香水やら高級鍋を手まわしして、便宜供与もタクシー代わりの送迎、夜食の差し入れ、タバコの使い走りから、引っ越しの手伝い、本の整理、果ては家の植木の水やりから、犬の散歩までやらされとった。どれもこれも自社の薬を処方してもらうためや。わしらは奴隷兼太鼓持ちも同然やった」 P44 「医者は威張っとるが、治療ができるのは薬のおかげや。それがわかっとるから、よけいにMRに威張りよる。こっちも医者に薬を使うてもらわんといかんから、弱みはある。そやからへいこら頭を下げてるように見せかけて、うまいこと薬を使わせるんや」 P174 それもこれも、八神の挫折のなせる業だと、鮫島は内心で憐れむ。MRが重要人物に近づくときは、経歴はもちろん、性格、趣味、家族構成、自慢のネタからコンプレックスまで、ありとあらゆる情報を“裏えんま帳”と呼ばれるメモに記録する。 |
小林武彦(生物学) 講談社現代新書 2021/05/24 中にの濃い、良書ですが、 中身が濃ければ濃いほど、コロナ禍で集中力が続きません。 P67 実は現在、地球は生物の大量絶滅時代に突入しています。私たち人間も含まれる哺乳類だけ見ても、ここ数百年で80種が絶滅しています。2019年の5月に生物多様性と生態系の現状を科学的に評価する国際組織IPBES(「イプベス」と読みます)が、今後の予測を報告書にまとめました。それによると、地球に存在する推定800万種の動植物のうち、少なくとも100万種は数十年以内に絶滅の可能性があるそうです。そのペースは、これまでの地球史上最高レベルです。 過去、地球には5回の生物の大量絶滅がありました(図2−6)。もっとも最近の大量絶滅は、約6650万年前、中生代白亜紀末期の大絶滅です。恐竜など生物種の約7割が地球から消え去りました。さらに遡って古生代末期(2億5100万年前)には、なんと生物の約95%が絶滅したと言われています。これらはいずれも、阻石の落下や火山の噴火などの天変地異が原因と考えられています。現在進行中の大絶滅は、申し訳ないことに人類の活動が原因で引き起こされています。隕石の落下級以上のダメージを人間が地球に与えているのです。 P70 この辺まではよく耳にする話です。ただ、生物の多様性が減少するとどうなるのか、あるいはどのくらいまで減少しても問題ないのか、ということについてはあまりよく知られていません。理由は簡単で、このような大量絶滅を私たち人類がこれまで経験したことがなく、研究者でさえも何が起こるかよくわからないからです。そのため各国の政治家や企業の経営者はどのくらいの危機感を持てばいいのかわからず、政策や企業の方針に大きな影響を与えることができないのです。 P71 しかし、大量絶滅の場合は話がかなり違ってきます。たとえばヒトの活動の影響で生き物の10%が絶滅したとします。これは、IPBESの報告の数十年以内に起こりうる数値の上限です。これだけ多量に、しかも急激にいなくなると、似たようなニッチの生き物が抜けた穴を補うことがもはやできなくなります。そうすると、それら絶滅した生き物に依存して生きていた生き物も絶滅するかもしれません。さらに、それらに依存していた生き物も絶滅します。このようにドミノ倒し的に、あっという問に多くの生物が地球から消えてしまいます。すでにダメージを受けて種数が減少しているバッファー効果の弱い生態系では、ほんの数%がいなくなっただけでも、このドミノ倒しが起こると想像できます。 |
夏川草介(医師) 小学館文庫 2021/05/24 お気に入りの映画ですが、 原作は、如何なんだろうと手に取ってみました。 通常は小説の方が深いのですが、 本書は映画の方がよいように思います。 俳優が適役なのですね。 P31 生活習慣、病である2型糖尿病は甘く見ているととんでもないことになる恐ろしい病気である。三大合併症としては腎症、網膜症、神経症があげられ、日本人の透析の原因疾患の第1位、失明の原因疾患の第2位を堂々と占めている。ちなみに失明の原因疾患第1位は、現在では緑内障であるが、一昔前までは糖尿病であった。 |
夏川草介(医師) 小学館 2021/05/18 「神様のカルテ」の作者が、 執筆したコロナ病棟のドキュメント。 過酷なコロナ病棟の現実が語られます。 P119 ゆっくり反芻していく中で、ふいに敷島は背筋にぞっとするものを感じた。 濃厚接触者……。 にわかに視界が淡く色彩を失い、時が凍ったように止まる。 山村静江の濃厚接触者は、昨日駐車場で会った息子の山村富雄だ。熱心に介護していたことを思えば、ほぼ間違いなく陽性であろう。だとすると、コロナ陽性者と、敷島は不用意に会話を交わしていたことになる。 本来なら、防護服越しか、iPad越しで話すべき陽性者と、直接向かい合って話をしたということだ。 敷島は、霞む記憶の向こう側を大急ぎでさぐる。 あの駐車場で数分間の会話をしたとき、山村はマスクをしていたであろうか。 声をかけてきたときは煙草を吸っていた……。顎にはマスクがあったように見えた……。会話の途中で煙草を消し……、そのあとマスクは……? 記憶が定かではない。 敷島の額に小さな汗が浮かび上がった。 自分はマスクをしていた。しかしフェイスシールドは当然していない。相手がマスクをしていたかは明確ではない。距離はどれくらいで何分くらい話していたであろうか……。濃厚接触の定義のひとつは「十五分以上の会話」だが、それほど時間はたっていなかったはずだ……。 しかし、いずれにしても陽性患者と不用意に会話したことは事実である。 P121 濃厚接触の定義は、「マスクをせずに」「1メートル以内の距離で」「十五分以上会話すること」である。現時点では山村が陽性か陰性かも定かでない上に、たとえ山村が陽性と出ても、敷島は濃厚接触者にあたらない。 P131 そんな軽口を言いながら、これから二週間は車の中で寝泊まりすることを伝えた。 状況からは敷島が感染している可能性は限りなくゼロに近いが、ゼロと断言はできない。病院の判断は病院の判断として公的な指示に従えばよいが、ひとりの父親としての行動はまた別である。 根拠があろうとなかろうと、家族を守るためなら、敷島は何日でも車の中に泊まる覚悟だ。 P27 P48 P67 P166 |
大阪市立十三市民 照林社 2021/05/18 症状の紹介があったので抜粋しておきます。 感染に対しての不安やストレスがなくなるわけではありませんが、この期間、院内で感染者が1人も出なかったことは、職員が公私ともに感染対策を徹底してきた頑張りの成果です。そしてそれは、自分たちの感染対策の自信にもなっていると思います。 P8 呼吸状態が安定し、経過良好と考えられる病状であっても、既に全身へのウイルス感染をきたしているため、脳、心臓、肺など生命を維持する重要な臓器に血栓症を併発し、突然死する可能性もある疾患です。 P62 既往歴 糖尿病 喫煙歴 15本/日 現病歴 発病4日前に友人と会っていた。発病日以降38〜39℃台の発熱が持続するため、発病5日目にPCR検査を受け、陽性と判明。宿泊施設療養を行っていたが息苦しさが悪化し、SpO2 93%と低下を認め、発病9日目に入院となった。 P69 既往歴 67歳、前立腺肥大。高血圧症。 喫煙歴 20〜45歳まで20本/日 現病歴 発病4日前に発端者と会食した。全身倦怠感で発病し、徐々に息苦しさが悪化。発病9日目にPCR検査を受け、発病10日目に陽性と判明し、息苦しさが強いため、同日に入院となった。 P71 既往歴 狭心症(大動脈バイパス術後)、糖尿病(インスリン使用中)、高血圧症 喫煙歴 40本/日×29年(14年前に禁煙) 現病歴 発病約1週間前に繁華街で飲食をした。発病日に強い倦怠感を自覚。その後、妻が先にCOVID−19発病と判明し、患者自身もCOVID−19と診断されたため、発病6日目に当院へ入院となった。 |
橋田壽賀子 滝竜社 2021/04/20 偉大な脚本家の人生。 読んでおくべきと思って選んだ一冊ですが、全くダメ。 あちらこちらの脚本に書いた10行を抜き出しているだけ。 充分に儲かっているだろうに、 なぜ、このような手抜き本を出すのだろう。 姑との葛藤が、この方の人生論なので、 その箇所を探したが、収穫は無かった。 P182 商家の嫁はたいへん 「そんな馬鹿げた法律あるもんかね。商人の嫁なんてどんなにこき使われてるか……。何もしないで嫁にいっちまった娘がもらえて、誰よりも働いて店守ってきてくれた嫁にはなにもやれないなんて、そりゃあないよ。もし、ほんとだったら、法律は間違ってる。父ちゃんだって歯ぎしりして怒ってるわよ。成仏できやしないわよ」 『渡る世間は鬼ばかり〈Part1〉』 看取った嫁にも相続権を 私がどうしても納得できないのは、舅や姑の介護をした嫁に相続権がないこととです。世の中には献身的に介護して看取ったお嫁さんが報われず、普段めったに訪ねてこないきょうだいや、一度も会ったことのない親戚に遺産を取られたという話がよくあるのです。 『ひとりが、いちばん!』 |
樺沢紫苑(精神科医) 飛鳥出版 2021/04/12 いま、書店で本が選べない。 新聞の広告か何かで知った一冊で、 まともな内容が書いてあるとは思えない。 しかし、いま、出版数が極端に減ってしまった時代。 選り好みをしていたら読む本がなくなってしまう。 で、予想通りの読む価値がない一冊。 ただ、幸せになる手法は3点だと説明する。 「朝散歩」 「幸せへの気づき」 「健康への気づき」 私は、既に、それは実行済み。 ただ、食前の散歩より、食後の散歩の方が有効だと思う。 朝食後の30分、夕食後の1時間のアルベルトとの散歩。 食べ物を食べたことによる血糖値の上昇が抑えられます。 「気づき」は「税理士のための百箇条」の執筆で実行中。 なるほど、世の中はそんな理屈でできあがっているのかと、生き方についてのシンプルな理屈に気づく。 P22 さあここで、有史以来、多くの人が頭を悩ませてきた「幸福とは何か」の問いに、本書ではたった10秒で答えを出してしまいましょう。 ドーパミン、セロトニン、オキシトシンが十分に分泌されている状態で、私たちは「幸福」を感じる。つまり、脳内で幸福物質が出た状態が幸せであり、幸福物質を出す条件というのが「幸せになる方法」であると言えます。 P102 セロトニン的幸福を手に入れる最もシンプルで確実な方法は、セロトニン神経を活性化させ、セロトニンを分泌させることです。 「朝散歩」は、起床後1時聞以内に、15〜30分程度の散歩を行う、というもの。ウォーキングのスピードは、やや早歩きで、リズムよく歩くのがコツです。「朝日を浴びる」「リズム運動」の両方をクリアできて、セロトニン神経が活性化し、「爽やかな気分」になり、最高の1日がスタートできます。 P106 「セロトニン的幸福」も「オキシトシン的幸福」も、実はいたるところに存在します。ほとんどの人は、気付けていないのでもったいないのです。 ですから「気付く」ことを意識する。小さな幸せに「気付く」能力をトレーニングすることが大切です。 P108 常識で考えると、「病気が悪くなれば、自分でそれに気付くはず」と思うでしょうが、前述の研究においても、実際の患者さんの観察においても、そうではありません。病気が重くなるほど、自分の症状や深刻さに、気付けなくなる人が多いのです。 「小さな不調」のうちに気付けることが大切です。 「自分が健康である」「自分の調子が悪い」ということを認識するのは、簡単そうで簡単ではないのです。「自分が健康である」ことを普段から意識できない人が、結果として健康を失います。 |
黒岩祐治(神奈川県知事) IDP出版 2021/04/12 本当に「こんなはずじゃなかった」。 あっという間に人類の歴史が替わってしまった。 そこには「責任」があるのか。 神奈川県知事が完璧だったわけではないのですが、 しかし、東京都知事がゴミだったことは確かです。 いや、青島都知事からの歴史を見ると、東京都知事がゴミなのではなく、東京都という公務員システムがゴミ。 どんな指導者を持ってしても動かせないのが「東京都という公務員システム」。 P8 こんなはずじゃなかった。 2020年がまさかこんな年になるなんて、世界中の誰が想像しただろう。東京オリンピック・パラリンピックで世界中の眼が日本に向けられ、競技開催地である神奈川県も祝祭ムードにあふれかえっていたはずだった。 |
ルース・ドフリース(持続可能な開発) 日経ビジネス文庫 2021/04/12 翻訳本は読み難い。 ねっちりと文字数が多い翻訳本が多い。 価値がある本を選ぶ為なのか、和訳が悪いのか。 いや、しかし、本書は読みやすい。 分厚い分量の一冊ですが最後まで読めそう。 いま読み途中ですが、 すべてについて同感する思いです。 読み終えて、如何に、私がモノを知らずに生きていたか。 それを知った一冊でした。 永久保存本です。 P14 地球に生息する何百万もの種のひとつにすぎないヒトが、確実に地球の姿を変えている。この惑星にわたしたちが刻んだ跡は遠く離れた宇宙からも確認できる。北米の肥沃な大草原からベトナム南部のメコンデルタの青々とした水田まで、わたしたちが自然をつくり変えた目的はただひとつ――白分たちのお腹を満たすためだ。 P18 見かけは変わっても、いまもこのサイクルは続いている。人類史が過去に経験した破綻の危機はほとんどの場合、飢餓と食料不足だった。後述するが、現在わたしたちが直面している問題はこの食料不足によるものではなく、飽食が原因だ。これは、ヒトが直面する初めての事態である。かつては夢のようなこの状況が新たな危機を生んでいるのだ。肥満の人が爆発的に増えるいっぽうで、豊富な食料がいきわたらない人びとがいる。大気と水のなかに汚染物質が排出されている。破綻の危機はつねに想定外の成り行き、予想外の結果からもたらされるのだ。 P23 ひとつ例をあげよう。世界最古の都市と評されるエリコはパレスチナのヨルダン川流域に栄えた。いまの基準で見れば小さな町に毛が生えた程度の規模かもしれない。しかし紀元前8000年には、住人はすでに約2000人に達していた。近くのオアシスのきれいな湧き水が絶えず小麦と大麦の畑をうるおし、年間収穫量はエリコの住人を養ってもなお余るほどだった.こうした余剰食料のおかげで一部の住人は、陶器や宝飾品づくり、宗教的な礼拝と儀式、秩序維持といった仕事に専念できるようになった。日々、農耕や調理にかならずしも全住民がかかわる必要がなくなったのである。 P26 ジャガイモがアイルランドの主要食物となったのは、1492年にクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に到着し、その後南米原産のジャガイモが船で新世界から旧世界へと運ばれたためだ。ヨーロッパ上陸を物語る最古の証拠は、1573年にスペインのセビリアの病院が購入した記録である。 P28 栽培されたジャガイモはたがいに遺伝子組成が同じクローンだった。畑と畑が近かったこともあって、疫病の格好の標的となった。南米のようにジャガイモに遺伝的多様性があれば、疫病の猛攻に耐え全滅は免れたかもしれない。 結果的にアイルランドの人口の八分の一にあたる100万人が飢餓で亡くなった、さらに100万人が連合王国や新世界へと渡った。 P129 1854年、ロンドンでまたしてもコレラが大流行した。19世紀になって三度目の大流行だった。コレラはまたたく間に広がり、毎週1000人が命を落とし、死者は約1万4000人にのぼった。 当初コレラは空気感染すると考えられていた。しかしロンドンのジョン・スノー医師はコレラの感染経路をたどっていき、ブロード街の共同井戸ポンプが感染源であるとみごとに突きとめた。だが地元の行政機関は、悪臭を放つ汚物の一掃になかなか本腰を入れなかった。政治家たちの鼻も日常生活も、なにひとつ影響を受けていなかったのだろう。 |
中村圭志 日経ビジネス文庫 2021/04/09 一神教、多神教を、信仰ではなく、それを神話だという視点で紹介する。 それは確かに神話でしょう、歴史的な事実とも思えず、エビデンスもない。 宗教家が書く宗教の本は読み難いが、本書は神話(童話)として読める。 私は、前提の知識を持ってますが、そうでない読者に読み通せるかは疑問。 いや、しかし、宗教の解説には思想があるべきだと思う。 本書には知識はありますが、思想がない。 P269 また、現代人は瞑想というと白昼夢のように空想をめぐらすことのように思うが、釈迦のやり方はそういうものではなかった。むしろそれは哲学的黙想に近く、人生と世界の原理を思考実験的に淡々と探究するのである。雑念をはらい、瞑想中の自己そのものを観察し続ける。 ともあれ、この瞑想のおかげでシッダールタは迷いを脱し「目覚めた者」ブッダとなることができた――と仏伝は伝える。 これを成道と呼ぶ。三五歳のときと推定されている。 シッダールタは老いなくなったわけでも、病にかからなくなったわけでも、死ななくなったわけでもない。だが、老・病・死に一切こだわらない安心の境地に達した。 その境地が具体的にどのようなものであるのか、ここで書くわけにはいかない。ここで書けるようなら私はブッダだということになる。だが、残念ながら私はブッダではない。 実は現代世界に生きるいかなる人間にも、お釈迦様が達した境地が何であるかをスカッと語れる者はいないはずだ。釈迦は並みの人間が至れる境地を超えたナニモノかになったとされているのだから、どんなお坊様の説教も、厳密には不正確だということになる。 悟りの境地はブラックボックスなのである。 |
柴田 剛 ポプラ新書 2021/04/08 田舎を研究する著者が、 これでもか、これでもかと 一冊まるごと田舎生活の悪口を語ります。 テレビで見るゆったりとして、 ときには豊かな田舎の生活。 それは田舎しか知らない人達には可能でも、 一度でも都会(自由)の生活を経験したモノには不可能だろ。 自分をバカだと知らないバカと、 自分を貧乏人だと知らない貧乏人と、 自分を常識しらずと知らない常識知らずと、 自分を善人だと勘違いした底意地の悪い奴と。 そんなのが 遠慮もせずに田舎言葉を話す。 それを田舎というのだと思う。 都会なら、 距離を置くことが可能でも、 田舎では距離を置くこともできない。 P24 彼らは経済的に安定しているだけではない。年配者はもちろんのこと、若い者であれ、役場の公務員は地方においては絶対であるという事情もある。 公務員以外のあらゆる老若男女が、地方公務員の前では表向きであっても頭を下げる、人口の少ない土地に行けば行くほど、この傾向は強い。 地域に落ちる、落とすお金の多くが自治体による発注業務である比率が強まれば、民間で食べている者は、日常からの発注元と下請けという構図の延長で、誰も、地域の公務員様には頭が上がらないのだ。 私が知るある県の県庁では、それこそ、県民に対する口の利き方、電話応答さえ、今どき、こんなことを東京あたりでやれば区役所が突き上げられるだろうと思われるほどに不必要な横柄さが露骨であった。 常々、霞が関の中央官庁よりもプライドが高い、と中央官庁のキャリア官僚にさえ言われる県庁であったが、そんな県庁は決して例外ではない。 いわゆる一昔前の「お役所様」といえばそれまでだが、しかし、地方という土地、都市から離れている場所では、今でもそれが色濃く残っている。県庁職員、市役所職員、町役場、村役場の職員といえば、それぞれの土地では名士階層に君臨するのだ。 移住希望者らはそこを心して、彼らのなかにおける移住担当者らの話を聞かなければならない。 |
野村資産承継研究所 大蔵財務協会 2021/04/07 コロナによって生じる企業業績の悪化。 いや、上場株式の値上がりによる株価の上昇。 取引相場の無い株式の評価額は上昇してしまう。 賃貸物件、特に、飲食店や、 ホテル関連の賃貸では賃料の減額リスクがあるが、 賃料の減額は相続税評価額には反映されない。 さらに空き室リスクが生じているが 空き室になれば土地の評価額は上昇してしまう。 オリンピックや インバウンド需要を織り込んだ地価も コロナショックによる影響は大きいが、 これが下がりきるまでに何年を要することになるのか。 それらの問題意識を大前提に、 各々の資産についての評価方法を紹介する。 いや、しかし、すべての解説が具体的ではない。 本書のタイトルにある 「税務・法務から見るコロナ禍の財産・資産評価と不動産賃貸業」については 誰もが問題意識を持ちながら、誰でもが想像する方向と逆の方向に動いている市場の時価。 問題意識は誰にとっても共通だが、 しかし、誰も現状を説明できない。 P37 特に、保有する株式を発行する会社がコロナショックによる業績悪化により経営破綻してしまうと、前出の裁判例においては課税時期後の株価変動を斟酌すべきでないとされただけでなく、オイルショックによる経済事情の変化が災害に当たり、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律が類推適用されるべきとの納税者の主張も退けられていることもあり、同様の判断がなされることが想定される。この場合、課税時期後の株価下落が一切斟酌されず、納税資金の確保に支障をきたす恐れが高いため留意が必要である。 |
西村賢太(小説家) 本の雑誌社 2021/04/01 僕は11歳の時に父親が性犯罪で懲役刑になり家族は瓦解。「何かを築いても、突然全部崩れる」と学びました。偏見は必ずある。これで自分はまともな就職も結婚もできない。人生の計画とか目標とか持っていても仕方ないと気付いたんです。 金がないっていうのは、本当にきつい。心底惨めな思いをするものです。忘れられないのは、17歳の頃に仕事から帰る電車賃がなくて10キロ近く歩いた時の物乞い行為です。運悪くたばこも底をつき、道ですれ違う人に「1本ください」って言ったんですね。3人に声をかけたら、3人ともくれた。いずれも目には哀れみのようなさげすみの色が、はっきりとありました。 こういう経験がなければこの陰気で冴(さ)えねえ私小説家はいなかったわけですから、僕には糧にもなったわけです。中卒も、むしろ誇り。略歴には、受賞歴を削ってでも必ず書きます。こっちは中卒のくせして物書きで生計を立てている。ざまあみろ、というのが本音です。すべて「結果的には」ですが。 そんなことをネットに書いていた作家。 彼の一冊を読みたくなってamazon。 今、到着待ちです。 いや、全くダメでした。 1日分ついて10行で行動を記録した日記帳。 なぜ、自分の日記に商品価値があると勘違いできるのだろう。 なぜ、こんなモノを出版社が出版するのだろう。 amazonさえあれば書店は不要。 そのような文化が極まったのがコロナ禍の時代ですが、 やっぱ、出版文化にはリアルな書店が必要なのだと思う。 P71 なので氏とのトークの内容は、見事なまでに探偵小説本の関連に終始した。 自分は十九歳以降は興味の対象が完全に私小説へと移り、今でも多少の復読はするものの、感覚的にはそのジャンルに三十年以上のブランクがある。が、何んとか喜国氏のコアな話についてゆけるから、十代のときにすり込まれた読書体験の定着度と云うのは、やはり大したものである。 |
帚木蓬生(精神科医) 朝日選書 2021/03/29 私と真反対の考え方をするネガティブ・ケイパビリティ。 答えの出ない事態に耐える力です。 私は、 それがゼロなので、 コロナ禍の時代は生きづらい。 理屈があり、整合性があって、予測可能性があった社会が消滅し、 なぜ、コロナが出現し、どのような形で終わるのか、いや終わることがあるのか、それは何時なのか、どんな形で終わるのか、終わった後の社会はコロナ前と同じか、違ったモノになるのか、違ったモノになるとしたらどんな形か。それが全く分からないまま耐えなければならない。 コロナに限らず、社会には意味も分からず、位置づけもできず、解決もできない問題がある(93頁)。 それに答えを出さず、意味づけもせず、現状に耐える(200頁)。 科学、理屈、ビジネス、合理性とは真反対の生き方ですが、しかし、合理性では解決できない問題もある。 それに「答えを見つけない」ことで居場所を確保する。 難しいですね。 P200 そして、私たちだけでなく子供たちにも、問題解決能力(ポジティブ・ケイパビリティ)だけでなく、この「どうしても解決しないときにも、持ちこたえていくことができる能力(ネガティブ・ケイパビリティ)」を培ってやる、こんな視点も重要かもしれません。 P93 Bさんは五十代前半の農家の主婦で、抑うつと不眠が主訴だった。聞くと、二十五歳で嫁いできたときは農業のことはよく知らず、必死で覚えた。しかし何ひとつ姑を満足させる域には達しなかった。足が不自由な姑は、今でも口だけは達者で、ひとつひとつ命令を下す。会社勤めもしている夫の弁当作りと朝の仕度のため、朝五時には起きなければならない。十分でも遅れて階下に降りると、もう起きている姑が、待ち受けていたように「遅かったのう」と言う。昼聞、休もうと思って二階に上がっても、降りて行ったとき、決まって皮肉を言われるので、我慢して階下でごそごそ動き回るしかない。「この頃では、姑の顔を見ると、動悸がします」と、涙ぐむ。 まさか、動悸止めの薬を出して、あとは姑が死ぬまで我慢ですと言うわけにもいかず、主治医としては、大変ですねと同情するしかありません。不眠の解消のため、睡眠導入剤を処方して、朝寝坊でもすれば姑の皮肉に油を注ぐようなものです。何かいい策が見つかるまで、悩みを聞くだけの主治医であり続けるのみです。 |
井ノ上陽一 大蔵財務協会 2021/03/29 職員を雇用しない1人税理士。 それを売りにしている著者の連載の書籍版です。 実際に経験してみないと分からない事柄が多い。 集中する為のメンタル、場所、ペーパレス、ウエイブ会議。 私は、税理士業ではないので、何時でも自宅事務所が可能ですが、 やはり、実行してみないと分からないところがある。 コロナの自粛生活で予行演習をしましたが、 プリンターが欲しいこと、ときには参考文献を見たいこと。 自宅待機中の仕事時間は20%だったと思います。 もっとも、事務所にいても、実際に仕事をしている時間は20%程度。 いや、しかし、事務所にいれば20%でも言い訳が言えますが、 自宅に居て20%だと言い訳が言い難い。 会社から大量の紙を受け取り、 大量の紙を作成し、 大量の紙を顧客に提供する。 その部分が気になったのですが、それは112頁と141頁以下。 この事務所の形態で、売上が幾らで、所得が幾らなのか。 それを語ってもらったら実感が分かるテーマになります。 P112 通帳やそのコピーを送ってもらうのではなく、ネットバンクデータを連動したり、受け取ったりすることができる時代です。 もちろん、お客様の意向を考慮しますので、紙で受け取ることをなくすのは簡単ではありません。 税理士としては、お客様側で会計ソフトにデータを入力していただき、それが妥当であることが理想的です。(自計化という言葉はあまり好きではなく、使わないようにしています) ただ、会計ソフト(給与ソフトも)をすべてのお客様に入れていただくわけにはいかない場合もあります。 かといって、レシート、手書きの出納帳、通帳そのものを受け取るのは、避けたいものです。 これらレシート等と、会計ソフトの間に位置するのがExcelで、私が独立以降、入力をせずにいられたのもExcelのおかげでした。 会計ソフトが嫌われる理由のーつは、「慣れていない」ということでしょう。 慣れているレシート、手書きのほうがよいわけですがExcelも比較的、お客様は慣れていると思います。 「Excelに入れていただければ大丈夫です」という位置づけができるのです。 もちろん、Excelを会計ソフトに入れるには、それなりの練習が必要となりますが、人手は必要なく、自動化の余地があります。 だからこそ、少なくともExcel、最低でもExcelというラインを守ってきました。 会計ソフトの導入よりもすんなりいきます。 効率化には、Excelに限らず、データで受け取ることが大事です。 データであれば加工できますし、「Excelでよいので」「データでいただければ大丈夫です」というスタンスで臨みましょう。 P141 この郵送をWebゆうびんで効率化しています。 Webゆうびんとは、日本郵便が提供するサービスで、専用サイトで、PDFまたはWordファイルを登録し、宛先・差出人を登録して決済すれば、先方に郵送してくれます。外出せずに自宅にいながら郵送手続きができるのは大きなメリットといえるでしょう。 封筒、切手の準備は必要なく、プリントアウト、宛名書き、切手貼り、投函をする必要がなくなるのです。 A4白黒なら99円(消費税10%込)、追加1ページ当たり5円、カラーなら146円、追加1ページ当たり52円(最大8ぺージ)かかりますが、手間をなくすことができることを考えると安いものでしょう。 決済は原則としてクレジットカードです。 私は、請求書のほか、税務申告の際に別途送付する決算書もこのWebゆうびんで送っています。 私が使う税務申告システムだと、別途送付したほうが早いからです。 ただし、返信用封筒等を入れることができませんので注意しましょう。 郵送物の印刷品質も問題ありません。A4サイズが3つ折りで届きます。プリントアウトの状態や封筒等を事前に確認したければ、試しに自分宛にして1通送ってみましょう。 私はFAXを持っていませんので、FAXを使わず、WebゆうびんをFAXがわりにも使っています。 FAXまたは郵送でしかやりとりができない場合は、このWebゆうびんで送ってみましょう。 やりとりの際に、FAXを指定された場合、FAXがわりとして使うこともできます。 FAXを普段使っていない状態でFAXを一時的に使うなら、コンビニから出すか、ネットのFAXサービスを使うことになりますが、Webゆうびんで手間をかけずに郵送する方法もあります。 郵送を効率化したいときに使ってみましょう。 |
瀧本哲史 星海社 2021/03/26 企業再生やエンジェル投資家として活動しながら、京都大学で教鞭をとり、「意思決定論」「起業論」「交渉論」等を人気講義へと押し上げる。 『僕は君たちに武器を配りたい』を出版した方で、47歳でなくなった方の最後の講義録。 凄いことが書いてあるのかと思ったのですが、本当に、くだらないことがべらべらとというレベルの話し。 おそらく、「モノを考えなければダメ」と言っているのだと思いますが、 それって当たり前なのであって、そんなことを100回も言っても無駄。 つまり、何を考えるのか、何とは何か、その何とは何かと考えること。 コロナとは何か、ウイルス学的にだけではなく、社会的に、経済的に、未来学的に、歴史学的に、税法的に、財政学的に、国際政治学的に、家庭学的に、そして、何よりも自分学的に、どんな意味を持ち、なぜ、そのような事象が生じたのかという自分の生き方的に、そしてコロナから何を学び、これからの生き方に反映させる考え方は何かと考える。テレワークってなに、テレワークは続くの、それで経済が成長するの。それが「モノを考えなければダメ」のモノを考えることでしょう。 本書は、単に「モノを考えなければダメ」「モノを考えなければダメ」「モノを考えなければダメ」と繰り返す本。 学生は、こんなことで満足するのだろうか。 いや、企業再生やエンジェル投資家として活動しているのだから実業家も納得するのだろう。 私の評価ならバカじゃないですか。 その一言です。 良い本に巡り会えない。 P18 かつてアリストテレスは「奴隷とは何か?」という問いに、「ものを言う道具」と答えました。僕がいまの世の中を見ても、けっこうな数の「ものを言う道具」の人がいます。一応ものは言って人間のかたちはしてるんですけど、自分の頭で考えてない人があまりに多いので、そういう人を人間にしなきゃいけないという問題意識というか、使命感もあります。 P193 でも、そうせずに済むように、8年後の今日、2020年の6月30日の火曜日にまたここに再び集まって、みんなで「宿題」の答え合わせをしたいんですよ。 (会場どよめき) ……とうでしょうか? みなさんは、すでに20代後半とか30代になってると思いますが、「あのときをきっかけに、この8年間、こんなテーマに取り組んでやってみた結果、ちょっとだけですが世の中を変えることができました」とか、「あの日たまたま隣にいた人とこういうことをやったら、こんなことができました」とか、「失敗続きですが、そのおかげで今はこういったことを考えてます」とか、何かそういう報告ができたら面白いじゃないですか。再決起ですよ(笑)。 |
前田昌孝(日経新聞編集委員) 日経プレイアムシリーズ 2021/03/25 サブタイトルは、 「経済の落ち込みは過去最大級なのに、なぜ、株高?」 それを知りたくて手に取った一冊ですが、 私が読む限り、それについての解説は一文もありません。 コロナ禍で、米国でも株高、それと日本の株高の関係。 コロナ禍で、経済が痛んでいるのに、株高、その理由。 バブル時の株高のように暴落が想定されるのか、否か。 そんなことは何も語ってません。 私は、バブル時の土地と同じように、 カネ余り、身近に値上がりする資産があれば、それに投資をする。 値上がりするから買う、買うから値上がりする、途中では降りられない。 それが理由であって、昭和のバブルと同じように、いつか、値下がりするから売る、売るから値下がりする。 そのような株価循環が始まるのだと思います。 P20 株式相場が見かけほど強くないことには注意する必要がある。日経平均株価の2020年の年間上昇率は16.0%に達したが、日経平均は採用している225銘柄の合計株価を一定の除数で割って算出する単純平均型の指数なので、値がさ株の動向に左右されやすい。日経平均採用の225銘柄の時価総額の合計値は1年間で1.8%増えたにすぎない。日本株の実力はどちらかというと時価総額に表れている。 誰が株式の買い手で誰が売り手だったかを振り返ってみても、2020年は外国人も投資信託も個人投資家も売却金額が購入金額を上回っていた。それぞれの売越額(2市場1・2部等)は3兆3635億円、2兆3766億円、8769億円だった。買い手としてこうした売りを一手に吸収したのが日銀で、ETFを通じて7兆1366億円も日本株を買った。 日銀が買っていなければ、ほかの投資家が買っていただろうから、「日銀が不在だったら株価は急落していた」というわけではないが、経済も株式相場も当局が演出しただけという印象は拭えない。 P22 日本の市場関係者が驚いたこともあった。投資の神様として知られる米国のウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが、2020年8月に日本の大手商杜5社の株式保有を明らかにしたことだ。総額65億ドル(約6900億円)の投資を公表 P27 だから、バークシャー・ハザウェイのバランスシート(貸借対照表)には、株式を買いたくても買えない資金が現金・現金同等物や政府短期証券・のかたちで大量に滞留している。2020年9月末の残高は過去最高の1457億ドルで、総資産の17.6%を占めていた。米国株に割安株が見当たらないなかで、解散価値をも下回る日本の商社株にまで食指を伸ばしたということなのだろう。 P154 個人投資家ならば、「投資リターンの極大化を目指す」ことだけが株式投資の動機や目的ではない。知恵比べ、株主優待の獲得、気に人った企業の応援、企業経営に触れる、老化防止、余裕資金を銀行預金に眠らせない、などさまざまな投資目的が考えられる。特に個人の単元株株主(通常、100株以上の株式を持つ株主)の数が30万人を超える22社をみると、株主優待は配当と並んで、非常に大きな投資の動機になっていることがわかる。 P157 実態を追認するために、会社法学者は苦しい説明をしている。「営業上のサービスにすぎない」「差があっても軽微である」「同じ株数を持つ株主の問では優待の中身に差がない」という具合だ。3番目の説明は会社法の「株式数に応じて平等」というところを、「株式の数が違えば平等でなくても構わない」と解釈しているわけだが、ちょっと無理筋ではないか。そんな解釈が容認されるのならば、株式会杜制度の根幹が崩れてしまう。 |
畠山重篤(牡蠣養殖) 文春文庫 2021/03/22 日経新聞に「牡蠣とマーク・トウェイン」というコラムが掲載されていた。 1943年生まれで、宮城県気仙沼市で牡蠣養殖業を営みつつエッセーも執筆。 そのような経歴の方がトム・ソーヤと、ミシシッピー川と、マーク・トウェインと牡蠣、それに鉄と森を語る。文章の運びが上手く、内容が面白く、上品で、とても、海で肉体労働をする方とは思えない。 今、書店に行かない時代、 新刊の出版部数が極端に減少してしまった時代。 良い本を見つけるチャンスは大切にする必要がある。 そこでご本人の書籍を探してみた。 いや、しかし、日経新聞で読んだほどに面白くない。 一冊の本になると話のテンポが冗長になってしまう。 良い本を見つけないとバカになる。 P18 河川水が流れ込む海とそうでない海とでは植物プランクトンの発生量は約三十倍から百倍もちがう。これはそのまま魚介類の漁獲量のちがいだと思っていい。 有名な例としては、鹿児島湾と東京湾の比較だ。両湾の面積は、ほぼ等しい。比較して、今現在、どちらの海が漁獲量が多いかご存じだろうか。ほとんどの人が水がきれいな鹿児島湾と答えるだろう。正解は逆である。この汚れに汚れたと思っている東京湾が、今でも鹿児島湾の約三十倍の漁獲があるのだ。秘密は川の存在だ。東京湾には一定以上の流量の川が十六本流入している。この水量は、二年で巨大な東京湾を満杯にする量だという。江戸前の魚介類は川があってこそのものなのである。 鹿児島湾は霧島の爆発でできた湾だ。だから大きな河川が流入していない。海は青々としているが、植物プランクトンが少ない。南の海で盛んな真珠の養殖がここでされていないのは、アコヤ貝の餌になるプランクトンの発生が極端に少ないからだ。 その鉄を植物が吸収する形にする物質が、川の上流域の森林に存在していることが解ったのである。森林の葉が落ち、それが腐る過程でできるフルポ酸という物質が、土中の無酸素状態の中で水に溶けている鉄と結びつき、フルポ酸鉄になるのだ。この結合は硬く一度結合すると極めて安定しており、河川で酸素と触れてもそのままの形で海に届く。 |
ビジネス社 2021/03/18 第2波の発生前 令和2年8月1日の発行なので、 書かれた内容は微妙に楽観論かもしれない。 しかし、ここで語られることは真実だと思う。 客観的な事実を伝える努力を怠り、 三密、夜の町など、イメージで訴える安直な政策。 恐怖を煽り、それに従う国民と、隣人の批判と目。 それが日本でのコロナの感染拡大を抑えた。 いや、しかし、そろそろ客観的な事実に基づき、 合理的な判断に基づく行動を起こしても良いのだと思う。 オリンピックや、Gotoなどではなく、 不要不急を楽しんだ日常を取り戻したい。 刊行にあたって かつて当たり前だった会食も宴会も、観劇もコンサートも、そして職場の交流も親戚づきあいも皆、多かれ少なかれ「自粛」せざるを得ない事態に陥った。無論、その背景には「オーバーシュート/感染爆発」「ロックダウン/都市封鎖」「重大局面」「緊急事態」「八割自自粛」といった目新しいキーワードで人々を煽りに煽った政治家、専門家、TVメディアの存在がある。そうした「煽り」の結果、心底コロナを怯える人々、いわば「コロナ脳」と呼ぶべき認識に陥った人々が量産されていったのだ。 コロナ脳に陥った人々はまず手始めに自分自身の活動を自粛し、自らの日常を破壊し始めた。しかし彼等はそれだけでは事足りず、普通の日常を続けんとしていたあらゆる人々に「不道徳者」「裏切りもの」とのレッテルを貼り、批難し、「自粛」を強要し始めた。結果、彼等は自らの日常のみならず、コロナに全く怯えていない人々も含めたあらゆる人々の自由を奪い去り、その日常を破壊していったのだ。 …… 省略 …… しかし我々の健康と生命は新型コロナのみならず経済崩壊を含めたあらゆるリスクに晒されているのである。そしてそうしたあらゆるリスクから我々の「身体」そして「精神」を守るためにこそ、「日常」が取り戻されねばならないのである。 |
井上勝夫 あさ出版 2021/03/17 戸建てか、マンションか。その判断について予測不能なのが騒音の問題。 私はマンションに住まったことがないので、その実感が分からない。 そこで手に取った一冊だが、しかし、実感は分からない。 切実なのか、気にする必要が無いのか。 P5 私たちはマンションを選ぶとき、交通の便、間取りや部屋の向き、設備、立地、周辺環境など目に見える部分には注意を向けても、音に対する建物の性能の問題までシビアに検討する方は少ないと思います、 しかし、音の問題は住んでみないとわからず(結露の問題も同様ですが、本書ではふれません)、住み始めてみると、長期にわたる生活に深くかかわる大問題であるのです。おおげさにいえば、人生を左右する要素のひとつといっても言い過ぎではないかもしれません。 P18 結局、知人は住み慣れたわが家を引っ越さざるを得なくなりました。 「若いときの引っ越しならいざ知らず、年をとってからの環境の変化はさすがに身にこたえました。35年かかって築き上げたネットワークや人間関係が根こそぎなくなるのは本当に悲しい。この年になって、こんな試練にみまわれるとは思ってみませんでした」としみじみ言っておりました。 「まるで上に悪魔が引っ越してきたみたいです」と疲れ切った表情で語っていたのが、今でも印象に強く残っています。 たかが音。されど音。私たちは隣や上、下に引っ越してくる隣人を選べません。誰が近くに住むかは運次第。それが音に対する問題をよけい深刻に、切実にしてしまう根本のところかもしれません。 P106 また前にも示したように、音は窓などの開口部を通しても隣戸に伝わっています。窓を開けっ放しにしないで、閉めるだけでも、聞こえる書は少なくなります。さらに窓を二重窓にしたり、ガラスの厚さを厚くすることで、窓から伝わる音はかなり軽減できるでしょう。自分の家の音が外に伝わるのを防ぐだけでなく、外から入ってくる音も防ぐことができます。 P136 音はどんなに対策をたてても、完全にゼロにすることはできません。共同住宅に住んでいる以上、自分の家の音も聞こえるし、他の住戸の音も聞こえます。お互いに思いやりと気づかいを持って、住まい方に気をつけることが大切なのです。 マンションの価値は住んでみないとわからないことがたくさんあります。立地や広さ、設備は目に見えるものですから、住んでみなくても価値は一目瞭然でわかります。でも音や結露に関しては、実際に住んでみないとわかりません。つまり実際に住んでいる人の評価や住みやすさ、快適性が、マンションの本当の価値を決めます。 |
黒木登志夫(がんの基礎研究) 中公新書 2021/02/15 コロナについては、 何が真実なのか 専門家の意見も多様に分かれていて理解し難い。 その中で良い分析と紹介されていたのが本書。 いや、しかし、読み難い一冊から、ここぞという 「日本の対応のベスト10とワースト10」を拾い出しても、 これが真実を言い当てているとは思えない。 米国、英国の人口比に対して 日本の死亡者数は圧倒的に低い状態。 日本 5793人÷1億2650万人 米国 44万1200人÷3億2820万人 英国 10万6367人÷ 6665万人 日本に比較して、 死者数が34.8倍の 米国も英国も医療崩壊してない。 なぜ、日本は医療崩壊し、 いまでも医療崩壊などと騒いでいるのか。 「夜の町」というが、コロナは、夜に感染するのか。 三密よりも重要なのは、マスク、距離、時間だと思う。 つまり、飛沫感染だと思うのだが、 それが判明した後も、なぜ、感染が続くのか。 P183 アベノマスクも、厚労省、経産省との事前話し合いなしに、突然官邸トップダウンで実行された政策であった。4月1日、首相は、政治的サプライズを意識したかのように、全国の家庭に布マスクを2枚ずつ配布するという政策を発表した。必要な経費は最初466億円と言われ、われわれは唖然としたが、最終的には、調達費は90億円となった(プラス配送費、梱包費)。この政策を企画し、首相に進言したのは、経産省出身の佐伯耕三首相秘書官であった。民間臨調報告書には、「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」という官邸スタッフのコメントが載っている。 最後に、私の独断と偏見に基づき、日本の対応のベスト10とワースト10をそれぞれ挙げてみよう。 《ベスト10》 @ 国民:国民は、要請レベルにもかかわらず、行動を自粛し、マスク着用、手洗いなどを励行した。経済的に苦しい人もよく耐えた。 A 三密とクラスター対策:初期のクラスター対策は一定の効果を上げた。その分析から生まれた「三密」キャンペーンは、分かりやすく、みんなそれにしたがった。 B 医療従事者:未知の新型コロナに対して、検査、防護服などが不足しているなか、使命感から、献身的に貢献した。医師会も、コロナ問題に積極的に関わった。 C 保健所職員:厚労省が保健所負担軽減対策に積極的でないなか、困難な調整と実務を行った。公務員の責任感ある行動として記憶されることであろう。 D 介護施設:厚労省福祉関係三局は、いち早く介護施設に注意を呼びかけ、介護施設もそれに応えた、日本の死亡者が少ないのは、介護施設の努力によるところが大きい。 E 専門家の発言:少なくとも、分科会に編成替え前までの専門家は、使命感から積極的に発言し、国民に警鐘を鳴らし続けた。われわれも専門家の発言に注意していた。 F 中央、地方自治体の担当者:医療従事者だけでなく、関係したすべての公務員は、一生懸命仕事をした。 G ゲノム解析:国立感染研、地方衛生研は、新型コロナウイルスのゲノムを解析し、感染の全貌解明と対策に貢献した。 H 在外邦人救出便:政府は感染の危機にさらされている在外邦人を、パスポートの前文の約束を守り、チャーター便により帰国の便を図った。 I 新型コロナ対応・民間臨時調査会:この報告書がなければ、コロナ禍の中、政府内で何が起こっていたか、どこに問題があったかを知ることはできなかった。 《ワースト10》 @ PCR検査:PCR検査の問題は言い尽くした、コロナと生きる時代に必要なのは、PCR検査の徹底により社会の安全と安心を保証することである。 A 厚労省:国民を守ることよりも行政的整合性を守ることに重きをおき、融通性に欠けていた。PCR検査では国民に背を向け、裏で政治工作をした。 B 一斉休校:文科大臣、専門家の意見を聞かずに、安倍首相の側近内閣府官僚の進言によって断行された一斉休校によって、教育の現場、父兄の生活は大きな影響を受けた。 C アベノマスク:マスクを配布すれば国民の不安は消えますという首相の側近内閣府官僚の進言によって実行されたマスクは、160億円もの税金の無駄遣いであった。 D 首相側近内閣府官僚:証拠に基づく政策(EBPM)の重要性が言われているなか、彼らは大臣、専門家を無視し、政策を首相に進言した。それを受け入れた首相は、さらに問題である。 E 感染予防対策の遅れ:3月のヨーロヅパ型ウイルスの流入予防対策に後れを取った。第二波の最中にGoToトラベルを実行し、感染を広げた。 F 分科会専門家:分科会委員に格下げされてからの専門家は、政府の政策にお墨付きを与えるだけの立場に甘んじてしまった。専門家が正論を言わなくなったら専門家でない。 G スピード感の欠如:初動態勢から今日に至るまで、すべての対応が遅すぎた。早かったのは、学校一斉休校とアベノマスクだけである。 H 情報不足:感染情報は非常に限られていた。感染の実態(院内感染者、死亡者数、発症日別統計など)の発表がなかった。政策決定に至る過程も不透明であった。 I リスクコミュニケーション:現状を科学的に分かりやすく説明し、質問に応えるリスクコミュニケーションがなかった。国民はテレビの情報番組に頼らざるを得なかった. |
森永卓郎(マクロ経済学) 光文社新書 2021/02/09 テレビで売れっ子の経済学者が、 自分の父親の相続での苦労話と、 相続を見通した財産管理の思想(生き方)を語ります。 マスコミで売れっ子の経済学者が、 自身の財産管理では「いい加滅にして!」と妻にキレられ、 結局は、妻の言い分に従って良い人生を過ごす。 極めて常識的な財産管理と相続を語る一冊です。 趣味の生き方、別荘の購入(無駄と批判)、地価予想(下落すると予測)、最後に介護老人ホームと上手な人生の生き方を語ります。 自身の相続を語る前半よりも、 相続に関する心構えを語る後半の方が面白いかも。 P179 妻は、私が暴走しかかったとき、いつも適切な判断によってストップをかけてくれる。 2019年、埼玉県所沢市にある自宅のすぐ近くで土地が売りに出されていた。「あれ買いたいんだけど」と相談したら、けっこうな大ゲンカになった。「なんで要らないものを買うの?」と言うので「いや、要らないものじゃない。そこを畑にして耕すんだ」と答えたら「いい加滅にして!」と妻がキレた。 普通はそれでおしまいだが、我が賢妻は近所の農家から耕作放棄地を借りる約束を取り付けてきてくれた。少子高齢化が進む中、日本中どこでも農家の跡継ぎは少ない。畑を耕す者がいなくて荒れ地になると、土地はたちまちやせ細ってどうしようもなくなる。何でもよいから作物を育ててくれる人がいるだけで、先祖代々の土地を保守管理できるのだ。 だから耕作放棄地は、タダで貸してもらえることが多い。私の場合はまさにそうだ。だから、妻の判断は正しかった。「ウチの近くで畑をやりたいな」と先走って、土地を買っていたら、無駄な土地代を支出するのみならず、死ぬまで固定資産税を払わなければならないところだった。 P147 P152 P174 |
近藤慎太郎(消化器専門医) 日経BP 2021/02/08 知りたかったのはピロリ菌と胃がんの関係。 ピロリ菌がなければ内視鏡の検査は不要なのか。 しかし、「不要だ」とは断言してくれない。 胃がんから見たら99%にピロリ菌の感染歴があるのなら、 ピロリ菌がなければ99%の割合で胃がんにはならないと言えると思うが、 それが言えないのだろうか。 死ぬまでに胃がんになる可能性が10%だとすれば、 その99分の1なら0.1%であって無視できる確率。 そのように考えたらダメなのだろうか。 1000分の確率なら内視鏡検査などは遠慮したい。 P49 そもそもピロリ菌が陽性なら全員が発がんするというわけではありません ただし胃がん側から晃ると99%にピロリ菌の感染歴があります やはり影響力は絶大です 上下水道が整備され環境が清潔になるにつれて日本人のピロリ菌感染率は減りました その結果、現在の10代の感染率は10%程度と言われています この世代では胃がんは激減するでしょう P50 ピロリ菌に一度も感染したことがなければ、胃がんのリスクはとても低いということです。 もしかすると、皆さんの中に「ピロリ菌を除菌すれば胃がんにならなくなる」という説明を受けた人がいるかもしれません。 けれど、それは全くの誤解です。 胃がんの発生リスクを「減らせるかもしれない」というだけで、「ゼロになる」わけではありません。 |
森岡正博(早稲田大学教授) 筑摩書房 2021/01/13 コロナ禍の時代、 生まれてこなければ良かったと思う人達が増え続ける。 死ぬのは辛いのだから、 生まれれてこなければ良かった。 死ぬことは、 全て生きていることと対比されるのだから、 そもそも生まれれてこなければ良かった。 これって正解だと思うのですが、 その正解に、本書が、どのような別解を示すのかが楽しみ。 まだ、読み途中です。 ブッダの教えを解説する第5章は勉強になりました。 日本の葬式仏教とは異なるブッダの生き方。 その意味が再確認できました。 P9 それから17年の時を経て、私は本書を刊行する。これは、今後長い時間をかけて世に問うていく「生命の哲学」シリーズの第一作である。人間が生まれ、そして、死んでいくことにどのような意味があるのか。存在することと、いのちがあることは、どのように違うのか。牛命と身体はどのように関係しているのか。いのちあるものが、つねに関わり合いの中でしか生きていけないのはなぜなのか。私たちは、あるときは他のいのちあるものと喜びを分かちあい、またあるときは他のいのちあるものを犠牲にしながら生きていくのだが、それはいったいなぜなのか。これらの問いを、これまでの哲学者たちはどのように考えてきたのか、そして私たちはいまどう考えればいいのか。私は今後の一連の著作で、その全体像をゆっくりとしたペースで浮かび上がらせていきたい。 P11 「生命の哲学」がカバーする幅広いテーマの中から、本書ではまずひとつの問いを取り上げて、集中的に考察する。それは「私は生まれてこないほうが良かったのか?」というものである。古来より、この問いは何度も繰り返し問われてきた。「生命の哲学」の中心にある痛切な問いのひとつである、私自身、「生まれてこなければよかった」と思うことはたびたびある。 P12 もし私が生まれてこなかったとしたら、私が彼らにもたらした苦しみの時問は宇宙に存在しなかったことになるのだが、それと同時に、私が彼らと共有した幸せと喜びの時問もまた宇宙に存在しなかったことになってしまうのだ。 私が「生まれてこなければよかった」と心の底から思うとき、私は自分が彼らと共有した幸せや喜びの時間もまたなかったことにしたいと願っていることになる。これは、私と過ごすことでほんのひとときであれ幸せや喜びを感じてくれた彼らに対する、一方的でひどい暴力のようにも思われるのだ。「生まれてきたこと」も肯定できず、「生まれてこなければよかった」と思うことも肯定できないとしたら、私はいったいどうしたらいいのか。 一つの可能性は、「生まれてこなければよかった」という暗黒をいったんくぐり抜けることによって、その先に「生まれてきて本当によかった」という光明を見ようとする道である。私はそれを「誕生肯定」と呼んで、哲学的に考察してきた。これについては、本書の最後でもういちど戻ってくることにしよう。 P182 P188 P193 |
竹信三恵子 戒能民江 瀬山紀子 岩波ブックレット 2021/01/13 役所の窓口にいて、 利用者からの苦情を一手に引き受ける人達。 非正規雇用の人達なのだろうと想像してましたが、その通り。 社会保険事務所でも窓口にいるのはこの人達で、 正規の公務員は後ろの方で事務仕事をしている。 役所や、大学など、民主主義を実現し、労働者の公平を守るべき組織が、非常勤講師や、非定期職員の雇用など、率先して、民間以上の不公平を作り出し、自分たちは労働貴族として生活する。 大学を卒業し、 公務員試験を受験した。 そのような目先の利く判断をした自分の特権として 同じ職場で働く人達の不平等さに目を向けない人達。 要するに、公務員などは人間のくず、ゴミ。 P2 公務員と聞くと、「安定した働き方」という印象が定番になっています。でも、2000年ごろから、年収200万円前後で、短期契約の不安定な非正規公務員が激増していることを、どれだけの方がご存じでしょうか。いまやその比率は、自治体公務員で3〜4人に1人にまで増えています。国家公務員でもその比率は増え、たとえば厚生労働省のハローワークのような、働き手の雇用の安定を図る機関でまで、就職相談にあたる職貝の4〜8割が非正規といわれています。 P5 そして、瀬山、山岸のお二方の現場からの生々しい報告は、こうした構造の中、女性たちが、公務への使命感と、これに釣り合わない低待遇の狭間で「やりがいの搾取」とも言える過酷な状況に置かれていることを浮かび上がらせます。 P51 このような状況の中で、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる私たちの実態はどうでしょうか。不景気になり解雇が増える時、その「いらだち」を窓口で訴える人が増えます。「公務員はいいよな」「いい給料もらいやがって」「安定しているあんたたちに何が分かる」と怒りをぶつける人が出てきます。私個人はその気持ちが痛いほど分かります。しかしその怒りを受け止めるのは窓口の非正規の相談員です。そんな時、ほとんどの非正規相談員は黙ってそれを受け止めます。でも、私たちも来年度末には同じように求職窓口に並んでいるかもしれません。 |
村上貴弘(菌食蟻の生態研究) 扶桑社新書 2021/01/13 蟻を一生の研究テーマにする。 凄い楽しい人生で、 凄いリスクのある人生だと思います。 経済的にも、 研究の成果が得られるかも、 自分の好奇心が続くか否かにも。 駕籠に乗る人担ぐ人そのまた草鞋を作る人。 そんなことを私の父親が語ってましたが、 そのわらじの下に住まう蟻を研究する人。 いや、しかし、コロナ禍の時代、 ムカシキノコアリに習って 巣(自宅)に入る時は丁重なグルーミングを実行しよう。 まだ、読み途中(3分の1)ですが、 少年の頃の「虫博士」のまま大人になった研究者。 研究テーマと共に、 筆者の人生も面白い。 P20 こうした1個体1個体が集まり、まるでひとつの生き物としてふるまう集団を生物学では「超個体」という。アリは1個体1個体が自分の思うままに動いていながら、結果として集団が最適に維持されるという、僕らが今後理想とするべき社会をすでに完成させているといえる。 この超個体を操るのは誰なのか?普通に考えると女王アリをリーダーとしたピラミッド型の統治システムを思い浮かべるだろう。しかしながら、それはまちがっている。アリがどれほど自由で、かつ組織を合理的に運営しているのか、この本の隠された主題にもなるので、この先、じっくりと読んでほしい。 P68 ムカシキノコアリの日常を見続けたことで、いろいろなことがわかってきた。たとえば、彼女たちはとても頻繁に、自分たちの体をきれいにする「グルーミング」を行う。外から帰ってきた個体は、巣に人るとすぐに前脚や中脚を使って器用に体全体をきれいにする。触角はとくに念入りだ。その時間は10〜20秒、ときには1分以上セルフグルーミングをする。 これは、キノコ畑に寄生性の細菌やウイルスをもち込まないためで、とくにキノコアリでは頻繁で長く確認される行動だ。一般に、集団で生活をするアリはきれい好きな生物で知られている。人間だってきれい好きだと言う人が多いだろうが、2020年の新型コロナウイルス(SARS-Covid-2,COVID-19)の蔓延を見ても、まだまだ微生物と人間の関係性にはつけ人る隙が多過ぎるよ、とアリたちは思っているに違いない。 この詳細な行動観察で驚いたのは、アリたちが外から巣の中に入るときにはほぼ100%グルーミングを行うこと、そしてその念の入れっぷりだ。ここまで徹底しないと集団での生活に安全・安心はもたらされないのだろう。ひるがえって、僕らはどうだろうか?あなたは帰宅したときに必ず手洗い、うがい、服の着替えを徹底しているだろうか?それがきちんとできていないうちは、たかがアリとバカにすることはできないですぞ。 P99 P125 |
月刊誌「治療」 南山堂 2021/01/13 「治療」という月刊誌。 専門家の向けの雑誌なので、 情報が確かだろうと思って手に取った一冊。 入院患者を相手にしる現場での事例ですが、 その1と2から想像すると次の事が言えそうに思う。 現時点で私が理解しているコロナ対策です。 1 人間は霧吹きです。マスク、2メートルの距離、5分以内の会話。 2 大声を出す場所。カラオケ、酒と食事中の会話、室内の電話の話し声。 3 人口密度を高くしない。二酸化炭素測定器、換気、空気の移動(扇風機)。 4 飛沫、粘膜感染です。水を飲む、鼻うがい、目洗い、そして手洗い。 5 飛沫の接触感染。宅配便の段ボールを触った場合は手洗いです。 6 電車内感染、オフイス内感染は想定されないが、しかし、時差通勤です。 1から6を守れば快適な生活です。 P1347 コロナ院内でアウトブレイクを経験して学んだ教訓 この経緯もありスタッフAの検査結果および病棟患者の経過も踏まえて4月30日に方針を検討することとした。そして4月30日にスタッフAの陽性が確認された。病棟患者の状態は改善しておらず、複数のスタッフが体調不良のために出勤を見合わせていた。アウトブレイクと判断し、A病棟の入院患者およびスタッフ全員のPCR検査を5月1・2日に行ったところ、患者21名中13名、スタッフ47名中11名の陽性が確認された(図1)。 体調不良による自宅待機や保育園・幼稚園の休園・登園自粛要請の影響もあり、アウトブレイクに伴う感染者・濃厚接触者を含め100名近くのスタッフが不在となる状況となった。B病棟には手術室や他病棟から看護師が応援に入ったが、新型コロナウイルスへの不安を抱えながらの不慣れな病棟業務は多大な負担をかけることとなった。 P1350 事例1:患者から医師への感染 患者が難聴であったため、医師が顔を近づけて数分間会話をした、この際医師はサージカルマスウを装着していたが患者はこの時点ではCOVID−19に伴う症状は呈しておらすマスクを装着していなかった。身体的な接触はなく、会話を通じての感染と考えられた。 事例2:リネン業務を介した感染 リネン業務を担う職員が感染し、そのウイルスのグノムは病棟の型と一致した。患者と会話や直接の接触をする機会はなく、ベッドのシーツ交換を介して感染したと考えられた。 |
阿部恭子(NPO理事長) 岩波ブックレット 2021/01/13 被害者家族は怒りの対象がありますが、 加害者家族には自問自答しか存在しない。 自分の犯罪で家族を崩壊させるのは 自分自身の判断の結果ですが、 子供達の犯罪で家族が崩壊する。 どんな因果関係なのか、 だれも判断できない。 子育ては最大のリスクです。 P5 一ヵ月が経過した頃、一家は転居先で新しい生活を始めたが、秋本さんの加害者家族としての苦悩が始まったのは、むしろ生活が落ち着いてからだった。きょうだいたちの将来、被害者への損害賠償・息子の更生……。これまで想像すらしたこともない責任の重さに、気がつくと、死ぬことばかり考えるようになっていた。(息子が人を殺した事例) P6 報道対応について、私たちは「加害者家族ホットライン」を設置し、24時間対応で相談を受け付けています。これまで緊急避難が必要な加害者家族を一時的避難所に誘導したケースはありますが、加害者家族として利用できる公的な避難所はなく、スタッフの伝手をたどって探すことになり、緊急対応としては不十分です。 P7 私たちが相談を受けた殺人事件の加害者家族の90パーセント以上が、事件後、転居しています。自宅への落書きや投石といった嫌がらせを受けたケースも報告されていますが、多くの家族は、周囲を騒がせてしまった気まずさから転居の決断に至っています。被害者から転居を要求されるケースもあります。 P12 上村さんは、夫に対して、事故を起こした責任を問い質したい感情と、故意に犯したわけではない罪に、家族として同情する感情が交互に押し寄せた。余裕がないせいか、横柄にさえ見える夫の態度に怒りが込み上げ、「家族にこんな肩身の狭い思いをさせて!」という言葉が出かかるのをいつも飲み込んでいた。(交通事故の死亡事故) P20 「加害者家族の集い」の中でも、加害者の親たちによる「子育ての後悔」がよく語られています。子どもを犯罪者にしようと思って育てた親はいません。自らの加害性と向き合うのは勇気のいることです。家族が問題に気づき、事件を起こした子どもと向き合うことができるようになるには、仲間や支援者の支えが必要です。(息子の強姦事件) |
植木宣隆(サンマーク出版社長) サンマーク出版 2021/01/13 書籍について 幾つものメガヒットを出した出版社の社長が語ります。 書籍を扱う人達の心意気が語られていて気分の良い一冊。 いま、出版を「商品」と考える編集者が増えてしまった。 書籍と、著者について 愛情の無い編集者と付き合っても良い本は作れない。 読み進めるのが楽しみな一冊です。 いや、一般書で、わずか8000部が出るのがやっとの世界だとしたら、 私は、税法という限れた分野で3冊の1万部を超える本を執筆している。 P31 この話を他の出版社の方にすると、「植木さん、7000部、8000部出るのがやっとのご時世に、5万部だ、20万部だ、ミリオンだなんて、ありえないじゃないか」と言う方が多い。これがまさに限界意識そのものです。 P1 P61 P64 P97 P122 P133 |
有森 隆(ジャーナリスト) インプレス 2021/01/07 創業者の百科辞典的な解説です。 往復の電車のかなで読むのにも最適です。 西武創業者の女性狂いの歴史とか、 クロネコヤマトでは子が追い出されたとか。 ユニクロ、大塚家具、ワタミ、森ビルなどの創業者経営が語られます。 残念ながら2020年2月1日の出版なのでコロナの影響が語られてません。 各々の章で登場した出版時点の経営者の運命は盛者必衰の理をあらわすと思います。 P207 「堤家の永遠の繁栄」を第一に考えた康次郎は、相続による株式の散逸や相続税の支払いを逃れるため、親会社にあたるコクド株を役員や幹部名義を使って保有した。康次郎の死後、後継者の義明が資産のすべてを引き継いだ。だが、「義明はあくまで財産の”管理人”であって、義明名義のコクド株のうち、約55%は自分たちが相続している(はず)」と異母兄弟たちは主張して裁判に持ち込んだ。 2009年3月30日、東京地裁は、堤清二ら親族4人の一部持ち分を認めた。義明名義の旧コクド(プリンスホテルに吸収合併)株757株のうち、約740株は時効成立により、義明のものと判断。残る約15株分のおよそ55%については原告の持ち分と認めた。 原告の主張が全面的に認められれぼ、2005年から2006年にかけて行われた西武鉄道グループの再編が無効になる可能性があったわけだが、最大の焦点となっていた名義偽装は時効の壁に阻まれてしまった。 異母兄弟姉妹の複雑な家族関係が深い傷を残さないわけがない。一族は分裂。西武グループの堤家支配は崩壊した。康次郎が描いた王国の青写真によれば、未上場のコクドが上場会社の西武鉄道株式を大量に保有、そのコクド株を堤義明個人が保有するという支配の二重構造を完成させ、末代まで堤家の支配は磐石なはずだった。 P84 P206 P223 P258 P279 P345 P347 P527 P529 |
西田 章 商事法務 2021/01/07 前作は良かったのですが、今回はダメ。 司法試験合格者の単なる就職の心がけと現状分析。 弁護士が余ってしまい、 就職が重要な要素になってしまった。 仮に、文中に出てくる項目は次の具合です。 第28講 大手法律事務所で求められる人物像 第29講 中小法律事務所で求められる人物像 第30講 企業法務部で求められる人物像 それにしても 本書で語られる大手事務所と インハウス(会社勤務)は面白くも無い感じ。 事件には「人間」が登場しますが、 大手事務所とインハウスに登場するのは「人間関係」。 自由と独創性、専門知識と依頼者の感謝。 そんなものは大手事務所やインハウスには存在しない。 彼らのメインテーマは「自尊心」なのだろうか。 大手法律事務所では「タイムチャージで5万円」と紹介されてますが、 私がタイムチャージ5万円で働いたら事務所は倒産してしまう。 タイムチャージは役にも立たない新人を後ろに並べることで成り立っている。 インハウスが「安定した職業に就きたい」と紹介されてますが、 安定した職場なら埼玉県庁の方が確かだと思う。 いや、だから、この頃、 成績優秀者は裁判官と検察官になるのだ。 私の時代は、大多数が弁護士を選び、 それに向かない人達が裁判官と検察官にリクルートされた。 大手事務所とインハウスについてなら、 そこで脱落した人達の人生を知りたかったのですが、 就職紹介誌には、そのような人生は語られていない。 P10 旧司法試験時代には、「弁護士志望」を固めるよりも前に、「日本一難しい国家試験」に挑戦したい、という知的好奇心に突き動かされて司法試験に合格した層が存在した。彼・彼女らは、裁判所及び検察庁からも勧誘の対象となった。 P12 企業法務系の弁護士のキャリアを突き動かすものは「知的好奇心」である。企業法務で一流と呼ばれる弁護士には、タイムチャージで5万円以上の時間単価が設定されている。また、執務環境としては、丸の内や大手町の一等地に建設されたビルに、高級家具が備え付けられた眺めの良い窓付きのオフィスが想起される。 P14 法律事務所のアソシエイトでインハウスへの転向を希望する者には、その理由を「安定した職業に就きたい」と述べる者が多い。しかし、クライアントがひとつに絞られるリスクは大きい。上司がひとりに絞られてしまうリスクは大きい。経済的収入源がひとつに絞られてしまうリスクは大きい。 P102 米国のロー・スクールに留学した弁護士は、LL.M.卒業後に、NY州の司法試験を受けることが多い。ほとんどの日本法弁護士は、NY州の司法試験に合格して弁護士登録しても、日本に帰国後、NY州法を専門的に扱うことまでは考えていない。いわば「お飾り」である。日本人の渉外弁護士にとってのNY州弁護士資格に対しては、「足の裏についた米粒」と称されることもある。すなわち、「取らないと気持ち悪いが、取ったからといって食えるわけではない」という意味である。長島安治弁護士(長島・大野法律事務所の創始者)は、「使いもしないNY州弁護士資格を取得する必要があるのか?」という質問に対して、「荷物になるものではないから、持っておきなさい」と、一言で回答をなされていた。 |
折口雅博 昭文社 2021/01/06 思い出せば、 このような事件があったような気がする。 人材派遣や、 介護事業など、 カネが儲かれば、 真っ先に手を出す経営者。 サラ金、人材紹介など、そんな人達1000人が手を出して、 最後に3人が残り、そして3人も消えていくのが虚業なのだと思う。 実業は、その後に、ゆっくりと成長していく。 P6 私は、東証一部上場のグッドウィルグループを、CEOとして率いていた。1995年の創業から12年で7700億円の売上を作り、2500拠点で10万入を超える従業員を雇用した。これは、日本企業史上ダントツに最速だった。 創業4年5ヵ月でジャスダックに上場。初値は、人材サービスとして異例のPER(株価収益率)200倍をつけた。9年目でジャスダックから東証一部に直接上場し、ピーク時の時価総額は7800億円。その間、42歳で経団連理事に就任し、紺綬褒章や厚生労働大臣賞も受賞した。 その私が2008年、突如すべてを失った。当時、グッドウィルグループは、企業が稼ぎ出すキャッシュフローや利益の代表的な指標となるEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)で見ると過去最高益を出していた。経営的にはまったく何の問題もなかった。しかし、表舞台から去らざるを得なくなった。 将来性も含め、行っていた事業にはまったく不安がなかった。人材サービスビジネスは莫大な市場と可能性を秘める分野である。その業界において日本一、世界でも5位の売上規模を誇った会社が、なぜ突然解体されることになり、私が排除されたのか、奇妙としか言いようがない。 P127 コムスンが問題を問われたとき、何が起きたか。全国約1200ヵ所の訪問介護拠点に加えて、施設介護の800拠点を合わせた2000拠点すべてが連座責任の対象となったのである。その罰則は、すべての拠点の5年間の営業停止だ。 |
小林哲夫(ジャーナリスト) 朝日文庫 2021/01/06 執筆を商売とする人達の著作には得るところが無い。 いや、しかし、コロナ禍の時代は手に取った検討が困難。 amazonしたのですが 10ペーを読むのが苦痛。 いや、読み進めたとしても得るところは無い。 司法試験の合格について論じた頁があった。 最年少で司法試験に合格した2名ですが、 いや、しかし、 オリンピックではないのですから、 最年少合格に意味があるとは思えない。 長い人生の評価は 長い人生の積み上げで評価されるべきと思う。 18歳での東大合格や、 20歳での司法試験合格という過去の栄光を、 神童は人生の通過点と位置づけていると思う。 「今を見てくれ」と。 P302 2017年、慶應義塾大法学部の栗原連太郎が19歳で合格している。 現在、司法試験を受けるためには、法科大学院修了、あるいは司法試験予備試験合格が求められる。栗原は慶應義塾普通部3年(中学3年)のとき、司法試験を目指すことを決め、慶應義塾高校入学とともに、WEB講義で法律の勉強をするようになった。高校3年のとき、予備試験に合格する。そして、慶應義塾大に入学してまもなく司法試験を受けて一発で合格した。大学1年、19歳4ヵ月だった。 P303 1983年、法科大学院制度が出来る前、早稲田大を中退した黒田健二は20歳で司法試験に合格している。 一方で、早稲田大学法学部に進学する。しかし、黒田はできるだけ早く司法試験に合格したいという思いが強く、自分の退路を断つために1年で中退してしまった。これはリスキーなことである。当時は大学の教養課程を修了すれば1次試験免除だったので、これを受けなければならない。そして、2回目の受験で司法試験に合格する。当時、黒田はこんな話をしている。 |
池田 渓(東大卒フリーライター) 飛鳥新社 2021/01/05 いまさら、東大卒など、珍しくもないのですが、 東大卒である彼らの心の中が覗けるのなら面白いと思って手に取った一冊。 東大卒であるが故に、他人の目と、自分のプライドで苦労している人達が多い。 他の人達より優秀でなければ成らないという他人の目と、自分の目で苦労する。 いや、もちろん、びっくりするような天才もいるのだと思いますが、 それ以上に、東大卒のコンプレックスが作り出すエネルギーと挫折。 東大卒にも100種類があり、それが100種類の職業に分かれている。 東大卒を一冊の本で知ることは不可能で、私の身近な例で評論するのも間違い。 いや、しかし、東大には進学しないのが無難。 私が、東大卒の弁護士だったら、人生なんて面白くもない。 それでも、自分の子育てでは東大を目指してしまう矛盾。 18歳の受験勉強のゴールは、やはり東大なのだと思う。 その成果を、18歳以降の人生に生かすためには失敗が許されない。 私の周りにいる人達は成功者だけれども、失敗者も多いのだと思う。 仮に、東大卒、フランス語堪能、美人という人生を生きるのは難しい。 東大卒、ブスという人生よりは生きやすいのかもしれないけれど。 P75 いつまでたっても「東大卒であること」が自分の最大の功績と見なされるのなら、18歳かそこらのときに倍率3倍程度の東大入試をパスしたその瞬聞が人生のピークで、それ以降に目立った活躍をしていないみたいではないか(実際、そうなのかもしれないけれど)。 いずれもネガティブな感情であり、たかだか出身大学を問われているだけのことなのに返答の際はいつだって緊張してしまう。東大卒の人ならばそのわずらわしさを身をもって知っていることだろう。 P56 P67 P71 P75 P90 P93 P103 P109 P113 |